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「たしなみについて」

銀座で開催されていたのは、何年前でしょうか。
「白洲正子ときもの」

光沢のある黄緑に近い美しい装束風のきものや、紬に合わせる何色とも言い難い、
柿渋のような深い色の帯。
もっと、日本の伝統色の名前を知っていたなら・・・と思いました。

日本画で使う岩絵具に憧れます。
岩絵具(いわえのぐ)とは、日本画材料として供給されている顔料のことです。
辰砂、孔雀石、藍銅鉱、ラピスラズリなど様々な鉱石、半貴石を砕いて作った顔料は、粉末状の顔料(絵具)であり固着力がなく、単独では画面に定着しません。
固着材として膠(ニカワ)を併用します。
日本古来の美しい名前の色があります。
仕事で「日本の伝統色」の色チップを渡された時、漢字の色名にときめいたのを覚えています。
乳鉢を使ったり、金箔を貼ったり・・・作業も繊細に思えていました。


『「美」というものはたった一つしかなく、いつでも新しくいつでも古いのです。
その「つねなるもの」は、しかし大きくも小さくもなります。』


と書かれた、白洲正子さんの「たしなみについて」という本を何度も読みました。
その本の中の呉服屋さんの言葉を思い出します。

『ごはんをよそう時、「ほんの少し」と言われても、いったいその人の言う少しとは、どの位の量をしめすのか。
その「少し」をはっきりどれだけ、と知るのが私達の商売でございます。』


少し、の難しさ。
作品の仕上げにも似ているように思います。
手を入れ過ぎず、美しく見えるところを逃さずに。
辞めどきはいつなのか?
これが感覚・・・センスというものなのかも知れません。

良いものを見て、聞いて、読んで。
「野暮は揉まれて粋となる。」
感覚を研ぎ澄ますのは、一生の勉強です。



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