なぜ日本にはエスニックカウンセラーがいないのか?


多様性や、多文化共生が叫ばれて久しいのに、エスニックカウンセラーがいない。日本語に無理矢理訳すと、異文化間カウンセラーかな?

ニュージーランドでは20年前には既にスチューデントサービスの中にいた。短期の留学生でも利用できた。
メンタル関係の各種サポートグループのリーフレットはこんもりあるし、養護教諭ではなくて、正規の看護師の資格を持ったスクールナースも常駐。
カウンセラーは、緊急時対応のために自宅の電話番号も渡してくれるし、ドクターも定期的に来て、留学生でも薬が必要なら処方してくれる。
マオリのための民族学校もあった。
オランダでは、移住してきた子供たちのための学校があって、そこでオランダ語を学び、ある程度のレベルに達たら、一般の学校に行く。
学年や学校年齢よりも、本人の習熟度や適正、希望に合わせて決められる。それぞれの宗教や、将来の進路向けに、学校の種類が複数あるからだ。
もともといる移民たちは、それぞれの宗教や、民族のための学校があって、親や子供が選んで通う形(保護者が学校を作ることもある)。私立でも地方政府から学期は全額補助される。
*現在は諸事情により若干変わっている模様。

ドイツでは、官民半々出資の語学学校に、大人用の統合クラスがある。
そこではアビトゥア(日本語的に言うと高校卒業証明試験←これに受からないと大学に入れない)対策の為のギリシア語やラテン語のクラスもあった。

オランダ、ドイツ両国ともに、母語教育(母国語ではなくて母語)の為の場所はきちんとあって、私の前のパートナーや彼の親戚は、幼児の頃から母語(ロシア語)とホスト国の言葉(ドイツ語)の両方を話し、一番上の子は今では英語も話せる。

ユーロでは、ユーロ内の他の国の言葉(フランス語やスペイン語、ポルトガル語、イタリア語など)義務教育で必須なので、そちらも多少は話せるだろう。

トルコ系の友人は、家ではトルコ語を使い、学校や街ではドイツ語、旅行や仕事では英語を使う。
スイスやルクセンブルクでは、スイスドイツ語を家庭や地域で使い、仕事や学校ではHochdeutsch。ルクセンブルクの友達は、それにプラスしてフランス語も話す。

総合大学や単科大学の場合、民間の語学学校で勉強するか、大学の語学クラスで勉強して、語学試験に合格すれば、外国人、ドイツ人関係なく、同じ内容を学べる。日本のような留学生用のコースは存在しない。
ビジネススクールや、コースによっては英語での受講も可能。
(すでに大学を卒業している人、交換留学生と、私費、公費留学生ではそれぞれ状況が異なる)。

奨学金や、アウスランドセメスター(1学期間海外で勉強して見識を広げる制度)も条件を満たせば適用されるし、授業料も同じ。
成績上位者は学費の返還もある。私が滞在していた時に、学費が有料だった州は、帰国後に学費は無料になった。

*現在はまた有料になっている模様。それでも優秀な学生には奨学金が出るので、学費は実質無料。日本よりカバーされる度合いが広いので、生活費も奨学金で賄える。
ヨーロッパの大学は基本的にほぼ全て国公立なので税金でまかなわれている。その中でもドイツの学費は非常に安い。

各国の同化政策や、移民政策については様々な意見があるが、それでも、他文化とは何か、この国がヨーロッパから学ぶことが多い事は間違いないだろう。

前置きが長くなったが、日本にはエスニックカウンセラーだけでなく、移民弁護士もいない。(ビザ関係の行政書士さんはいるけど)。
これは、移民法を専門にする弁護士がいないということ。というか移民法そのものがこの国には存在しない。

と言うことで、困った時に相談する人が、外国籍の人や、国籍を複数持つ人たち、ルーツが複数ある人は非常に困る。

いわゆる人権派の弁護士さん達も、専業ではないので、数も理解も圧倒的に足りない。

日本が国籍、言葉、民族がほぼ一致している、世界でも珍しい限りなく単一民族に近い国だ。

いまだに外国語と言うと英語しか思いつかない人も多いし、欧米しか見ていない。日本にもたらされる海外のニュースは、80%が英語経由と言う話を聞いたことがある。その次にフランス語。
理由はおしゃれで素敵だから。実際は暴力沙汰や、レイプ、テロ、破綻家庭、児童虐待など社会問題だらけの国なのに。

日本の公教育では、EUのように、義務教育期間中に、隣国の言語を選択科目としてすら選べない。
私立ではフランス語やドイツ語を選択できるところはあっても、中国語や韓国語、タガログ語やインドネシア語、アラビア語、ペルシア語などを学べる場所は、民族学校以外にない。要するに公教育の中で使われている言葉は、日本語と英語のみなのだ。

これでは文化的な複合性や、複雑性はいつまでたっても理解されないだろう。

ちなみに中国人には語学の堪能な人が多い。これは本人の努力だけではなくて、音の聞き分けができるから。
中国語は音域が日本語よりも広く、母音も子音も日本語よりも多く、そして喉の奥を開く。
日本語は基本的に喉の奥を閉じて話す言葉なので、外国語を学ぶときに非常に不利である。

私の友人は、中国語、英語、ドイツ語、フランス語のマルチリンガル。中国語以外は大人になってから身に付けた。もちろん本人の向き不向きもや努力もあると思うが、やはり母語の影響は大きい。

英語なんかいくらだって後付けでできる。家庭や社会で使っていない言葉のネイティブになるのは無理だし。
母語を固めてから第一"外国語"として勉強したほうがはるかに伸びる。

グダグダになってしまったが、世界には様々なバックグラウンドの人がいて、日々摩擦を起こし、火花に揺れながら社会が成り立っていることの方がデフォルトであることを、1人でも多くの人に知ってほしくてこの記事を書いた。
多文化共生なんて簡単じゃないし少しも美しくない。

追記: 欧米ばかりが取り上げられがちなので、日本ではあまり知られていない中東レバノンについて言及しておく。
中等教育以上は、英語がフランス語の選択が必須ではなく授業はすべてどちらかの言語で行われる。生徒はどちらかを選ばなければいけない。よって必然的にバイリンガルまたはトライリンガルになる。(アラビア語だけでもフスハーとアーンミーヤがある)。英語とフランス語両方できた方が将来有利なので、教育熱心な親は子供たちに、両方の言葉を学ばせる。
よって国際的に非常に発信力が高いく、諸外国で活躍するレバノン人も多い。(あのカルロスゴーン氏も、レバノン移民である)。

かつて中東のパリと呼ばれた首都を持つレバノンは、政情不安にありながら、国を挙げて教育に力を上げているし、親世代も教育に熱心なので、大学進学率も小国としては非常に高い。(女性もだ)。友人の子供たちはコロナ禍にあって、心理カウンセラーのアドバイスを受けていた。というか、友人のいとこは児童心理学者だ。
宗教はイスラム教オンリーだと思われがちだが、クリスチャンが20%いる。そのクリスチャンもカトリックを始めいくつもの宗派を信仰する人々がいる。
(私には、ムスリムとクリスチャンの友人両方がいる。1人はカトリックで日本在住である)。

ともかく世界は、日本とは比べ物にならない位、複雑で多様だ。

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