短編小説「ロボット人間」
目覚ましが鳴り、いつも通り6時半に目を覚ました。
まるでプログラミングされたロボットのようである。
布団から起き上がると、まずは歯磨きをし、洗顔をする。
そして、朝ごはん。
いつも決まってパンを食べる。
その後は、髪を結んでお化粧をし、仕事に行く支度をする。
いつもと同じ、55分発の電車に乗って、仕事へと向かう。
朝から夕方まで仕事に追われ、時間があっという間に過ぎる。
ルーティン化された予定調和な日々。
しかし、自分の性格上、決まった時間にきっちり行動しないと気が済まないため、苦ではなかった。
そんな、刺激のない日々を送っていたそんなある日。
予定調和な日々を乱すものが現れた。
犬である。
いつも通り、仕事からの帰り道、ヘトヘトになりながら歩いていると、ペットショップの窓ガラスに顔をベッタリ付けた犬と目が合った。
トイプードルが上目遣いでこちらを見ているのだ。
その瞬間、心臓を何かに射抜かれたような感覚に陥った。
一目惚れしたのである。
即日、ペットを購入し、ペット用品も全て揃えた。
名前はトイプーのプーを取って「プー」と名付けた。
その日から、プーとの生活が始まり散歩が日課になった。
犬と一緒に近所をダラダラと歩く時間は、以前の自分からしたら考えられない時間である。
プーといれば、時間を忘れることができた。
そんな幸せな日々を送っていたある日。
違和感、異変に気づく。
プーを抱き上げた時、身体に触れると固い感触があった。
中に機械が埋められているようなそんな固さ。
もしや、動物に見えるこのプーはロボットなのではないか?
SFモノが大好きな僕はそんな疑念を抱いた。
ペットショップの看板をよく見てなかったが、ロボット犬専門店だったのではないか?
今考えると、プーは決まった行動を取ることが多かった。
飼い主に似て、朝は同じ時間に起きてくるし、ワンパターンの行動を取ることが多かった。
それらを踏まえ、ロボット犬なのだと確信に変わり始めていた。
それにしてもよくできたロボットだ。
表情は豊かだし、生命の温かさも感じる。
動物であれロボットであれ可愛いことには代わりない。
その後、ロボットであることは何も気にならず、幸せな日々を過ごしていた。
そんなある日、自分の体調が急に悪くなった。
思うように動けない。
思うように喋れない。
何か、病気にでもかかったのだろうか。
電池切れかのように、急に身体が動かなくなり、その場に倒れこんだ。
そして、力尽きた。
すると、「電池切れ。充電してください。」という機械音が部屋に鳴り響いた。
彼こそがロボットだったのである。
力尽きた飼い主のそばに駆け寄る犬。
何が起きたのだろうかと首を傾げている。
そして、数時間後、動かなくなった人間ロボットから電波を受け取った回収業者が家にやってきた。
業者は動かなくなったロボットをキャリーケースへと詰める。
ロボットを抱えて家を去る時、犬が駆け寄り吠えたため、業者は犬の存在に気づく。
たまたまこの家に紛れ込んだ犬なのだろうか。
人懐っこい犬で、遊んでとばかりに尻尾を振ってきたため、撫でてやる。
すると、犬の身体に何か固いものが埋め込まれていることに気づく。
心配になったため、病院に連れて行くことにした。
動物病院にて、身体に埋め込まれているのはマイクロチップだと判明した。
マイクロチップを読み取ると、販売元のペットショップの名前が確認できた。
ペットショップに問い合わせたところ、人間ロボットが飼った犬であると確認できた。
人間ロボットは、マイクロチップには疎かったようである。
とはいえ、人間ロボットも犬が可愛いという気持ちを持つのかとほっこりした気持ちになった。
心を持ったロボットを作ろうと日々努力している業者(開発者・回収業者)にとって、開発意欲がさらに湧く出来事だった。
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