宇宙の理を纏う。 「イリス・ヴァン・ヘルペン〜感覚を彫る (IRIS VAN HERPEN. SCULPTING THE SENSES )」展 @装飾美術館(Musée des Arts Décoratifs) / パリ⑤
こんにちは。
今回パリで楽しみにしていたのが、装飾美術館で開催されたイリス・ヴァン・ヘルペンの展示。
おー大好きSølve Sundsbø !が撮ったポスター。入る前から凄い高揚感と期待感でバクバク。
(記事「シャネル銀座でVOGUEの歴史に触れる〜コンデナスト社のファッション写真でみる100年」)
1984年、オランダのワーメルに生まれたイリス・ヴァン・ヘルペン。
自然と調和した緑豊かな地で育ったイリスは、幼い頃からクラシックダンスを学び、アレキサンダー・マックイーンやClaudy Jongstra(オランダのテキスタイルデザイナー)の下で経験を積み、2007年アムステルダムに「メゾン イリス・ヴァン・ヘルペン」を設立します。
そしてブランド設立から4年というスピードでパリのオートクチュール組合に名を連ねます。
私がイリスの作品に惹かれるのはその壮大な視点の置き方。
肉眼で捉えきれないミクロから宇宙というマクロまで、「存在」というものを次元を貫き俯瞰している。
そしてその意識を衣服に落とし込んでいるという驚異。
「あなたはどうしてこんなに美しく存在しているの?」
シャルル・アレクサンドル・ルスール(Charles Alexandre Lesueur)のクラゲのイラストを見ていたら聞こえてきた。
単にクラゲの形や色、動きをドレスに反映しているのではなく、その構造がどこからやってきたのか、というイリスの「存在への強烈な探究心」が織り込まれている。
イリスに多くの影響を与えたドイツの生物学者エルンスト・ヘッケル。私も大好き。
絶えず振動している素粒子が構成する私たちの世界。存在は意識がつくり上げ、感情がその人の世界を映し出す。それは「宇宙の理」。
素粒子が意識によって物質化するまでの流れを、エネルギーを捉えられる人なんだろうな。
すべての存在はエネルギー。だから制限というものに邪魔されない。ジャンルなんて軽々と超える。
水、空気、無重力、骨格、結晶化、変態、ハイブリッド化、催眠、魂、共感覚、明晰夢、再生など、様々なテーマに挑み「イリスの愛する世界」を具現化する。
イリスの作品に遍在する水。
小さな一滴から大海へ、迸る滝にうねる波。絶え間なく動き変化する存在を衣服に落とし込み、その美しき揺らぎまでを表現しています。
墨汁を水に垂らした時にできる模様を留めるという技法「墨流し」を表現したドレス。
波とか羽とか…自然界の「動き」をも衣服に留め、従来のものの見方、捉え方の境界を超える。旧世界からの離脱。
イリスはエネルギーをあらゆる技法、素材を駆使し、様々な世界を通し、ドレスとして私たち視せてくれます。
視えないけれど「存在するもの」を人が感知できるスケールに置き換えて魅せてくれます。
骨格も
フェルッチオ・ラヴィアーニの振動するキャビネットに共鳴するドレス。
有機物も無機物も人工も自然も。
圧巻だったのが素材の展示。様々な個性の素粒子たちをイリスが「これからドレスになるのよ」って整列させたみたい。
みんなイリスの号令でドレスになるのを楽しみにしているかのように躍動してた。
鳥さんの骨格が軽やかな刺繍となって飛び立つ様が麗しい。
イリスの「CABINET OF CURIOSITIES:驚異の部屋」には美しいDeyrolleの標本!
(記事「パリの麗しき標本屋DEYROLLE ( デロール)/ パリの驚異の部屋②〜パリ旅行記⑶」)
イリスの生まれたワーメルはヒエロニムス・ボスの生まれた街デンボス(Den Bosch)に近く、イリスはボスの錬金術や神秘主義の幻想的世界に浸り観察しながら育ったそう。
想像したことはその時点で既に別次元に存在する。実現とはそこに周波数を合わせること。
「COSMIC BLOOM」の空間では、フラクタル(自己相似性)を感じました。
肉体、精神、魂、記憶、根源。視えない世界が物質界に影響を与え、すべてがつながっている。イリスは既存のものの見方を超え、新しい世界の扉を開いてくれました。
イリスのドレスは「宇宙の理」が具現化したもの。
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