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ドイツ詩を訳してみる

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2018年12月の記事一覧

ゲーテ「魔王」(ドイツ詩100選を訳してみる 5)

前回のアイヒェンドルフ「月夜」によるシューマンの歌曲もそれなりに有名ではあるとはいえ、一般的な知名度でいうと、シューベルトの「魔王」と比べ物にならない。今回のドイツ詩100選の中でこれ以上に有名なのは、シラー/ベートーヴェンの「歓喜に寄す」ぐらいかもしれない。

フランツ・シューベルト(1797-1828)の歌曲「魔王」は、1815年、18歳(!)のときに作曲し、1821年に Op.1 として出版

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アイヒェンドルフ「月夜」(ドイツ詩100選を訳してみる 4)

ちょっと思い浮かべるだけでぞくぞくする音楽というのはそう多くはない。ぼくにとって、アイヒェンドルフの詩によるシューマンの歌曲「月夜」(Mondnacht) Op.39-5 はその一つだ。

音楽と文学が蜜月のような関係にあったドイツ・ロマン主義においても、アイヒェンドルフほど作曲家に愛された詩人は他にいないという。音楽のおかげでこんなにも愛され続けていると言ってもおそらく失礼にはならないだろう。

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メーリケ「捨てられた娘」(ドイツ詩100選を訳してみる 3)

前回は語りすぎてしまったが、今回はあくまで詩の翻訳メインで、ちょっとだけコメントをつけるくらいにしてみようと思う。

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メーリケという詩人の名前は知っていたけれど、それほど有名人だとは思っていなかったし、作品を読んだこともなかった。

けれど、統計的に選ばれたというドイツ詩100選の中に、メーリケの詩はなんと8編も収録されている。ゲーテの13編に次いで2位だ。

エドゥアルト・メーリケ(18

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ゲーテ「漁師」(ドイツ詩100選を訳してみる 2) それからちょっとベルリオーズとシェイクスピアについて

ドイツ語の有名な詩を訳してみるシリーズ第2弾。20世紀のアンソロジーに2番目に多く収録されたという、ゲーテ(1749-1832)の叙事詩「漁師」(Der Fischer) です。

1779年、Volks- und andere Lieder (民謡とそれ以外の歌)という不思議なタイトルの本の巻頭に、ゼッケンドルフという人が作った歌の歌詞として載っているのが初出のようです。

同じ年の、ヨハン・ゴ

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