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君たちはどう生きるかを読んで

吉野源三郎『君たちはどう生きるか』を読んだ。(2023/04/11読了)


1. 読む前の自分

『君たちはどう生きるか』という本の存在は、ずっと前から知っていた。
近所の紀伊國屋書店ではレジ横の目立つ場所に陳列されている。漫画「君たちはどう生きるか」は広告などでよくその表紙を見かける。
スタジオジブリは今年の夏に「君たちはどう生きるか」というタイトルのアニメーション映画を公開する。情報に敏感な人なら知らない人はいないほど、有名な本である。

本書は、中学生のコペル君が叔父さんとの対話の中で「人生をどのように生きていくか」を考えていく話になっている。十章に分かれているが、一続きの話だ。各章で描かれる具体的なストーリーから、生きる上でのヒントを汲み取ることができる。

学生向けの本なので非常に読みやすい。平易な文章で書かれていて、読み物として読むならとてもラクな本である。
しかし、本の主題が「人生」なので、嫌でも自分の人生と結びつけながら読み進めることになる。自分の心と向き合い、素直な気持ちで読もうとするなら、とても疲れる。

その意味では、この本は簡単な本ではないかもしれない。
しかし、もしあなたが「自分はどう生きるか」という問いの答えを探しているなら、この本は間違いなくその答えを出す後押しをしてくれるだろう。

この本に期待すること:
自分の人生をよりよく生きるために、何かアドバイスがほしい

2. 気付き

私がこの本で一番刺さった部分は、
英雄とか偉人とかいわれている人々の中で本当に尊敬ができるのは、
人類の進歩に役立った人だけだ。
というところだ。

この部分は第五章「ナポレオンと四人の少年」の一幕である。
コペル君がナポレオンの素晴らしさに感動していたときに、
叔父さんがノートの中で「ナポレオンは、そのすばらしい活動力で、いったい何をなしとげたのか」という問いを投げかけた場面だ。

これは、英雄や偉人を含め、
人間を評価するときには「非凡な才能」を使って「何を成し遂げたのか」という視点が非常に大事だということを伝えているのだと思う。

「彼ら(偉人)のやったことは一体何の役に立っているのか」
こういうことを大胆に考えてみなければいけない。非凡な能力で非凡な悪事を成し遂げるということもあるからだ。

世の中には、非凡な才能があっても人類の進歩に役立てるような行動を取らない人間がいる。
また、非凡な才能があっても人類の進歩に役立てない、なにもしない選択を取る人間もいる。それは、とても空しいことだ。

そう考えると、人類を豊かにするために何かを生み出す人(生産する人)は人類にとって価値のある人間だといえる。こういう人になりたい。


私はなぜ、この一文が響いたのか。

それは、この文を読んで、
今の私は消費するだけの人間で、人類のためには何の役にも立っていない。何の価値も生み出していない存在であることに、否応なく気付かされたからである。

私は勉強するだけ勉強して、まだ働いていない。就活中の身だ。
また、就活はしているが、「人類のために勇気を持って何かを成し遂げよう!」というような崇高な目標は持っていない。仕事をする理由に人類の進歩のためという要素がない。

だから、もしこの先働いて給料を得たとしても、「誰かの役に立っている、何か価値を生み出している」と自信を持って言えないだろう。自分に何かを成し遂げるつもりがないのなら、何も成し遂げることはできないからである。

この一文が響いた理由がもう一つある。
それは、歴史上の偉人や英雄を「すごいことをした人」という括りで見てはいたが、「何を成し遂げたか」という視点で見てはいなかったからだ。

自分の好きな偉人を他人に紹介したときに、「何を成し遂げた人ですか?」と聞かれてもすぐに答えられない。教科書的な答えは出せても、その人の本当の偉業というものはわからない。そこを深掘りしてこなかった。歴史や伝記が好きだと言っておきながら、偉人の偉人たる所以に無頓着だったのだ。

そもそも、本当に尊敬できる人がどういう種類の人間なのかなんて考えたこともなかった。この一文を読んで、自分は一体どういう人間になりたいのかを、考え直すきっかけになった。

3. 今後どうしていきたいか

この本を読んでわかったことは、
「自分は人間としての値打ちを持っているか」を常に意識しながら生きていかなければならないということだ。

自分と社会との関係は切っても切り離せない。
自分は何か価値を生み出しているだろうか、誰かの役に立っているだろうか。そういう問いかけを自分自身にして生きていかなければ、
ただただ盲目的に仕事をする、善良なだけの人間として人生を終えてしまうだろう。

人間であるからには、人間のために役に立つことをして何か価値を生み出したい。この本を読んでからは素直にそう思えるようになった。
英雄的気魄(勇気)を持って、何かを成し遂げてから死ぬ。この視点を自分の人生設計に組み入れようと思う。

ただし、「誰かの役に立つ、何か価値を生み出すことをしよう!」というときには、架空の存在を拵えてそれに自分を近づけていくということをしないようにしなければならない。

自分自身が心から感じたことでないことや、自分のありもしない理想の姿から出発して「志」を作ってしまうと、無理が出てくる。自分自身にごまかしがあれば、嘘になってしまう。どんなに崇高な志でも、脆くなる。

だから、常に自分の体験から出発して正直に考えることが大事である。
人生のどんな段階でも、自分の感情や経験を立脚点として自分の進路を作っていきたい。(この考え方もこの本から学んだ)


「人生をどのように生きていくか」というテーマは、長い人生の中で、誰でも考えなければならない問題だ。つまり、この本はいつでも、誰にでも、関係のある話題を取り上げた本だ。そのため、読む人を選ばず、また読むのに早すぎることも遅すぎることもない。

誰が読むかによって、刺さる部分は違うだろうし、
いつ読むかによっても、刺さる部分は変わるだろう。

だから、気軽に手に取ってほしい。
自分自身と向き合うためだけに、誰にも告げずに一人で読んでみてほしい。


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