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#創作大賞2024

デイジー

デイジー

「黒猫」

俺は黒い。

みんな俺を見るとみな不吉だと逃げていく。

そんな俺を綺麗だと言った。

お前さんだけだった。

俺を見て綺麗だと言ってくれたのは。

お前さんは真っ白な肌で、華奢な体つき。

お前さんにはわるいが、少し病弱そうに見える。

もうちょっと肉をつけろ。肉を。

と言いたいところだが、

俺はそんなお前さんが好きだ。

華奢なのに、

しっかりとしたゴツゴツとした男を感じる手

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ヤグルマギク

ヤグルマギク

「美学」

僕には美学がある。

これは、嫌だ。

これは、ダメ。

これは、いい。

これは、幸せ。

そんな、僕にとって

法則みたいなものが沢山ある。

例えば、

横断歩道で車が止まってくれたとき

会釈を必ずする。

とか、

コンビニでレジで会計した後

必ず「ありがとうございます。」

を言う。

とか、

こんな、ちょっとしたくだらないことに

法則がある。

それは、たぶん他の人

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オオアラセイトウ

オオアラセイトウ

「所有物」

今朝、喧嘩を見た。

激しい喧嘩と言うよりも、

冷戦状態のような冷ややかな喧嘩だ。

朝ごはんはとうに冷め切っている。

ことの発端は、

「アイディアは誰のものか。」 

についてだった。

Aは、言った。

「俺が最初に出したアイディアだったのに。」と。

涙ぐみ、心中にあった

黒い全てを吐き捨てるように言った。

Zは言った。

「それは、私のアイディアで、ずっと前から考え

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バス

バス

「あけぼの」

バス。

揺られるつり革。

バス停の停車ベル。

誰かが降りた。

そして、誰かが乗車した。

夕日。

うだるような太陽。

車窓から見える車の流れ。

その流れに呑み込まれるように

そっと窓ガラスに手を這わせた。

覗き込むようにして目を流す。

バスが動いた。

またバス停の停車ベルが鳴り、

誰かが降りる。

そして、また誰かが乗車した。

それを幾度となく繰り返してゆ

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