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スマートフォン、あるいは現代のパリンプセスト
あなたは今の恋人と別れたらその人の写真を消しますか?
少なからぬ現代人がこの問いにイエスと返答するであろう。実際、私は最近1000葉を超える元恋人の写真を消したという話を耳にして、どうせ消すならばそんなに大量に撮らなければよいものをと苦笑した。それにしても、彼らは何を目的に写真を消すのか。おそらく、「ケジメをつけ」、「前を向く」ための儀式なのだろう。しかし、私には、写真を消したところで何も本質
書けないことについて
当初、「書くことについて」という題で出すつもりだったのだが、むしろ「書けない」ことへの思索であることを鑑みるにこちらのタイトルの方がよかろうと思い至り、改題することとなった。
さて、最近遅筆が極まっている。書きたいことはしばしば頭に去来するし執筆にも取り掛かっては見るのだが、400字詰め原稿用紙にしてものの一枚くらいでパタリと筆が止まってしまう。こういうことを表現したいのだという心象はあるにも
ドイツの森事情-Waldszenen
入り口の前に
ドイツで見聞したことを元に、旅行記ともエッセイとも小説とも言えぬ何かを編んでみたくなったので、とりあえず書き始めた(ということは今後も何本かnoteを投稿するかもしれない)。食べ物への不満やらホームレスの話やらネタは色々あるのだけれど、良くも悪くも一番今回の滞在で縁が深かったのは森であるように思われる。ドイツの森。すごくメルヘンチックな響き。
森の入り口
森との最初の邂逅は
寝過ごすことと床屋に行くこと、あるいはカムパネルラの死について
久々に寝過ごした。かなり見事な寝過ごしであった。神奈川を走っている間は、ナボコフの『ロリータ』をその長ったらしく過度に皮肉っぽい文体に辟易しながら読んでいたのに、気付いたら浦和駅に列車は滑り込み『ロリータ』は手から滑り落ちて無惨に床でくしゃくしゃになっていた。あるいは、神奈川を走っている間は僕の向かいにいたのはマリンブルーのボタンダウンに黒のジャケットを合わせ、ベージュ色のハーフコート(裏地が素
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