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回想

*幼い頃

暖かい日差しの中、
目をつぶると光が瞼を伝って話し掛けてくる。

眩しいオレンジ色の太陽のはずなのに
黒、茶、オレンジ、黄、緑色、
色んな色に変化して自然の神秘さを
伝えてこようとしてくれた。

肌が焼ける事など、考えもせずに、
気にもせず、私は必死に瞼の奥に溢れる
幻の光を記憶しようとした。


雨は激しく地面を打ち、
そして私は規則正しく繰り返される雫の流れを窓からぼーっと見ていた。

雨が嫌だと思わなかった。
こういう日もあるんだと自然に受け入れていた。とても素直だったんだと思う。


風が吹き荒れる日、
家の中はストーブの暖かい優しさで溢れる。

なんの心配もせずに
いくつもの本を順不同に読んで過ごす。

外の騒ぎなど一切関係ない。
ゆったりとした幸せの瞬間だった。


夜の庭に輝くライトは、
とても人工物に見えなかった。

木々は伸びやかに夜風に揺れて、光は温かい。
目を細めると輝きが増して
この世は美しいのだと勝手に思い込んだ。


私には雪は輝いて見えなかった。
でも、寒さを感じずに遊び倒した。

雪の日にしか着れないスノーウェアは、
着方が複雑でそれを着ることによって
少し大人になった気がした。

はしゃぎ過ぎた日には、熱を出したが
苦しみはなく次の冒険へ思いを馳せた。


幼いからこそ、世界は広かった。
大人になればなるほど、切ないほどに
世界が狭くなったように感じる。


だからこそ、もう一度
まだ感じてない美しさや、感情を、
忘れてしまった景色を、
もう一度見つけてみたくて
肌で体感してみたくて
毎日に目一杯の期待をよせて
今日を探す。


サポートは、感性の探求に使わせて頂きます。 *世の中に美しいものが一つでも増えたら 人々の心が、生活が豊かになる。 そう信じて、これからも作品をお披露目致します。