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未知の鼓動 -日々是アート- 2024

それは視えてくるのです。
己が求めに導かれて顔を上げると、未知の鼓動は聞こえます。
あの時この時、あの場所この場所、鼓動の響きが聞こえてくる処へ、どうしても逢いに行きたくなったのです。

特別展示「Energy エネルギー 〜自然界の神々〜」@絹谷幸二天空美術館 on Apr. 22nd,2024

これ迄帰阪に合わせて幾度か企てた訪館を漸く実現、パートナーと神仏自然の絹谷ワールドへと。
エントランスのゾーンでは《平治の乱》《夢無辺》の2題で3D映像。アニメーションでなく子供だましでもない、独特な浮遊感と没入感や気持ちの解放、そしてテクノロジー関心も掻き立てる。ヤマトの心も揺さぶられ、復古ではなく。
テーマ作品の展示は「万物創世」「祈りの形象」「自然への畏怖」3ゾーン、独自の解釈と満ち満ちるエネルギーが迫る。《喝破》降三世明王が”誤りを正し真実を解き明かす”《オマージュ平治物語絵巻》左の”喝”には憤怒の明王が動として、右の”空”には如来が静で、背景に紅蓮の炎。《黄金背景富嶽旭日・風神・雷神》両神からイマへの強い警鐘。展示の全てで、時空を飛び越え掛け合わせて、時にユーモラス時に力強く、課題を突きつけ幸を祈る。いづれも紅系が多用され漲熱表出を強く体感するが、描かれるのが神仏のためか何故か穏やかに観ることができる。
他展示では《キーコボンディ氏の肖像》キュビズム的な顔含め立体絵画で伊への憧憬を《子どもの城フレスコ画アラベスク20連作》遠近技法に古今東西異国情緒が、シュール風も《イタリア天空の調べ》歴史,文明,芸術へのオマージュを盛り込んで3DMAP的に

『シュルレアリスム宣言』100年 シュルレアリスムと日本@板橋区立美術館 on Apr. 12th,2024

100年前のアンドレ・ブルトン、理性に制御されない無意識界の探究と不可思議なものへの賛美。
シュルレアリスムの不穏さは時として鑑賞の足留めともなるが、これだけ揃うとその多様さでの興味関心が先に立ち、刻を気にしつつもまた周回を。
東郷青児《超現実派の散歩》浮遊には不思議さが必ずセットで
古賀春江《鳥籠》シュルレアリスム+モダニズム。鳥籠の女性など一見”寄せ集め”がそうはならずに…
飯田操朗《婦人の愛》黒と赤の対比がベースの配色、忘れ難い。そこに人体フォルムや果実のようなものが描き出され、ひと目でお気に入り
山本正《青年》赤褐色の人体(筋肉)、薄色の椅子?、壁の緑と床の青、取り合わせが印象的に映える
米倉壽仁《ヨーロッパの危機(世界の危機)》卵形の欧州は欠けた箇所から様々なものが突き出てそれに鳥が、破綻が兆す
小牧源太郎《民俗系譜学》少しグロテスクにも感じる異形のもの、胚で浮遊する胎児達、背景にぼやけて見えるは汽船?なのか
今井大彭《背徳》背筋がゾッとするよう。心理を描写、いや脳内を覗かれている
靉光《眼のある風景》再見だが観ずにはおれない、一種対決にも似て
浅原清隆《多感な地上》リボンが鳩に、白いハイヒールが仔犬に、変わりゆく
山下菊二《新ニッポン物語》占領下の痛烈な風刺をポップアート調で
小山田二郎《手》掌に目、暗いトーン荒い筆致で強い
そして福沢一郎《他人の恋/人》いつ観てもこの方のはやっぱりスゴい
意識は内なる声に…
大塚耕二《トリリート》水辺のストーン、浮かぶ流木 。シンプルさが気になる
森堯之《風景》静かな山裾の景色、近づくと暗く寂しいそして放置されたモノ
杉全直《跛行》海辺のさびれた小屋、何故か踊っているかのような小さなドレス姿が
石井新三郎《作品》手前の机から覗ける奥にも机、3人の釣り人、背景は砂の大地
石田順治《作品2》青空の雲、冠状の地面、不思議な雰囲気を醸す
佐田勝《廃墟》グレートーンで輪郭も不確かな建物、濃青の空と対照的な虚無
片谷瞹子《狭き尾根》缶に挿す鋏に結ばれた淡赤のリボン、遠くの月、静かなシュール
堀田操《断章》青緑で描く廃墟,骨、欠けたグラス,古テーブルそしてアドバルーン
これ迄に目にした作品も幾つか、国内でもこんなに多才なシュルレアリスムが創造されていたことを知れた感慨。そして、表現を奪われた往時を偲び今の良さをもっと噛み締める

広がるコラージュ@目黒区美術館 on Mar. 12th,2024

“表現手法として多様な素材を組み合わせて”という認識だけで、これ迄はたまたまお目に掛かった程度のコラージュ、企画テーマとして鑑賞するとそれは興味深く。
新聞,雑誌やダンボールの紙類のみならず果ては差金,レコード!まで。創造の具現化は尽きず。
淀井彩子《コンポジション(1)(5)》基底材に素材を貼り塗り凹凸を作り刷るコラグラフ、版画だが立体風(浮き感)で面白い
草間彌生《帽子/南瓜》小品ということもあるがコラージュだからの柔らかさで其処に
福沢一郎《大砲のある静物》お気に入りの福沢一郎は対象も独特。油彩だが”意外な組み合わせ”として広く捉えられての展示、その解釈が素直に嬉しい
深沢幸雄《版画集 アルチュール・ランボー「酔いどれ船」》メゾチント版画。幻想近未来世界とでも呼ぶべき、シュールでもある。モノクロだからこそ捉えられて離さない
今井俊満《ゴーゴーガール/黒猫と少女》絵具投擲,手形べったり,素材直貼,見つめる黒猫 自由なアンフォルメルには無邪気な奔放が満ちる
黒崎彰《サンフランシスコのファンキーアート/リンダ/ニューヨークの落書き》らしい素材でポップアートっぽく、鮮赤使いグッド!
ロバート・ラウシェンバーグ《コミュニケーション/人権》セピア調で素材が活きる。ネオダダの代表格だそう
前田常作《人間波動粒子シリーズ 9×9》格子状に淡い点描の画々。その場だけは身体,精神を感じる境地、密教,宇宙の想念に馳せる
不動茂弥《落ちる文字》文字でのコラージュ、数箇所に分けられ各々独立したデザインも調和がとれ《庚神》こちらも文字で、まるで都大路を俯瞰しているかのよう
野村久之《カルマ》顔料,箔,鉄粉で赤茶黒の凹凸、大胆な構図
併催は「IIDA 101 飯田善國」、目黒所縁で絵,詩,音楽,立体造形,インスタレーションと多彩
《目黒川夜景1-4》独特の筆致、灯りはあっても何処までも暗い。自身の戦争体験から「この世界は夜である」と、虚無,悲哀,虚ろ…その想いの表象
《詩画集 Chromatopoiema》色彩詩。外周に記す英文、色帯(直線,曲線,点線)でつながれる同じ文字、着想の秀逸さ
《KOSMOS-BLUE,WHITE》着色された正方形を重ねる立体的絵画(柔らかい彫刻?)

2024松濤美術館公募展@松濤美術館 on Mar. 12th,2024

初訪のこちらは既に41回目、入選の98点。
成清一生《記憶の中へ》コンビナートを背にする廃屋、佇み見つめるヒト。ボールペン!での確かな構成と描写、モノクロームでの侘しさと儚さが少しだけヒリヒリするよう
殿岡祐天《清き街》多彩な色で描かれた、遠くからは花のようにも…いや違う。流れる個体? 不思議なモチーフ
福里弘之《オムニバス》暖色から暗色へのグラデーションで岩山,ヒト,魚,虫,馬,鳥,そしてミサイル、シュールな
今井政男《虹のかけら》これは写真。花瓶と枯葉に虹色が、屈折し反射しそして映され
遠藤和彦《ホルス》暗虹色に彩られた回廊を飛翔する大鳥と白い民族衣装のヒト(天空神?)が幻想的に
境多美子《M子》数点の人物画のうちから、静かに佇むモディリアーニ風
寺尾風次《20231118_渋谷》都会(マチ)を無機感なキュビスムに切り取る
蓮尾佳由《夜の時間》抽象。印象的な群青、他の配色との静的共鳴
黒須正司《月の隙間》白,黒,グレー大小様々な円環やカーブで表面に施されたデザインのよう、静かな輝きが美しい
佐藤由紀子《茜空に翔ぶ》白く波頭、流れゆく雲。青黒の夜へと向かう刹那茜に染まる
米原ゆう子《群がる》蜜が滴る歯車や金属物に群れでアゲハが…1羽のみ極彩色で。妖しいそして少し不気味
髙橋有生我《花瓶(過敏)》サイケデリック! 総点描の花瓶に生けるは眼球や唇を模した華々
併催は「土地の記憶と記録 風景を巡る旅」77点、写真主体も幾つかの気になる絵画が。
南薫造《マドラス/KANDY/中国風景/運河沿いの家》日常風景を水彩で特長を活かし雰囲気が息づく《レースカーテンのある部屋》窓辺を屋内目線で、柔らかい陽光とやさしい風が温かみを《瀬戸の春》斜面の上から見下ろす木々,家屋,浮かぶ小島と遠景、長閑な瀬戸内が伝わる
飯田満佐子《山趣》南画の水墨山水で。険しく連なる山々、その頂付近に見える建屋に何故かホッと、僅かな木々の青味も同じく
工藤甲人《冬の蝶》雪に覆われた木々と朧月、よく目を凝らすと1羽の蝶、透かしのように翅を広げたもう1羽。森閑

日本画アワード 2024 ―未来をになう日本画新世代―@山種美術館 on Feb. 27th,2024

続けてこちらの45点。予兆に違わず足留めの連続、密かに心躍らせ三度の周回。
杉山愉岳《彼は誰時》朝陽、下部一割ほどの海と白む空のバランス絶妙
武井地子《in white ♯314》叙情を排した”モノ”としての雪。強く鋭い筆致、冷たい痛さまで感じる
島本純江《澄心》花と蝶、大判で淡い色調にも良く映える
大村美玲《参星》宵の祭り、山車の日本髪三名。夜と提灯、枝垂れ花との取り合わせは実にしっとり
早川実希《頁》同一女性ポーズ3種の巧みなコラージュが場や心のブレを。日本画でもこんな革新的手法が
北川安希子《囁き-つなぎゆく命》亜熱帯林を見上げる。陽光に向かうイキイキさ、エネルギーが静かに満ちている
重政周平《素心蠟梅》雪に飾られた枝々からは寒さではなく美しさとしっかりとした存在感
八谷真弓《みのりの頃》モノクロームで描く稲穂、刈り取り最中の黄金色のイメージが浮かぶ
陳映千《息》暗色の山森、左方に浮かぶ三重塔右方には白く流るる滝。静けさと微かな動が同居
朴泰賢《仰見》文字通り華やぐ木々を根元から仰ぎ見る、空が見えないほどの花葉尽くし
福島恒久《厳寒三友図》苔生す庭に松竹梅、深閑な和が息づく
房鑑成《ハナビ》花,猫,蝶の落ち着いた取り合わせ、花から繋がる華(火)模様
山田雅哉《Angel-2023》翔び散る青,藍,群青… 抽象風が惹く
柳沼至《邂逅》暗赤の背景に赤い華、すっくと蒼黒の烏が。谷津有紀《浮世の界》魂にまで入り込みそうな女人が。いづれも着目すると妖しい誘惑に囚われる
林銘君《出口》仕切り(カーテン?)の合間から仕切り越しに飛翔する鳥の軌跡。先の《相対論》@SOMPOとの連作か
併催には同館所蔵から若かりし頃の巨匠の作が。川端龍子《華局》左に蝶と戯れる獅子、右には大ぶりの牡丹。スケールを感じさせる二曲一双。川合玉堂《鵜飼》掛軸、自然と日々の営みがイキイキと。他にも村上華岳《裸婦図》速水御舟《葉隠魔手/粧蛾舞戯》奥村土牛《雨趣》と流石の逸品

FACE展2024@SOMPO美術館 on Feb. 27th,2024

これ迄この季節の公募展への認識は皆無、初めて未来への萌芽にも眼を向ける。
先ずはこちら、第12回目の入選作78点。未知への期待。
かわかみはるか《26番地を曲がる頃》後方から描く乗合バスの車内、その視点と先細りの構図が面白い。画材には、何と片栗粉や珈琲も!
巽明理《CYCLE》草上に横たわる鳥。その眼は鋭さを湛えつつも宿す光はどこか弱い、近づく死??? 下草と体を彩る緑/黒のぬめりは妖しく生死の渇望を醸す…
安藤恵《山の音》こんな極彩色で描くとは。テーマ名からの静謐さという先入観をあっさり覆し、赤道付近にあり得る生きものの宝庫が眼前にイメージされる
大野光一《ぐ》青/緑/パステル色での肖像(顔)、派手で少し荒い筆致に見入る
春日佳歩《絡みつき、纏わりつく》下着姿の素手でパスタを食べ散らす、トマトソースor何かの血? 鮮明でリアルな描写だけに気にはなりつつも腰は引け気味
キノシタユースケ《青くして、静かな-2》横長の和紙に表現された恰も突風の瞬間。インクジェットはその為の手法か、成程
多田耕二《時を超えて》正面に無人のデスク、窓からは東京駅舎とビル群。モノトーン、スクエアに切り取り、静かな落ち着きに浸る
寺本明志《Patio-チェスをする人》ラグ,カーテン,ヒト,チェス,カード,掃除機,窓外の亜熱帯植物 そして豚、緩やかな配置での混在。描き込まれた光景はちょっと夢心地
藤森哲《未来菩薩立像》デジタル調の作品で唯一気になる。出立ちは確かに菩薩立像だが首上部は不在、全身淡く濡れたような表現で纏う雰囲気に未来感が
船木晋也《2022》木彫、黒地と木肌色。山の畝り,気の流れ,森の息吹 いづれのようでもありいづれでもない、それが静かに迫る
前田大介《口吻を洩らす》茶系一色のみ、なんか解らないが気になる。口吻を洩らすとは”言葉の端々に内心の思いが現れる”、英タイトルはHint。自身の鑑賞スタンスはFeel itだがやっぱり気になる
林銘君《相対論》仕切り(カーテン?)の合間には鳥の飛翔。仕切り越しでは鳥が落下、その真下には暗い穴が… 仕切りの一部にある皺は時空の歪みなのか?
津村光璃《溶けて》グランプリ受賞。先ず「何だこれは」の印象も「複数色の滲みの拡がりは時間や空間の…」などとまでまだ今は実感に至らず。
テーマや手法は様々で動と静の刺激が続く。中でも現代美術系は当に彩々、内なる声を探しても言葉に出来ない(時間がかかる)、だから興味は掻き立てられる

もじ イメージ Graphic 展@21_21 DESIGN SIGHT on Feb. 2nd,2024

ギャラリーに溢れる文字 もじ モジ moji。国内中心約50のデザイナー,アーティストによる作品で、グラフィックデザインを日本語文字とデザインの歴史から紐解く試み。
《I 日本語の文字とデザインをめぐる断章》
室に臨むと3壁面を覆う古今(4~20世紀)の文字に迎えられ、圧倒と感激で思わずWOW! これら当時のクリエイション51作は永原康史「日本語のデザイン」から。文字からだけでもどの時代かが凡そ分かってしまう、それはおそらく漢字&仮名文化だからこそ。
漸次心が沈静してきたところで展示に目を向けると往時を語れるポスターの秀作達が。田中一光〈第21回産経観世能〉亀倉雄策〈Nikon〉横尾忠則〈状況劇場 ジョン・シルバー〉浅葉克己〈おいしい生活〉細谷巌〈男は黙ってサッポロビール〉等々、その多くは既知だが”もじ”に着目してみるとフォント、文字の組合せや配置に込められた独自の才が観えてくる。表意の漢字、表音の仮名、文字自体に個性があることで伝える,伝わる。また、アジア圏文字地図で、”インド・ヨーロッパ語/アルタイ語/シナ・チベット語が主な文字言語圏”と知り”日本はアジアの辺境”を再認識。
《II 辺境のグラフィックデザイン》
デジタルによるグラフィックを、イラスト/メディア/出版/キャラクター/ファッション/カルチャー(シネマ,音楽)/地域,日常生活/パブリック/ネオン,看板のカテゴリー別に展示。戸田ツトム/羽良多平吉/立花ハジメ 等デジタルグラフィックの旗手を知る。往時と比べその表現分野の拡がりは想像以上、書くから打つ(タイポグラフィ)への移り変わりもその要因の一つか。
辺境日本の十八番”外来を受け入れ工夫改良(編集)し使いこなす”はこの分野でも遺憾なく発揮、漢字/かな/カナ/アルファベットの組合せはある意味複雑怪奇だが”豊かさ”も感じられる。
数多のデジタル作品を観終えて「目を引けばイイってものでもない。文字だけ目立っても… 作品としてはどうなのか」とも想う。「デジタルで如何様にも出来るから、文字それ自体の際立ち(美しさ)が失われていないか」が気になる。
書くことへのこだわりは文字へも通づ。

蜷川実花展 Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠@TOKYO NODE on Jan. 22th,2024

“リアルでド派手”な映像インスタレーション体験。第一印象を言葉にするとこうなるが、圧倒的な光と色と音の壮大な空間を感じ尽くす永遠の一瞬。
《残照 Afterglow of Lives》始まりは花々で表す死と再生、静かに其処に在る唯一の展示。《Breathing of Lives》十の立方モニターに都市が映し出される、光の火花で幻想風に。生きている。《Flashing before our eyes》これは金魚から始まる大仕掛けの万華鏡、どう捉えるか?《Intersecting Future 蝶の舞う景色》当に百花繚乱そして蝶、こんなにも色があるのか!《胡蝶のめぐる季節 Seasons:Flight with Butterfly》幾つかの薄いスクリーンを観る、時に鑑賞者がシルエットで浮かび上がり,消え,現れ… 《Embracing Lights》投映前のカーテンへの縞/渦の流れに目を奪われる。
最後の室へつながる回廊は強く眩しい世界の中ただ一つの暗闇。作家が美しく艶やかな作品に至る道程での心象風景なのか… 鑑賞者自身にはどうなのか…
絢爛豪華の展示空間を後にし、昭和アヴァンギャルドに続けての鑑賞のため否が応でも比較し関連づけてしまう。癒しやリラックス,瞬時の享楽を求め彷徨い、与えられたものを恰も自身が選び取ったと思い込み意図も何も考えずただその表層のみを消費するだけなら虚しい、やはりそれをFeelとは思えない。葛藤が無ければ考察も不要。
スパイシー過ぎるか…
“求め彷徨い消費する”その姿々がイマの真実なんだと気づかされる。

ジャパン・アヴァンギャルドポスター見本市 ~昭和の激動が生んだ熱狂アングラカルチャー~@Bunkamura Gallery 8 on Jan. 22th,2024

宇野亜喜良,横尾忠則,田中一光,榎本了壱,平野甲賀,戸田ツトム,森崎偏陸,篠原勝之,赤瀬川原平,粟津潔,金子國義,辰巳四郎 他、その名を知るも知らぬもアートの手練れ達十数名、一世を風靡した作品数十点を眼前に。
どれも奇抜で魅力的な個性、その中から特にの4点。田中一光《病める舞姫》漆黒のバック。センター縦にタイトルをピンクで、左右には文字と被追悼者(土方巽)。錬磨のフォントは言うに及ばず、その洗練されたインパクトに引き留められ。森崎偏陸《天井桟敷 海外公演版》装飾的で総天然色が多い他作品とは一味違う静的なカット割と配色。宇野亜喜良《新宿版 千一夜物語》ユーモラスな構図で淡いカラフルがマッチ。《モノセックスコンテストショウ》絵柄は抑えめ、だからイエローが実に効く。
展示中半数のテーマが「状況劇場」と「天井桟敷」。自身は同時代を生きるも当時は埒外で未体験だが、ポスターからでもその猥雑さと途方もなさそうなエネルギーを感じ取れてしまう。挑発的で野生味たっぷり、自由と差別,偏見が表裏一体の”見せ物”をどう伝えるか、演劇自体もそのポスターも全てが実験だった?
この2テーマのみならず、いまとは違う”インテリ”が(時には斜に構えて)社会と対峙し、起爆剤として格闘していた… その証左。新たな興味を掻き立てられる。
それと、銀座セゾン/西武/JUN,ROPEのロゴが其処彼処に。先端ジャパンカルチャーの”パトロン”的存在がいたからこその出逢い。

TAKEUCHI COLLECTION「心のレンズ」展@WHAT MUSEUM on Jan. 16th,2024

友人との語らい後に。
ヒトそれぞれが持つ”心のレンズ”。「作家自身の”心のレンズ”って?」鑑賞者は自身のレンズを通して観てみる、そんな機会。
神楽岡久美《Extended Finger No,02》革で繋げた義手の先はステンレスの鉤爪、何故か優しさを感じる
トレイシー・エミン《Forest of Love 1》極小品、黒紺と淡桃の描画、気になる
イヴ・クライン《Untitled Blue Monochrome》/ゲルハルト・リヒター《14.2.88》群青と赤が並ぶこの配置が秀逸
14点での《書斎空間》落ち着いて静か、無機質でない。個々の作品には存在感が。
オスカー・ニーマイヤー《リオ ロッキングチェア》曲線の美しさ
掛井五郎《パリ郊外/プロフィール》加藤泉《Untitled/Untitled/PYRO》小西紀行《Untitled》全て人形(ひとがた)がモチーフ、呪術?の世界
岡崎乾二郎《※4種の長文省略》カラフルな色を塗りたくるも微妙に違うタテ型4点、テーマ文との関連は⁇
ジャデ・ファドジュティミ《Undeparted thoughts》これは繁茂する草花への接近か、いや張り巡らされた脳内神経なのか
山口歴《SHADEZ OF BLUE NO.2》青,青緑,特にいい紫
コレクター竹内 真の現代アートと家具のコレクションを、自身のレンズではこんな風に感じた。
家具とモダンアートの取り合せ良し、趣きあり。

「10 YEARS OF DESIGN AND MAKING」@ISSEY MIYAKE GINZA / 445 on Jan. 16th,2024

友人と逢う前に寄り道。
「製品プリーツ」というイッセイ ミヤケの根幹にある技法を背景に生まれたHOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE 10周年での特別展示。
ジャケット/パンツの実物と衣服/服作り道具(針,メジャー etc.)の写真でそのブランド観を表現。ジャケット/パンツは2通りでの展示、カラフル10色は明るさや楽しさ,躍動感が、グレーグラデーション5種は一転シックさを醸しだす。写真からは、服作りはクラフトワークであることを憶い出させる。
自身は”美しくて自由で軽やか、選んだヒトの個性が伝わる”なと感じた。
三宅一生、その名はこれからも続いていく。

100年前の未来:移動するモダニズム 1920-1930 @神奈川県立近代美術館 葉山 on Jan. 9th,2024

‘24は初訪の此処から。欧州諸国の息吹を直に感じ取り込んだこの時期の200点近くを6つに区分けし展示、新たな才に出逢える期待。
ヴィクトル・パリモフ《水浴場/踊る女》長閑な風景と踊体の躍動が対照的
普門曉《鹿・光》色合い,描跡いい! 光の中を流れるように跳ぶ姿をやや幻想的に
神原泰《音楽的創造シンフォニィ第3番(生命の流動)》濃いめ描写が気になるがどうもムツカシイ
木下秀一郎《日本の踊り 芸者》お髪と着物それと判る流麗な描写
河本緑石《自画像》赤が特徴的で少し異色。何かを見据える決然さに捉えられる
久米民十郎は多才(彩) 《Off England》はて?これは波間の島?はたまた… 《三番叟/駱駝と従者 王妃たち》六曲一隻と二曲一双の競展、和伝統のみならず埃(独特な表情が興味深い) をも屏風で《蝶と女/鹿》漆黒の裾に金鹿の着物と華やぐ無国籍風の帯、エキゾチックな取合わせ《支那の踊り》屈曲する身体、爪の先までの反り。思わず目が留まる
国吉康雄《オガンキットの入江》淡く暈された中に人々の生活が
青山義雄《二人の男》ピンクと緑の上下塗り分けを背景に、ぎこちない男2人の可笑しみ不思議さ
幸徳幸衛《風景》何ということない油絵の小品、だが近寄ってしまう
村山知義《父親の像》暗いトーンで塗り込め描かれた顔
和達知男《ハーレンゼー橋》さらっと描かれた感、朱の塔がイイ 《謎》コラージュ、実にモダン
ハンス・ブラッス《港》キュビスム。赤と青/緑のいい色合いで大きなテーマをコンパクトな構成で観せる
徳永柳洲《本郷元町より見たるお茶の水附近》大版、震災直後か。暗い青味だが火炎,煙を背にするニコライ堂が強く迫る
神原泰《マリアとキリスト》何か神々しさはあるがそれと分からない何か…
矢部友衛《裸婦》きちっとしっかりキュビスム、サイズと構図が丁度いい
福沢一郎《よき料理人》テーマ/構図とも面白い、さすが
木下秀《絵葉書 鼓をうつ舞妓》妖艶にみえる笑顔、淡い光の濃淡で表現
木版23点:版画だからこその迫る力、表現の力が
じっくり観ての特筆、勿論他に足を留めたものも多い。ただ、"記憶に留めたい"とまで思わせるものになると…
目前に海が広がるこの館。少し遠景に富士、水面に陽光が煌めき波の音も聞こえるパノラマ。館内鑑賞後にも更に五感が愉しむもう一つのアート。

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