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未知の鼓動 -日々是アート- 2024

それは視えてくるのです。
己が求めに導かれて顔を上げると、未知の鼓動は聞こえます。
あの時この時、あの場所この場所、鼓動の響きが聞こえてくる処へ、どうしても逢いに行きたくなったのです。

細川護熙揮毫 京都龍安寺「雲龍図」襖絵 on Sep. 4th,2024

洛北には5室に渡るこの9図40面も。誕生から成長、そして老いに至る生涯を描く。
風神による捕縛での苦闘〜前龍未到の大波との格闘〜雲烟中の知恵真珠を把持、その様は他の龍図で時折みられるユーモラスさを一切排除し苦悶や満足さ,経年がそれと分かる生き物として描かれ、峻烈で迫力の背景描写と合わせ真に迫る。
一年前の銀座で細川さんの作品と初邂逅。以来、所蔵元での再逢を待ち探り訪れたこの機会、別作品だったが炎天のもと足を運んだ甲斐あり。ただ、各室には立ち入れず回廊からの鑑賞だったことが少し残念

五彩を感じて 印象の墨の世界@堂本印象美術館 on Sep. 4th,2024

帰阪に合わせ、先に洛北で立ち寄り。印象さんの作品は初か?(記憶には…ない気が)
《立華/天人/禅のシンボル/キリスト/京舞/舞妓/表千家の門/茶道》いづれも新聞挿絵の京都編。軽やかで親しげ、身近な雰囲気の筆致
《無限界/自省/開示/喪失と体得》墨のみこその深みと迫力、アンフォルメル風抽象を描くに向いている。文字ではないが文字のような何かも感じる。哲学的?テーマ
《雲収日昇》六曲一双。夜明けの薄日差し霧に煙る松林、凛として清冷
《はるかなる海》墨に金銀の彩色、動的な抽象筆捌きにも内海の長閑さが観える
《交響》惹き込まれる。墨の濃淡線が重なり合い、金の飛沫、背後の青緑の空間から響き合う音が前面に飛んでくるよう
《風神》黒白金赤、太く強く荒々しく、恰も風神の如く
《朝の輝き先ず高山を照す》晩年作。しっかりと頂と雲海、落ち着いた風情
水墨でもひと味違う墨使いでのアンフォルメルとの貴重な出逢い

髙田賢三 夢をかける@東京オペラシティアートギャラリー on Aug. 27th,2024

アルファベットで”KENZO”。ファッションへの興味が始まった頃、”ISSEY”と共にコレクションで活躍する代表としてその名を知り、理由も無くカッコ良さを感じたのは’70年代か。
展示作品からは、まさにその頃の躍動や活き活きさが伝わり、キュート,溌剌,はたまたシック、鮮やかな色使いと柄の組合せ、またインスパイアされる事象の多様さで、観ている眼を捉えて離さないかのようにいっときの錯覚も。
数多のトルソーを彩り繰り返されるフォークロア調に、KENZOの感性と目指した(求めた)モードが息づく

鈴木康広展 ただ今、発見しています。@二子玉川ライズ スタジオ&ホール on Jul. 22nd,2024

“見立ての視点を変える(が変わる)””目から鱗”を実感出来る、31点と足元に散りばめた数々の呟き。
《ファスナーの船》「飛行機から見た船はファスナーのよう」言われてみれば… 《地球展開儀》そんな船のようなファスナーを開け(航行させ)ていくとポッカリと中が… 《自然を測るメトロノーム》1秒〜10K年迄9段階での設定可能な表示、恐らく誰もその正確さを確認できそうにない《軽さを測る天秤》水中に逆さの両秤は下方からの泡を受け測るが如く… 《りんごのけん玉》「けん玉は地球の引力を相手にした遊び」からインスパイア《磁力線のりんご》整然とした磁力線が囲う中央には黒塗りのりんご芯、これが磁石か… 《器の人》人の様な木彫りは複数に分割可能で、其々が様々なサイズ,形の器に《足の箸》正に足!持ち手側の先にはバタ足をしそうなフォルムが、そのまま食べ物までバタバタと…
そして《近所の地球 旅の道具》は今回のお気に入り。かなり大きな透明トラベルトランクには作家の発見品が並べられ、〔自画像のパネル〕はジグソーな手鏡/〔銀閣寺のチョコレート〕は甘いカカオの寺院が銀色の紙に包まれ/〔ペットボトルの鉛筆削り〕は刃がキャップに仕込んであり/〔椅子の音符〕は木製椅子が音符に見える/〔自分の日時計〕はヒト(の形)が陽を受け時を刻む 等々20点ほどが。こんなのを持ち歩ければきっとウキウキ。
幾つかの体験型コーナーは眺めるのみでも自身にはこれで充分愉しめた

TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション@東京国立近代美術館 on Jul. 9th,2024

34テーマ其々に3都市の館での所蔵作品が並びその場を彩る。中でも気になった作品を。
【コレクションのはじまり】3館3様。ロベール・ドローネー《鏡台の前の裸婦》淡いが鮮やかな多色、少し大判に色彩が響き合う。安井曽太郎《金蓉》ゆったりと腰掛けて、静かだがどこか凛とした。佐伯祐三《郵便配達夫》これがスタートだった。パリ、いつもの配色
【川のある都市風景】アルベール・マルケ《雪のノートルダム大聖堂》うっすらと積もる、モノトーン柔らかな色調。小出楢重《街景》煙の都をモダンに描く、シックにしかも活き活きと
【都市と人々】ユトリロ《セヴェスト通り》遠近しっかり、建物くっきり。長谷川利行《新宿風景》少し荒いタッチで賑わう様を
【加速する都市】カッコいい未来派。フェリックス・デル・マルル《メトロのモンパルナス駅》駅と車両と客を大胆に再構成、まるでキュビスム風ポスター。川上涼花《鉄路》夕映の線路を陽に向かって駆け抜ける。ウンベルト・ボッチョーニ《街路の力》強く照り注ぐ街灯、疾走する路面電車、色と光が交錯しゾクゾク
【都市の遊歩者】ユトリロ《モンマルトルの通り》松本竣介《並木道》佐伯祐三《レストラン》3展3様で静かな街を
【近代都市のアレゴリー】デュフィ《電気の精》カラフルな10枚連作、いつ観ても作品全体から当時のウキウキ感が
【都市のグラフィティ】フランソワ・デュフレーヌ《4点1組》剥がしたポスターをただカンヴァスに貼り再構成、新鮮さも。佐伯祐三《ガス灯と広告》構図と色合いは”ポスター街角”では これがベストか。バスキア《無題》NYとTOKYOでのインスパイア、バスキア如何にも
【夢と幻影】【現実と非現実のあわい】この室には摩訶不思議が漂い、暫し足止めされて…
【モデルたちのパワー】マティス《椅子にもたれるオダリスク》萬鉄五郎《裸体美人》モディリアーニ《髪をほどいた横たわる裸婦》主役はそう其処に
【美の女神たち】ジャン・メッツァンジェ《青い鳥》3女性の姿を分解統合し大判に、キュビスム的。藤田嗣治《五人の裸婦》レオナールの裸婦は美しい
【人物とコンポジション】マリア・ブランシャール《果物籠を持った女性》珍しい縦長、宗教画風で
【機械と人間】レジェ《パイプを持つ男性》東郷青児《サルタンバンク》機械的,無機質が見事に表現されて
【プリミティヴな線】カレル・アペル《村の上の動物たち》稚拙に見える絵には楽しさエネルギーが
【差異と反復】中西夏之《紫・むらさき XIV》白と紫が重なり合う、強い雨垂れのような
併催のコレクション展、その所蔵の多さからいつも乍ら新たな出逢い。
長谷川利行《タンク街道》力強い筆致とビビッドな色使いに惹き込まれる。ピカソ《ラ・ガループの海水浴場》おそらく初見、珍しい横長。戦時下作品では、向井潤吉《四月九日の記録(バタアン半島総攻撃)》和田三造《興亜曼荼羅》猪熊弦一郎《○○方面鉄道建設》いづれも大判に力強く、絵画だからこそ表せる,伝わる真実がある

NOHIN: The Innovative Printing Company 新しい印刷技術で超色域社会を支えるノーヒンです@ギンザ・グラフィック・ギャラリー on Jul. 3rd,2024

デザイナー八木幣二郎の個展が面白そう、で昨9月以来の訪館は2部構成で。
まずは、実在しない巨大印刷会社「NOHIN」。チョット仰々しい架空CIをスゴく面白く楽しく観せる。ロゴ/事務用品/ユニフォーム/輸送車両デザイン図/社屋 何と創業者まで。同社製品の肝となるのは新発見の”Z線”、それを搭載した「ZDプリンター」「仮想光スフィア」や街中での作品使用例までがリアルさを伴って。プリンター本体は最早”ホンモノ”に見えてしまう。何も知らずにCompany Profileで示されれば信じてしまいそうな… また、BGMがSFサスペンスっぽくゾワっと心地良い。
次はグラフィックの巨匠10名の傑作とそれらへのオマージュ作(再解釈)とを並べ、オリジナルのコピーテキストを活かし作家独特のデジタルグラフィックを駆使。亀倉雄策《Nikon Nikkor 放射能遮蔽レンズ》には《NOHIN Zolor Z線絶対集光レンズ》で返すご愛嬌。
巨匠傑作では、杉浦康平《伝統と現代芸術》初見、仏陀/寺院/蓮/曼荼羅の図形が趣を醸す。田中一光《簡体字の研究》青系と緑系で鮮やかに漢字をクローズアップ、いつもながら文字配置が絶妙。他巨匠は浅葉克己,勝井三雄,戸田アトム,長友啓典,福田繁雄,松永真,横尾忠則。
作家は「デザインとは何か」と尋ねられ「嘘を本当にできること」と答えたそう。”フェイク””インフォデミック”という言葉が生まれ氾濫するイマを映す、いやもっと先を凝視めているのか…

第4回 FROM —それぞれの日本画—@郷さくら美術館 on Jun. 19th,2024

さくらを描いた作品で著名な同館は2度目、”FROM”という名のグループ展の”現代日本画”へ。
川﨑麻央《韋駄天Ⅰ Ⅱ Ⅲ》 殊に朱色が美しい3ポーズ、カッコ良くそしてユーモラスさも 《ほろろ》鳥がいる。青,蒼,碧が迫り、射すくめる眼差し
長澤耕平《森の夜》軸装7幅、朧朧と明かりに浮かぶその向こうに何か潜んでいるのか
山浦めぐみ《A Landscape - Misen, Itsukushima -》瀬戸内、弥山と厳島を望む。独特のモダンなタッチと配色、雄大さが伝わる
木下めいこ《春爛漫〜白〜》厚い杉板3枚に岩絵具で春の咲き誇りを、正にらんまん
押元一敏《創世/妙義/双》ただそこに石が存在する風景。圧倒的なスケール感、ここに到るまでの時を想う
野地美樹子《幻》森をバックにすっくと巨きな樹、一面の雪化粧。淡い色彩で白が映える《Sijima》雄大な雪林、青い夜の静寂、三日月。作家は此処で1人置かれ何想う。何故か寒々とは感じないただ静けさのみが
武田裕子《春のそこ おだやかなこちら》屋内から眺める梅の木/池に映る梅の木の影を俯瞰的に眺める 2枚1組。明るく穏やかな刻が流れる、絵巻物の一部のような
大きめ作品が多く絞られた数での展示。だからこそ、ただ観るだけでなくその余韻も愉しめる。
併催「桜百景 vol.35」には同館コレクションから13点が。小杉侑未《淡陽》と須藤和之《鏡桜》が立ち止まらせる

第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで⽣きてる」@横浜美術館 on May 24th,2024

改装休館明けから早2ヶ月、お気に入りの館へ漸く。ファサード、オルセー似のグランドギャラリーはじめそれ自体が美しい内外観との再会。
「野草」は魯迅の著作から。
資本主義、科学技術、社会制度の破綻… 5カテゴリーでそれらに向き合い、考え、そして先にある未来を想像する。
《いま、ここで生きてる/Our Lives》非常事態、創造する力
《密林の火/Fires in the Woods》現在を映し出す歴史上の紛争、対立、衝突、事件
《わたしの解放/My Liberation》組み込まれ(巻き込まれ)からどう自分を解放するか
《流れと岩/Streams and Rocks》進む力と阻む力がぶつかるところに生命力が迸る
《苦悶の象徴/Symbol of Depression》芸術とは「抑圧強制」と戦って生じる「苦闘の表現」、それが未来を切り開く力に
こちらの脳に刺激がガンガン入り込む、とめどなく。言葉、絵、映像、音(声)、写真、彫刻、オブジェ、布(染め,描く)、インスタレーションが近代グローバルの課題(歪み)を洗い出す、白日の下に晒す、赤裸々に暴く。
虐げる、悼む、惑う… 起こらなければ生まれてこなかった言葉(文字) とハタと気づく。
“抗う”というキーワードにも出会う。
展示作品は、社会的インパクトを感じるのは勿論だが、創造されたものとしても純粋に愉しめる。個々に気になる,揺さぶる作品あるも数多くここでは記述せず、勅使河原蒼風《富士の連作17点》のユニークさに惹かれたことのみ書き留める

シンフォニー・オブ・アート イメージと素材の饗宴@群馬県立館林美術館 on May 15th,2024

青と緑に装われたシャープな館、”集める”という視点から創造を奏でる。
田中敦子《作品》×2《Work》円と線(回路)でのコンバインはやや稚拙な感じもするが。カラフルでビビッドで
山中現《星の道》星夜の下に杭が続く、遠き山への道の如く
清水柾博《image of Mr.S-A,B》陶製とは! 板状の土を切り複雑形状に結合、黒(A)はマット感で白(B)は照り感が
宇佐美圭司《飛ぶ鳥 No.1 Flying Island(Laputa)》ヒトを包んだ球を円環状にしカラーはグラデーションで。シュール風にも観えるが配置が揃うと綺麗でシャレている
勅使河原蒼風《群れ》古鉄を活ける、生きものとして扱う
梅沢和木《5作品》Web素材を集め編集、手法は新しく目を惹くが興味に迄は…
福田美蘭《大津絵-雷公》可愛げな雷様、緻密でカラフルで活き活きと描く。アクリルで墨風にも
山口晃《深山寺参詣圓》初訪のお目当ては山口晃の原点を。寺院,参道,橋,古今の人々、30年前のこの卒業作品からその緻密さは更に増し増し今に至る。
司修《同時代ゲーム》大江健三郎の著作の装丁画、未読だが画からは少し神秘的な感
渡辺香奈《The River》中央に女性、その周りで果物や食器が宙を舞う。副題「禍福は糾える縄の如し、人生の流転」、本作は左(花),右(黒い渦巻)が揃って完全とのこと、観たい
スタン・アンダソン《紙漉き作品1》《立体作品》樹皮,木,動物骨を用いて自然や土着(ネイティヴ)を表す
トニー・クラッグ《グリーン・リーフ》鮮やかで明るい緑の双葉は集めたプラスチック破片で、後悔,失望から希望,再生へ
ラウル・デュフィ《動物詩集あるいはオルフェウスのお供たち》植物に囲まれた動物の木版画、デュフィにもこんな作品が
徂徠友香子《Entropia,Liquid Space,Energeia,Cosmic Fragment,Aletheia》素材はウール、それが恰も生き物や分裂する細胞のように観えてくる
出居麻美《ドットのある構成,青いかたち,NO RETURN,dot on pink,COLORATION,on the road》数種の化繊を素材に文字や柄が浮き出るような織りは美しく涼やか、デザインが秀逸
素材、特に繊維を用いて様々なモノ,カタチ,イメージ,想いが創り出されて

青山悟 刺繍少年フォーエバー@目黒区美術館 on May 2nd,2024

全てを刺繍で、格別のワザ。
《おやすみなさい、ぼくらのまち》《常識モンスターをやっつけろ!》地元小学生との楽しい共作、観ているこちらも楽しい
《駐車場》茜空、ポツンと街灯、佇む車たち… 静かで雰囲気ある
《校庭(東)(西)》少し淋しげな、哀愁…
《Ring》黒背景に浮かび上がるゴールドのスカルに魅了
《About Painting》近代国内外29絵画を4象限マトリクスで分類(Social↔︎Personal/Radical↔︎Conservative)し壁一面を使って。それらに関する刺繍作家による解説?テキストも同室内に。面白い、作家自身の人となりを知る手掛かりでもあり、満載の小ネタで更にアートが楽しく
《メルケル》メタリックで見事にメルケルが其処に、結構な凄技
《The Lonely Labourer》アーツ アンド クラフツ運動を主導したウィリアム・モリスの言葉を。手仕事から工業ミシン、次はコンピューターミシン(AI)という流れは止まらないという現実を噛み締める
《Everyday Art Market》コロナ禍下での作品群には笑みとともにシニカルが点在
《The waste of labour power would come to an end》労作、3000mの金糸,黒糸でミシン2ヶ月
《アーティストたちの世界地図》これは刺繍ではなく鉛筆で、多くの手による大作
《刺繍家たち(名もなき刺繍家たちに捧ぐ)連作》写真にカラフル糸で敬意とオマージュを
《ユートピア便り 連作》19世紀の女性(写真)に現代セレブファッションを刺繍で着せる。
cf.ユートピア便り:社会主義が実現した22世紀のユートピアを描いたウィリアム・モリスによる19世紀の著作
《News From Nowhere(Labour Day)》《Come See What’s Real》19世紀労働者の日をイラストに、会場の旗々にはイマのスローガンを
《サブテーマ「永遠なんてあるのでしょうか」》時代の趨勢、消えゆくものたち(紙メディア,キャッシュ,タバコ,チケット…)を想いそして残す
観終わって多くの言葉がよぎる”疑問,侘しさ,ヒトを取り戻す,移ろいゆく,転生”。肝と感じるのは”ミシン”、産業化の象徴としての。

平等院ミュージアム鳳翔館 on Apr. 22nd,2024

帰路で宇治へ寄り道、関連書籍に教えられた古の素晴らしい宝に逢いに。
《梵鐘》暗めの室内に緑青色がどっしりと
《鳳凰堂内装飾・壁扉画(復元模写)》山川草木来迎が室一面に鮮やかな色彩で
《雲中供養菩薩像》この訪館のお目当ては寄り道し甲斐大いにあり。木彫、阿弥陀如来を供養し讃えながら飛翔する菩薩の群像、合掌,印を結ぶ姿や楽器奏など26躯が仄暗い室内全体に浮かび、スポットライトでの影が壮趣さを際立たせ。元の彩色で揃えば美しかろう、いまでは木地色だがそれがまたいい。幾度も幾度も眺めていたい… そう想わせる。
未訪の鳳凰堂には残26躯が阿弥陀如来座像とともに、他のお宝と併せ次の機会のお愉しみで

特別展示「Energy エネルギー 〜自然界の神々〜」@絹谷幸二天空美術館 on Apr. 22nd,2024

これ迄帰阪に合わせて幾度か企てた訪館を漸く実現、パートナーと神仏自然の絹谷ワールドへと。
エントランスのゾーンでは《平治の乱》《夢無辺》の2題で3D映像。アニメーションでなく子供だましでもない、独特な浮遊感と没入感や気持ちの解放、そしてテクノロジー関心も掻き立てる。ヤマトの心も揺さぶられ、復古ではなく。
テーマ作品の展示は「万物創世」「祈りの形象」「自然への畏怖」3ゾーン、独自の解釈と満ち満ちるエネルギーが迫る。《喝破》降三世明王が”誤りを正し真実を解き明かす”《オマージュ平治物語絵巻》左の”喝”には憤怒の明王が動として、右の”空”には如来が静で、背景に紅蓮の炎。《黄金背景富嶽旭日・風神・雷神》両神からイマへの強い警鐘。展示の全てで、時空を飛び越え掛け合わせて、時にユーモラス時に力強く、課題を突きつけ幸を祈る。いづれも紅系が多用され漲熱表出を強く体感するが、描かれるのが神仏のためか何故か穏やかに観ることができる。
他展示では《キーコボンディ氏の肖像》キュビズム的な顔含め立体絵画で伊への憧憬を《子どもの城フレスコ画アラベスク20連作》遠近技法に古今東西異国情緒が、シュール風も《イタリア天空の調べ》歴史,文明,芸術へのオマージュを盛り込んで3DMAP的に

『シュルレアリスム宣言』100年 シュルレアリスムと日本@板橋区立美術館 on Apr. 12th,2024

100年前のアンドレ・ブルトン、理性に制御されない無意識界の探究と不可思議なものへの賛美。
シュルレアリスムの不穏さは時として鑑賞の足留めともなるが、これだけ揃うとその多様さでの興味関心が先に立ち、刻を気にしつつもまた周回を。
東郷青児《超現実派の散歩》浮遊には不思議さが必ずセットで
古賀春江《鳥籠》シュルレアリスム+モダニズム。鳥籠の女性など一見”寄せ集め”がそうはならずに…
飯田操朗《婦人の愛》黒と赤の対比がベースの配色、忘れ難い。そこに人体フォルムや果実のようなものが描き出され、ひと目でお気に入り
山本正《青年》赤褐色の人体(筋肉)、薄色の椅子?、壁の緑と床の青、取り合わせが印象的に映える
米倉壽仁《ヨーロッパの危機(世界の危機)》卵形の欧州は欠けた箇所から様々なものが突き出てそれに鳥が、破綻が兆す
小牧源太郎《民俗系譜学》少しグロテスクにも感じる異形のもの、胚で浮遊する胎児達、背景にぼやけて見えるは汽船?なのか
今井大彭《背徳》背筋がゾッとするよう。心理を描写、いや脳内を覗かれている
靉光《眼のある風景》再見だが観ずにはおれない、一種対決にも似て
浅原清隆《多感な地上》リボンが鳩に、白いハイヒールが仔犬に、変わりゆく
山下菊二《新ニッポン物語》占領下の痛烈な風刺をポップアート調で
小山田二郎《手》掌に目、暗いトーン荒い筆致で強い
そして福沢一郎《他人の恋/人》いつ観てもこの方のはやっぱりスゴい
意識は内なる声に…
大塚耕二《トリリート》水辺のストーン、浮かぶ流木 。シンプルさが気になる
森堯之《風景》静かな山裾の景色、近づくと暗く寂しいそして放置されたモノ
杉全直《跛行》海辺のさびれた小屋、何故か踊っているかのような小さなドレス姿が
石井新三郎《作品》手前の机から覗ける奥にも机、3人の釣り人、背景は砂の大地
石田順治《作品2》青空の雲、冠状の地面、不思議な雰囲気を醸す
佐田勝《廃墟》グレートーンで輪郭も不確かな建物、濃青の空と対照的な虚無
片谷瞹子《狭き尾根》缶に挿す鋏に結ばれた淡赤のリボン、遠くの月、静かなシュール
堀田操《断章》青緑で描く廃墟,骨、欠けたグラス,古テーブルそしてアドバルーン
これ迄に目にした作品も幾つか、国内でもこんなに多才なシュルレアリスムが創造されていたことを知れた感慨。そして、表現を奪われた往時を偲び今の良さをもっと噛み締める

広がるコラージュ@目黒区美術館 on Mar. 12th,2024

“表現手法として多様な素材を組み合わせて”という認識だけで、これ迄はたまたまお目に掛かった程度のコラージュ、企画テーマとして鑑賞するとそれは興味深く。
新聞,雑誌やダンボールの紙類のみならず果ては差金,レコード!まで。創造の具現化は尽きず。
淀井彩子《コンポジション(1)(5)》基底材に素材を貼り塗り凹凸を作り刷るコラグラフ、版画だが立体風(浮き感)で面白い
草間彌生《帽子/南瓜》小品ということもあるがコラージュだからの柔らかさで其処に
福沢一郎《大砲のある静物》お気に入りの福沢一郎は対象も独特。油彩だが”意外な組み合わせ”として広く捉えられての展示、その解釈が素直に嬉しい
深沢幸雄《版画集 アルチュール・ランボー「酔いどれ船」》メゾチント版画。幻想近未来世界とでも呼ぶべき、シュールでもある。モノクロだからこそ捉えられて離さない
今井俊満《ゴーゴーガール/黒猫と少女》絵具投擲,手形べったり,素材直貼,見つめる黒猫 自由なアンフォルメルには無邪気な奔放が満ちる
黒崎彰《サンフランシスコのファンキーアート/リンダ/ニューヨークの落書き》らしい素材でポップアートっぽく、鮮赤使いグッド!
ロバート・ラウシェンバーグ《コミュニケーション/人権》セピア調で素材が活きる。ネオダダの代表格だそう
前田常作《人間波動粒子シリーズ 9×9》格子状に淡い点描の画々。その場だけは身体,精神を感じる境地、密教,宇宙の想念に馳せる
不動茂弥《落ちる文字》文字でのコラージュ、数箇所に分けられ各々独立したデザインも調和がとれ《庚神》こちらも文字で、まるで都大路を俯瞰しているかのよう
野村久之《カルマ》顔料,箔,鉄粉で赤茶黒の凹凸、大胆な構図
併催は「IIDA 101 飯田善國」、目黒所縁で絵,詩,音楽,立体造形,インスタレーションと多彩
《目黒川夜景1-4》独特の筆致、灯りはあっても何処までも暗い。自身の戦争体験から「この世界は夜である」と、虚無,悲哀,虚ろ…その想いの表象
《詩画集 Chromatopoiema》色彩詩。外周に記す英文、色帯(直線,曲線,点線)でつながれる同じ文字、着想の秀逸さ
《KOSMOS-BLUE,WHITE》着色された正方形を重ねる立体的絵画(柔らかい彫刻?)

2024松濤美術館公募展@松濤美術館 on Mar. 12th,2024

初訪のこちらは既に41回目、入選の98点。
成清一生《記憶の中へ》コンビナートを背にする廃屋、佇み見つめるヒト。ボールペン!での確かな構成と描写、モノクロームでの侘しさと儚さが少しだけヒリヒリするよう
殿岡祐天《清き街》多彩な色で描かれた、遠くからは花のようにも…いや違う。流れる個体? 不思議なモチーフ
福里弘之《オムニバス》暖色から暗色へのグラデーションで岩山,ヒト,魚,虫,馬,鳥,そしてミサイル、シュールな
今井政男《虹のかけら》これは写真。花瓶と枯葉に虹色が、屈折し反射しそして映され
遠藤和彦《ホルス》暗虹色に彩られた回廊を飛翔する大鳥と白い民族衣装のヒト(天空神?)が幻想的に
境多美子《M子》数点の人物画のうちから、静かに佇むモディリアーニ風
寺尾風次《20231118_渋谷》都会(マチ)を無機感なキュビスムに切り取る
蓮尾佳由《夜の時間》抽象。印象的な群青、他の配色との静的共鳴
黒須正司《月の隙間》白,黒,グレー大小様々な円環やカーブで表面に施されたデザインのよう、静かな輝きが美しい
佐藤由紀子《茜空に翔ぶ》白く波頭、流れゆく雲。青黒の夜へと向かう刹那茜に染まる
米原ゆう子《群がる》蜜が滴る歯車や金属物に群れでアゲハが…1羽のみ極彩色で。妖しいそして少し不気味
髙橋有生我《花瓶(過敏)》サイケデリック! 総点描の花瓶に生けるは眼球や唇を模した華々
併催は「土地の記憶と記録 風景を巡る旅」77点、写真主体も幾つかの気になる絵画が。
南薫造《マドラス/KANDY/中国風景/運河沿いの家》日常風景を水彩で特長を活かし雰囲気が息づく《レースカーテンのある部屋》窓辺を屋内目線で、柔らかい陽光とやさしい風が温かみを《瀬戸の春》斜面の上から見下ろす木々,家屋,浮かぶ小島と遠景、長閑な瀬戸内が伝わる
飯田満佐子《山趣》南画の水墨山水で。険しく連なる山々、その頂付近に見える建屋に何故かホッと、僅かな木々の青味も同じく
工藤甲人《冬の蝶》雪に覆われた木々と朧月、よく目を凝らすと1羽の蝶、透かしのように翅を広げたもう1羽。森閑

日本画アワード 2024 ―未来をになう日本画新世代―@山種美術館 on Feb. 27th,2024

続けてこちらの45点。予兆に違わず足留めの連続、密かに心躍らせ三度の周回。
杉山愉岳《彼は誰時》朝陽、下部一割ほどの海と白む空のバランス絶妙
武井地子《in white ♯314》叙情を排した”モノ”としての雪。強く鋭い筆致、冷たい痛さまで感じる
島本純江《澄心》花と蝶、大判で淡い色調にも良く映える
大村美玲《参星》宵の祭り、山車の日本髪三名。夜と提灯、枝垂れ花との取り合わせは実にしっとり
早川実希《頁》同一女性ポーズ3種の巧みなコラージュが場や心のブレを。日本画でもこんな革新的手法が
北川安希子《囁き-つなぎゆく命》亜熱帯林を見上げる。陽光に向かうイキイキさ、エネルギーが静かに満ちている
重政周平《素心蠟梅》雪に飾られた枝々からは寒さではなく美しさとしっかりとした存在感
八谷真弓《みのりの頃》モノクロームで描く稲穂、刈り取り最中の黄金色のイメージが浮かぶ
陳映千《息》暗色の山森、左方に浮かぶ三重塔右方には白く流るる滝。静けさと微かな動が同居
朴泰賢《仰見》文字通り華やぐ木々を根元から仰ぎ見る、空が見えないほどの花葉尽くし
福島恒久《厳寒三友図》苔生す庭に松竹梅、深閑な和が息づく
房鑑成《ハナビ》花,猫,蝶の落ち着いた取り合わせ、花から繋がる華(火)模様
山田雅哉《Angel-2023》翔び散る青,藍,群青… 抽象風が惹く
柳沼至《邂逅》暗赤の背景に赤い華、すっくと蒼黒の烏が。谷津有紀《浮世の界》魂にまで入り込みそうな女人が。いづれも着目すると妖しい誘惑に囚われる
林銘君《出口》仕切り(カーテン?)の合間から仕切り越しに飛翔する鳥の軌跡。先の《相対論》@SOMPOとの連作か
併催には同館所蔵から若かりし頃の巨匠の作が。川端龍子《華局》左に蝶と戯れる獅子、右には大ぶりの牡丹。スケールを感じさせる二曲一双。川合玉堂《鵜飼》掛軸、自然と日々の営みがイキイキと。他にも村上華岳《裸婦図》速水御舟《葉隠魔手/粧蛾舞戯》奥村土牛《雨趣》と流石の逸品

FACE展2024@SOMPO美術館 on Feb. 27th,2024

これ迄この季節の公募展への認識は皆無、初めて未来への萌芽にも眼を向ける。
先ずはこちら、第12回目の入選作78点。未知への期待。
かわかみはるか《26番地を曲がる頃》後方から描く乗合バスの車内、その視点と先細りの構図が面白い。画材には、何と片栗粉や珈琲も!
巽明理《CYCLE》草上に横たわる鳥。その眼は鋭さを湛えつつも宿す光はどこか弱い、近づく死??? 下草と体を彩る緑/黒のぬめりは妖しく生死の渇望を醸す…
安藤恵《山の音》こんな極彩色で描くとは。テーマ名からの静謐さという先入観をあっさり覆し、赤道付近にあり得る生きものの宝庫が眼前にイメージされる
大野光一《ぐ》青/緑/パステル色での肖像(顔)、派手で少し荒い筆致に見入る
春日佳歩《絡みつき、纏わりつく》下着姿の素手でパスタを食べ散らす、トマトソースor何かの血? 鮮明でリアルな描写だけに気にはなりつつも腰は引け気味
キノシタユースケ《青くして、静かな-2》横長の和紙に表現された恰も突風の瞬間。インクジェットはその為の手法か、成程
多田耕二《時を超えて》正面に無人のデスク、窓からは東京駅舎とビル群。モノトーン、スクエアに切り取り、静かな落ち着きに浸る
寺本明志《Patio-チェスをする人》ラグ,カーテン,ヒト,チェス,カード,掃除機,窓外の亜熱帯植物 そして豚、緩やかな配置での混在。描き込まれた光景はちょっと夢心地
藤森哲《未来菩薩立像》デジタル調の作品で唯一気になる。出立ちは確かに菩薩立像だが首上部は不在、全身淡く濡れたような表現で纏う雰囲気に未来感が
船木晋也《2022》木彫、黒地と木肌色。山の畝り,気の流れ,森の息吹 いづれのようでもありいづれでもない、それが静かに迫る
前田大介《口吻を洩らす》茶系一色のみ、なんか解らないが気になる。口吻を洩らすとは”言葉の端々に内心の思いが現れる”、英タイトルはHint。自身の鑑賞スタンスはFeel itだがやっぱり気になる
林銘君《相対論》仕切り(カーテン?)の合間には鳥の飛翔。仕切り越しでは鳥が落下、その真下には暗い穴が… 仕切りの一部にある皺は時空の歪みなのか?
津村光璃《溶けて》グランプリ受賞。先ず「何だこれは」の印象も「複数色の滲みの拡がりは時間や空間の…」などとまでまだ今は実感に至らず。
テーマや手法は様々で動と静の刺激が続く。中でも現代美術系は当に彩々、内なる声を探しても言葉に出来ない(時間がかかる)、だから興味は掻き立てられる

もじ イメージ Graphic 展@21_21 DESIGN SIGHT on Feb. 2nd,2024

ギャラリーに溢れる文字 もじ モジ moji。国内中心約50のデザイナー,アーティストによる作品で、グラフィックデザインを日本語文字とデザインの歴史から紐解く試み。
《I 日本語の文字とデザインをめぐる断章》
室に臨むと3壁面を覆う古今(4~20世紀)の文字に迎えられ、圧倒と感激で思わずWOW! これら当時のクリエイション51作は永原康史「日本語のデザイン」から。文字からだけでもどの時代かが凡そ分かってしまう、それはおそらく漢字&仮名文化だからこそ。
漸次心が沈静してきたところで展示に目を向けると往時を語れるポスターの秀作達が。田中一光〈第21回産経観世能〉亀倉雄策〈Nikon〉横尾忠則〈状況劇場 ジョン・シルバー〉浅葉克己〈おいしい生活〉細谷巌〈男は黙ってサッポロビール〉等々、その多くは既知だが”もじ”に着目してみるとフォント、文字の組合せや配置に込められた独自の才が観えてくる。表意の漢字、表音の仮名、文字自体に個性があることで伝える,伝わる。また、アジア圏文字地図で、”インド・ヨーロッパ語/アルタイ語/シナ・チベット語が主な文字言語圏”と知り”日本はアジアの辺境”を再認識。
《II 辺境のグラフィックデザイン》
デジタルによるグラフィックを、イラスト/メディア/出版/キャラクター/ファッション/カルチャー(シネマ,音楽)/地域,日常生活/パブリック/ネオン,看板のカテゴリー別に展示。戸田ツトム/羽良多平吉/立花ハジメ 等デジタルグラフィックの旗手を知る。往時と比べその表現分野の拡がりは想像以上、書くから打つ(タイポグラフィ)への移り変わりもその要因の一つか。
辺境日本の十八番”外来を受け入れ工夫改良(編集)し使いこなす”はこの分野でも遺憾なく発揮、漢字/かな/カナ/アルファベットの組合せはある意味複雑怪奇だが”豊かさ”も感じられる。
数多のデジタル作品を観終えて「目を引けばイイってものでもない。文字だけ目立っても… 作品としてはどうなのか」とも想う。「デジタルで如何様にも出来るから、文字それ自体の際立ち(美しさ)が失われていないか」が気になる。
書くことへのこだわりは文字へも通づ。

蜷川実花展 Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠@TOKYO NODE on Jan. 22th,2024

“リアルでド派手”な映像インスタレーション体験。第一印象を言葉にするとこうなるが、圧倒的な光と色と音の壮大な空間を感じ尽くす永遠の一瞬。
《残照 Afterglow of Lives》始まりは花々で表す死と再生、静かに其処に在る唯一の展示。《Breathing of Lives》十の立方モニターに都市が映し出される、光の火花で幻想風に。生きている。《Flashing before our eyes》これは金魚から始まる大仕掛けの万華鏡、どう捉えるか?《Intersecting Future 蝶の舞う景色》当に百花繚乱そして蝶、こんなにも色があるのか!《胡蝶のめぐる季節 Seasons:Flight with Butterfly》幾つかの薄いスクリーンを観る、時に鑑賞者がシルエットで浮かび上がり,消え,現れ… 《Embracing Lights》投映前のカーテンへの縞/渦の流れに目を奪われる。
最後の室へつながる回廊は強く眩しい世界の中ただ一つの暗闇。作家が美しく艶やかな作品に至る道程での心象風景なのか… 鑑賞者自身にはどうなのか…
絢爛豪華の展示空間を後にし、昭和アヴァンギャルドに続けての鑑賞のため否が応でも比較し関連づけてしまう。癒しやリラックス,瞬時の享楽を求め彷徨い、与えられたものを恰も自身が選び取ったと思い込み意図も何も考えずただその表層のみを消費するだけなら虚しい、やはりそれをFeelとは思えない。葛藤が無ければ考察も不要。
スパイシー過ぎるか…
“求め彷徨い消費する”その姿々がイマの真実なんだと気づかされる。

ジャパン・アヴァンギャルドポスター見本市 ~昭和の激動が生んだ熱狂アングラカルチャー~@Bunkamura Gallery 8 on Jan. 22th,2024

宇野亜喜良,横尾忠則,田中一光,榎本了壱,平野甲賀,戸田ツトム,森崎偏陸,篠原勝之,赤瀬川原平,粟津潔,金子國義,辰巳四郎 他、その名を知るも知らぬもアートの手練れ達十数名、一世を風靡した作品数十点を眼前に。
どれも奇抜で魅力的な個性、その中から特にの4点。田中一光《病める舞姫》漆黒のバック。センター縦にタイトルをピンクで、左右には文字と被追悼者(土方巽)。錬磨のフォントは言うに及ばず、その洗練されたインパクトに引き留められ。森崎偏陸《天井桟敷 海外公演版》装飾的で総天然色が多い他作品とは一味違う静的なカット割と配色。宇野亜喜良《新宿版 千一夜物語》ユーモラスな構図で淡いカラフルがマッチ。《モノセックスコンテストショウ》絵柄は抑えめ、だからイエローが実に効く。
展示中半数のテーマが「状況劇場」と「天井桟敷」。自身は同時代を生きるも当時は埒外で未体験だが、ポスターからでもその猥雑さと途方もなさそうなエネルギーを感じ取れてしまう。挑発的で野生味たっぷり、自由と差別,偏見が表裏一体の”見せ物”をどう伝えるか、演劇自体もそのポスターも全てが実験だった?
この2テーマのみならず、いまとは違う”インテリ”が(時には斜に構えて)社会と対峙し、起爆剤として格闘していた… その証左。新たな興味を掻き立てられる。
それと、銀座セゾン/西武/JUN,ROPEのロゴが其処彼処に。先端ジャパンカルチャーの”パトロン”的存在がいたからこその出逢い。

TAKEUCHI COLLECTION「心のレンズ」展@WHAT MUSEUM on Jan. 16th,2024

友人との語らい後に。
ヒトそれぞれが持つ”心のレンズ”。「作家自身の”心のレンズ”って?」鑑賞者は自身のレンズを通して観てみる、そんな機会。
神楽岡久美《Extended Finger No,02》革で繋げた義手の先はステンレスの鉤爪、何故か優しさを感じる
トレイシー・エミン《Forest of Love 1》極小品、黒紺と淡桃の描画、気になる
イヴ・クライン《Untitled Blue Monochrome》/ゲルハルト・リヒター《14.2.88》群青と赤が並ぶこの配置が秀逸
14点での《書斎空間》落ち着いて静か、無機質でない。個々の作品には存在感が。
オスカー・ニーマイヤー《リオ ロッキングチェア》曲線の美しさ
掛井五郎《パリ郊外/プロフィール》加藤泉《Untitled/Untitled/PYRO》小西紀行《Untitled》全て人形(ひとがた)がモチーフ、呪術?の世界
岡崎乾二郎《※4種の長文省略》カラフルな色を塗りたくるも微妙に違うタテ型4点、テーマ文との関連は⁇
ジャデ・ファドジュティミ《Undeparted thoughts》これは繁茂する草花への接近か、いや張り巡らされた脳内神経なのか
山口歴《SHADEZ OF BLUE NO.2》青,青緑,特にいい紫
コレクター竹内 真の現代アートと家具のコレクションを、自身のレンズではこんな風に感じた。
家具とモダンアートの取り合せ良し、趣きあり。

「10 YEARS OF DESIGN AND MAKING」@ISSEY MIYAKE GINZA / 445 on Jan. 16th,2024

友人と逢う前に寄り道。
「製品プリーツ」というイッセイ ミヤケの根幹にある技法を背景に生まれたHOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE 10周年での特別展示。
ジャケット/パンツの実物と衣服/服作り道具(針,メジャー etc.)の写真でそのブランド観を表現。ジャケット/パンツは2通りでの展示、カラフル10色は明るさや楽しさ,躍動感が、グレーグラデーション5種は一転シックさを醸しだす。写真からは、服作りはクラフトワークであることを憶い出させる。
自身は”美しくて自由で軽やか、選んだヒトの個性が伝わる”なと感じた。
三宅一生、その名はこれからも続いていく。

100年前の未来:移動するモダニズム 1920-1930 @神奈川県立近代美術館 葉山 on Jan. 9th,2024

‘24は初訪の此処から。欧州諸国の息吹を直に感じ取り込んだこの時期の200点近くを6つに区分けし展示、新たな才に出逢える期待。
ヴィクトル・パリモフ《水浴場/踊る女》長閑な風景と踊体の躍動が対照的
普門曉《鹿・光》色合い,描跡いい! 光の中を流れるように跳ぶ姿をやや幻想的に
神原泰《音楽的創造シンフォニィ第3番(生命の流動)》濃いめ描写が気になるがどうもムツカシイ
木下秀一郎《日本の踊り 芸者》お髪と着物それと判る流麗な描写
河本緑石《自画像》赤が特徴的で少し異色。何かを見据える決然さに捉えられる
久米民十郎は多才(彩) 《Off England》はて?これは波間の島?はたまた… 《三番叟/駱駝と従者 王妃たち》六曲一隻と二曲一双の競展、和伝統のみならず埃(独特な表情が興味深い) をも屏風で《蝶と女/鹿》漆黒の裾に金鹿の着物と華やぐ無国籍風の帯、エキゾチックな取合わせ《支那の踊り》屈曲する身体、爪の先までの反り。思わず目が留まる
国吉康雄《オガンキットの入江》淡く暈された中に人々の生活が
青山義雄《二人の男》ピンクと緑の上下塗り分けを背景に、ぎこちない男2人の可笑しみ不思議さ
幸徳幸衛《風景》何ということない油絵の小品、だが近寄ってしまう
村山知義《父親の像》暗いトーンで塗り込め描かれた顔
和達知男《ハーレンゼー橋》さらっと描かれた感、朱の塔がイイ 《謎》コラージュ、実にモダン
ハンス・ブラッス《港》キュビスム。赤と青/緑のいい色合いで大きなテーマをコンパクトな構成で観せる
徳永柳洲《本郷元町より見たるお茶の水附近》大版、震災直後か。暗い青味だが火炎,煙を背にするニコライ堂が強く迫る
神原泰《マリアとキリスト》何か神々しさはあるがそれと分からない何か…
矢部友衛《裸婦》きちっとしっかりキュビスム、サイズと構図が丁度いい
福沢一郎《よき料理人》テーマ/構図とも面白い、さすが
木下秀《絵葉書 鼓をうつ舞妓》妖艶にみえる笑顔、淡い光の濃淡で表現
木版23点:版画だからこその迫る力、表現の力が
じっくり観ての特筆、勿論他に足を留めたものも多い。ただ、"記憶に留めたい"とまで思わせるものになると…
目前に海が広がるこの館。少し遠景に富士、水面に陽光が煌めき波の音も聞こえるパノラマ。館内鑑賞後にも更に五感が愉しむもう一つのアート。

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