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麓(ろく)
2024年5月29日 17:09
「黒猫」俺は黒い。みんな俺を見るとみな不吉だと逃げていく。そんな俺を綺麗だと言った。お前さんだけだった。俺を見て綺麗だと言ってくれたのは。お前さんは真っ白な肌で、華奢な体つき。お前さんにはわるいが、少し病弱そうに見える。もうちょっと肉をつけろ。肉を。と言いたいところだが、俺はそんなお前さんが好きだ。華奢なのに、しっかりとしたゴツゴツとした男を感じる手
2024年5月27日 17:36
「美学」僕には美学がある。これは、嫌だ。これは、ダメ。これは、いい。これは、幸せ。そんな、僕にとって法則みたいなものが沢山ある。例えば、横断歩道で車が止まってくれたとき会釈を必ずする。とか、コンビニでレジで会計した後必ず「ありがとうございます。」を言う。とか、こんな、ちょっとしたくだらないことに法則がある。それは、たぶん他の人
2024年5月25日 15:30
「所有物」今朝、喧嘩を見た。激しい喧嘩と言うよりも、冷戦状態のような冷ややかな喧嘩だ。朝ごはんはとうに冷め切っている。ことの発端は、「アイディアは誰のものか。」 についてだった。Aは、言った。「俺が最初に出したアイディアだったのに。」と。涙ぐみ、心中にあった黒い全てを吐き捨てるように言った。Zは言った。「それは、私のアイディアで、ずっと前から考え
2024年5月17日 20:31
「あけぼの」バス。揺られるつり革。バス停の停車ベル。誰かが降りた。そして、誰かが乗車した。夕日。うだるような太陽。車窓から見える車の流れ。その流れに呑み込まれるようにそっと窓ガラスに手を這わせた。覗き込むようにして目を流す。バスが動いた。またバス停の停車ベルが鳴り、誰かが降りる。そして、また誰かが乗車した。それを幾度となく繰り返してゆ