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52.一生懸命になること。私の勝負曲「Turisas / Battle Metal」

その昔、日本から遥か遠く、北の彼方にヴァイキングと呼ばれる民族がいたことはご存知だろうか?

彼らは9世紀から11世紀にかけて、今の北欧や北ヨーロッパを拠点として暮らしていた民族である。

彼らの特徴として、立派な船をこしらえ、武装をし、狩猟や土地や物の侵略などをする様があげられる。

そんな野蛮なイメージからか、ヴァイキングの存在を既に知る人たちからすると、ツノの生えた兜をかぶり、毛皮のベストを着た、あの典型的な姿が脳裏に浮かぶ人も多いのではないだろうか。

実際には、かつて、ヴァイキングの人々はそのような格好をしていなかったと伝えられているのであるが、ヴァイキングという言葉の語源である、「ヴィーク」という言葉が、スカンジナビア半島に位置するフィヨルドを意味し、「ヴィークに住む人々」という意味で使われ、現在では、北欧スカンジナビア半島に住む人々の多くが、自分たちがヴァイキングの末裔であることを誇りに思い、受け入れられている。

そのように、歴史的に見て、格好などを含め、曖昧な部分も多いのだが、そんなスカンジナビアに住む人々が自分たちの祖先の歴史を讃え、そこにフォーカスした文化が存在する。

それが、ヴァイキング・メタルだ。

ヴァイキング・メタルとは何ぞや、と思われた方も多いであろう。

ヴァイキング・メタルとは音楽のジャンルである。

まず、メタルというのは、ヘヴィメタルからきており、簡単に言えば、ヴァイキングのメタルだ。

実際のところ、日本ではヘヴィメタルという文化が広く一般市民の生活に受け入れられておらず、その状態で、さらに頭にヴァイキングが付くのであるから、多くの方は頭がパニックになっているに違いない。

日本にも、ある一定数の熱いメタルファン、メタラーと呼ばれる人々は存在するが、北欧スカンジナビアでは、日本よりも幅広い世代で、ヘヴィメタルという音楽が受け入れられているのだ。

北欧にヘヴィメタルが受け入れられている、その理由として、大きく2つに分類される。

1つは、気候の問題である。

北欧は夏が短く、厳しい冬が長く続く。

気温は氷点下を下回り、1日太陽が昇ることもなければ日中でも雲がかかり、その期間に雲の切れ間から晴れ空を見せる日はそう多くない。

その影響か、鬱や喘息になる人も多く、北欧の人々は、寒さに負けず、気持ちで負けない為にもヘヴィメタルが好まれているという。(諸説あり)

もう1つは、民族的な文化の問題である。

スカンジナビアに根付いてる伝統的な音楽は、ホイッスルや、アコーディオン、カンテレなどの弦楽器といったものから、なされ、哀愁の漂うものが多い。

それが、ヘヴィメタルの旋律に近いものが多いということであり、このヴァイキング・メタルも、彼らの伝統的な音楽の引き出しに、ヘヴィメタルのノリ、そして、彼らのヴァイキングのスピリッツを乗せ、スカンジナビアから発展し、熱く繰り広げられているのだ。

さて、本題に入る前にテーマがマニアックすぎる為に、説明に時間を割いてしまったが、今回は「私の勝負曲ということで、さっそく一曲ご覧いただこう。

(Turisas / Battle Metal 2008)

これを見てくださった方は、どう思ったであろうか。

私がはじめてこれを見た時は、

「ダセぇ…ダサい…」

と思ったものだ。

大の大人たちが、先祖や土地への愛が強すぎるが故に、ぼんやりとしたヴァイキングのイメージから、ツノの生えた兜をかぶり、鎧を着て、おもちゃのような安っぽい武器を振りかざし、大根芝居。

これを見てると、何だか笑えてくる。

しかし、彼らは本気だ。

彼らは本気で祖先が、ヴァイキングであったことに誇りを持ち、本気になって音楽を奏で、その本気が世界地図の極東である、私の住む日本まで届いたのだ。

それは、そうバカにできるものではない。

例えば、仕事にしろ、恋愛にしろ、人という生き物は、何かに全力で打ち込んでいる姿や、その姿勢、熱意を目の当たりにすると、不思議と惹かれるものだ。

私も、はじめに出会った時はあまりのダサさに驚いたが、何故だか、もう一度聴きたくなり、映像を何度も見ているうちに、すっかり虜になってしまった。

そして、彼らの曲は歌詞も熱い。

(Turisas / Battle Metal 2008 )

ぜひ、このリリックをご覧いただきたい。

今回は、その一部を引用させていただこうと思う。

「 Take this sign into your heart and be brave
Let it lead you to your glory or your grave

Today!

Hear me, my warriors
Soldiers from all the edges of the world
Let us join our forces
To an army, united 」

「 誓いを胸に刻み そして誇れ
それが、諸君の栄光と、終わりへ導くのだ

今がその時!

世界に散らばる戦士たちよ。私の声が聞こえるか?

共に力を合わせるのだ。いざ団結せよ!」

このリリックをヴォーカルである、マティアスが曲中に、勇ましい声で叫び上げる姿は、あの斬新な映像とは裏腹に、私が落ち込んだ時や、なかなか踏み出せない時など、あらゆる場面で力を与えてくれる。

カッコ悪くても、いいじゃないか。

自分の好きなこと、誇りに思うことに、堂々と胸を張り、立ち向かう姿は誰もが美しい。

そのようなことを教えてくれる気がする。

他にもヴァイキング・メタルと呼ばれるジャンルにはさまざまなバンドが存在するが、私は勇気をもらった彼らの故郷を見たいと思い、実際に北欧スカンジナビアへ旅に出た。

そこでは、実際に掘り出された、ヴァイキングの船を見たりし、街でもさまざまな発見をした。

すると、不思議なことに、さまざまな縁に巡り合うことができた。

それからは、自分の知らない世界を旅することに惹かれて、各国を渡り歩く生活を始めた。

それが、こうしてnoteやブログを書くきっかけにも繋がり、今はコロナウイルスの影響で、日本に留まっているが、それでも毎日が充実していると思える。

全ては、たった1つの音楽が巡り合わせた縁だ。

ここまで、読んでくださったあなたが、もし、何かに夢中になっていたり、好きなことがあるのなら、私は全力で同士として、応援させていただきたいと思う。

そう思わせてくれるような、優しくなれる、私の人生を豊かにするテーマソングなのである。




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