東大vs弁護士、どちらが良いのか
最近、noteで東大vs医学部とか、東大vs公認会計士といった記事を見かけることが多くなっていたが、法曹三者の記事はまだ見たことがないので、思うところを書いてみたいと思う。本職の人には突っ込まれるかもしれないが、一応頑張って書いたので、たたき台として捉えてほしい。
筆者は法学部の出身ではあるのだが、仲の良い友人で弁護士になったものは多くない。おそらく、司法試験を真面目に受験していた層は学生時代に遊ばずに勉強していたのだろう。(遊んでいた層でも少し遅れて司法試験に合格したものはいる)
今回は東大卒のサラリーマンの目線から、東大と法曹のどちらが良いのかを考えてみたいと思う。結論は察しが付くかもしれないが、法曹のメリットは東大より大きいというのが結論だ。ただし医学部医学科ほどの圧倒的な差は無く、完全な上位互換とは行かないのではないか。
1.難易度
司法試験のシステムはやや複雑である。以前は旧司法試験という一発勝負の試験だったが、この試験は浪人が大量に溜まっていたことが原因で魔物のような難易度となっていて、東大よりも遥かに難易度が高かった。しかし、現在は司法試験改革や弁護士過剰問題などがあって、以前よりも緩和されている。
新司法試験を受けて法曹になるためのルートは①予備試験ルート②法科大学院ルートの2つが存在する。①の予備試験ルートは旧司法試験ほどではないが超難関であり、合格者の3割以上は東大法学部の出身者である。②の法科大学院ルートはもう少し難易度は押さえられている。2つを合わせるとだいたい合格者のうち東大卒は一割程度であり、残りは早慶や中央を中心とした私立大学法学部が大勢を占める。中にはそこまで偏差値の高くない大学の出身者もいる。予備試験の難易度と市場価値は時代によっても変動しており、一概には言えない。今回は法曹資格という観点に絞りたいので、法科大学院ルートを念頭に置くことにする。
難易度に関しては本当の意味では比較困難だが、東大の方が高いのではないかと思われる。東大の合格者は3000人、新司法試験の合格者は1500人ほどである。東大は同世代の成績優秀者の大半が目指すのに対し、司法試験の母集団は文系、特に法学部の出身者に限られてしまうし、法学部にしても全員が司法試験を目指す訳では無い。大学によっても異なるが、東大法学部の場合は路線変更した人間を含めても40%程度ではないかと思われる。母集団の厚さという点では大学受験のほうが上となる。
ただし、注意しておきたいのは、医学部と異なり司法試験の適性は大学受験と大きく異なるということだ。全国模試で一桁を取っていても、司法試験には手も足も出ないという例は珍しくない。東大は幅広い科目をバランス良く極めることが必要なのに対し、司法試験の場合は専門特化であり、しかも数理的な素養をあまり必要としないので、両者には大きな乖離がある。共通するのは高度な言語処理能力や論証の当てはめ力だろうか。
これらを総合すると、異論はあるかもしれないが、新司法試験の難易度は地方国立医学部くらいであり、必要とされる素養が大きく異なるため、東大生であっても簡単には受からない、という辺りで落ち着くのではないか。予備試験ルートは旧帝医学部に相当するだろう(東大との難易度差が議論になることも含めて近いと思う)。どちらも高度な思考力を要する試験であり、極めて奥が深いことは確かである。一般的な資格試験のようなボトムアップ的なアプローチでは対応できないだろう。
ちなみに筆者の周囲を見た感想だが、大手弁護士になったものは都心の中高一貫校出身で、予備試験に短期合格するような、生き馬の目を抜くタイプが多かった。裁判官・検察官になった者は地方公立の秀才が多かった。
2.収入
弁護士の収入は弁護士過剰問題によって大きく揺らいでおり、中には弁護士会費を払えない弁護士や、どことは言わないが怪しげな事務所に就職する者もいるらしい。ただ、弁護士は旧司法試験の時代からイメージほど儲かる業界ではなかったという噂もある。年収800万を割ることはない医者と異なり、ダウンサイドリスクは排除できない。
弁護士のうち、企業法務を中心としたエリートコースを歩むものは青天井の収入である。初任給は1000万、数年経って一人前になると年収は2000万〜3000万、人によってはそれ以上となる。ここまで来ると普通の東大卒には手の届かない領域となる。ただし注意が必要なのは、これらの事務所は就職難易度が高く、予備試験合格者や東大卒でないと採用されにくいという点である。採用されたとしても、この手の事務所は外資系投資銀行を彷彿とさせる凄まじい激務であり、生き残るのも大変だ。
一般民事系の弁護士であれば、年収が数百万程度にとどまる人も多い。福利厚生が乏しいことを考えると、優良企業に就職した東大卒には劣後する可能性が高いだろう。個人事業主は営業力勝負であり、極端なコミュ障の場合はやっていけないのではないか。転職市場を見ても、なかなか厳しい現状があるようだ。
裁判官・検察官に関してはそれなりに恵まれているといえる。初任給で500万、安定してくると年収は1000万〜2000万は堅いだろう。キャリア官僚より明確に給与水準が上だし、2極化が激しい弁護士に比べても、堅実と言えるかもしれない。
収入面に関しては、東大卒と法曹三者では、なんとなく法曹の方が賃金水準が高いイメージもあるが、福利厚生等も考えると正直そこまで差がつかないだろうというのが感覚である。弁護士の資格を持っていても、エリートコースに乗るか、営業力が高くないと高年収を維持することは難しく、最近はむしろインハウスが流行っているくらいである。筆者の会社にも司法試験に合格した人がいたが、法務部で専門性の高い業務に従事しており、特に会社を辞めたという話は聞かない。法曹に限った話ではないが、営業適性のないASD傾向の人は専門性を活かして大企業に居場所を見つけるのが最適かもしれない。
こういった点を考えると、東大卒と法曹は収入面で大きな差はないかもしれない。特に弁護士は自営業であり、手腕と営業力によって収入は青天井にもなるし、ダメダメにもなりうるということである。年収300万のクラスになってくると、正直東大卒の予備校講師のほうがQOLが高いのではないかとも思えてくる。
3.働き方の自由度
これに関しては高いとも言えるし、低いとも言える。医者がバイトや自由診療で大金を稼げるのに対し、弁護士にそのような仕事があるという話は今のところ聞いたことがない。大手事務所に入るには厳しい競争を勝ち抜かないといけないし、個人事務所を構えたとしても、純然たる自営業なので経営に関しては気が抜けないだろう。こうなると、育児休暇等が存在する優良企業に入った東大卒のほうが自由度が高い可能性もある。裁判官・検察官に関しては、公務員なので普通の民間企業よりも制約は多いだろう。ドロップアウト耐性が高いという印象もあまりない。
勤務地に関してはどうか。裁判官や検察官は激しい全国転勤なので、エリサラよりも過酷である。これは辞め判・辞め検の大きな要因となっている。弁護士の場合は転勤は一切存在しないが、需要が首都圏に集中しており、医者のように気軽に地方移住ができるわけではない。地方で弁護士を開業することも不可能ではないかもしれないが、既存の事務所と案件を食い合うことになるので、楽ではないだろう。ただし、東大卒の場合は経歴を活かせるような転職先は地方にほぼ存在しないので、後述する属人性や独立性の観点を考えると、弁護士の方にやや分があるかもしれない。
弁護士の場合は全国転勤や配属ガチャがない点で東大卒に勝っているかもしれないが、東大卒であってもコンサル等に就職すれば転勤はないので、結局は選択の問題で、大きな差はないのかもしれない。
4.独立性・裁量権
弁護士はおそらく数ある職業の中でも最も独立しやすい職業だ。事務所があれば開業医のような高額な設備は必要がないし、携帯一つで仕事を取ってくる者もいるという噂である。仮に東大を出ていたとしても、サラリーマンがその経歴を活かして独立開業するのは容易ではない。実は弁護士の最大の強みはこの点ではないかと思われる。
弁護士の独立性の高さは働き方のQOLにも現れている。弁護士は「先生」であり、仕事内容は個人に帰属する。そのため、(イソ弁は知らないが)JTC的な体育会系カルチャーは聞かない。四大事務所では若い弁護士であっても個室と秘書が与えられるらしい。弁護士には定時出勤は無いし、昼食の時間も自由とのことである。会社員の場合、個室は支店長クラスにならないと不可能だ。インハウスであれば普通の会社員と同じ環境で働くことになるが、専門職の職場文化は普通の総合職とは異なるケースが多いし、全国転勤や配属ガチャを避けられるだけでも恵まれているといえる。
一方、東大卒のサラリーマンの場合は個人の独立性が低いため、大部屋で周囲の目線を気にせざるを得なかったり、大企業特有のルール地獄に苦しんだりして、ストレスを感じやすい。配属ガチャや全国転勤といったキャリア設計の自己決定権の低さもまた問題となる。仕事を選べないのも難点である。業務の裁量権は幸福度に大きく影響しているらしいので、普通の東大卒よりは弁護士のほうが恵まれているだろう。
裁判官・検察官の場合は普通のエリサラと大きく変わるわけではない。少なくとも検察官に関してはかなり厳しい職場のようである。ただし、収入や転職可能性という点でキャリア官僚に、最初から権限が与えられるという点で大手企業に勝るといえるかもしれない。また、同じ堅苦しい職場でも、裁判官・検察官は夢を叶えて就職したという側面が強いのに対し、日系金融等の場合は妥協して就職したという側面が強く、他に逃げ場もないため、職業的な肯定感はずいぶんと異なるだろう。
5 一身専属性と転職価値
この点も法曹の圧勝である。
法曹資格は一身専属的であり、所属組織の価値とは無関係である。新卒で入った事務所を抜けたところで法曹資格を剥奪されるわけではない。裁判官や検察官を辞めた人であっても、弁護士に転身して食っていくことは可能である。インハウスを考えても、いざとなったときの転職価値は普通の社員より遥かに高いし、キャリアの選択肢も多いだろう。プロパー社員的な出世競争から距離を置けるという点も精神衛生上プラスかもしれない。
東大を出ていたとしても、その価値が評価されるのは職業人の世界では新卒就活の一度きりであり、そこを過ぎてしまうとその価値は減損してしまう。何らかの事情で新卒を逃したり、レールから外れてしまった場合は、残念ながらそれまでの努力は水の泡だ。もちろん社会に出てから転職価値の高いスキルを身に付ける人もいるかも知れないが、弁護士ほどの強みを持つ業種は少数だ。しかも配属ガチャなどもあるので、大半の東大卒は社会に出た途端、タダの人になってしまうと考えて良い。TOEICや証券アナリストなど、細かな資格を取得して転職市場で頑張る人もいるが、全部合わせても法曹資格ほどの威力はなく、せいぜい箔付けに過ぎない。
弁護士に限らず、士業の強みはその価値が一身専属的であり、過去の努力の結果が生涯の資産として残るという点だろう。東大卒、特に文系の場合は幅広い素養を活かした総合職社員として、大組織の幹部になることが本来の社会的役割だったため、転職市場に強くないのだ。
6.職業寿命
これまた法曹の強みである。
法曹資格は生涯有効であり、弁護士に定年はない。弘中惇一郎や久保利英明のように、業界の第一人者が80近いということは珍しくない。筆者のサークルのOBを見ても、70代80代になっても普通に弁護士として活躍し、尊敬されている人が多かった。裁判官や検察官は公務員なので定年があるが、一般の公務員よりも定年は長いし、退官後も弁護士に転身したり、70代以降も公証人として雇ってもらえたりする。大手事務所に顧問として雇ってもらえる者や大企業の社外取締役として名を連ねる者も珍しくない。
一方、東大卒の場合はそうは行かない。業界にもよるが、JTCの場合は早くも45歳辺りで片道出向が始まり、55歳で役職定年で給料が下がり、65歳以降はキャリアを失うことになる。東大卒だろうが無意味だ。セカンドキャリアといっても、それまでの積み重ねを活かしてできる仕事は殆ど無く、新しく何かを始めるにしても歳を取りすぎているので、せいぜいアルバイトが関の山だろう。弁護士と違って業務の独立性が低いので、役職定年で降格されればそれまで部下だった人間と立場が逆転して、辛い思いをすることもある。
先ほど東大卒の会社員と弁護士の収入はそこまで変わらないかもしれないと述べたが、生涯賃金という観点では定年の無い士業の方が上と言われている。資格業の場合は高齢がむしろ威厳を与えることもあるが、民間企業は遥かに若い人を選好する傾向が強い。上司部下の関係が絡むため、年長者の扱いに困るということもある。人生100年時代、両者の格差は広がっていくだろう。
7.社会的威信
裁判官・検察官の職業的威信はあらゆる職業の中でも最上位クラスだろう。これに関しては議論の余地はない。キャリア官僚は政治家の補助機関でしかないのに対し、裁判官・検察官は社会正義の番人として強力な法的権限が与えられており、外部からの干渉を許さない聖域となっている。
この2つほど高度に選抜されているわけではないが、弁護士もやはり社会的地位は高いはずだ。法曹三者は子供が憧れる職業として頻繁に上がるものであるし、法廷系のドラマは昔から人気である。(ただし、ドラマには弁護士業務の多くを占める企業法務系が欠落している)
一方、東大卒も社会的威信は極めて高い。東大の難易度が大半の医学部を上回っていることを考えると、日本人は東大に入ることを医者以上に評価していることになる。東大卒の弱みはその社会的威信が職業上の地位に直接には繋がらない点である。社会に出てから東大卒を名乗っても、学歴厨だと思われるし、無用な反感を買うこともあるだろう。ただ無用の長物かというと、そんなことはなく、難しいところである。
色々考えることはできるが、東大と法曹の社会的威信は引き分けくらいではないかと思う。見方を変えれば大学受験で東大に届かなかった場合でも、司法試験に合格すれば上塗りできるということだ。最高裁や検察庁の偉い人の人事を見ていると、早稲田や中央の出身者が結構多い。これが普通のキャリア官僚になると東大卒ばかりなので、法曹資格は東大閥を打ち破るパワーがあるといえる。
8.社会的活動・課外活動
弁護士の中には社会運動系の活動に勤しむ人間も多数存在する。オウム真理教に殺害された坂本弁護士などは典型例だ。裁判官・検察官・大手事務所・インハウス、その他企業法務中心の弁護士の場合はこうした活動は難しいが、こういう生き方もあるということだ。社会的意義のある仕事ができるという点は、ビジネス的な業務に限られる会計士との一番の違いだろう。
キャリアという観点からは外れてしまうのだが、弁護士の場合は個人事業主という特性と社会的威信を活かして課外活動に勤しむことも可能である。例えば「行列のできる法律相談所」をはじめとするタレント活動は良い例だ。弁護士として特に実績のない人間であっても、テレビやYouTubeに出演した例も見聞きするし、趣味の分野で目立っている人間もいる。
東大卒の場合、起業でもしない限りは組織人としての人生である。大企業勤めで課外活動は難しいし、実名で活動することすら憚られる。辞めた場合は何の肩書もないただの人になってしまうので、弁護士のような働きはできない。元野球選手の宮台康平氏も会社員では野球選手としての経験や知名度が活かせないと考え、弁護士の道を選んでいる。
良く見てみると、メディアで何かを発信している人間は大半が個人事業主だ。弁護士は個人事業主としての性質が強いため、社会に出ていくハードルが低いと言えるだろう。東大卒であっても、サラリーマンになった以上は何かを発信する機会は社長になって日経新聞の「私の履歴書」に一瞬記事が載る程度で、後は匿名でサラリーマン的皮肉を発信する程度が関の山である。
9.仕事の面白さ・やりがい
人によって極端に感じ方が異なるので、客観的な分析は不可能であることを断っておく。
法学はあまり面白い部類の学問とは思えないが、司法試験に受かっている人間の場合は世の中の平均に比べると法学に興味を持っている人が多いだろうし、専門職的な満足感はあるだろう。裁判官・検察官の場合は重大な社会的意義を持つので、高度な倫理観が求められる。一般民事系の場合は良くわからないが、現場に近く、専門性を活かすことができ、業務の裁量権が大きいという点で、面白さを見いだせるかもしれない。親戚から聞いた話ではあるが、身の丈にあった個人事業主は、軌道に乗れば大変充実感を感じられるそうだ。企業法務系の弁護士の場合は東大文系卒が就くような、会計士やコンサルとそこまで内容が変わらない気もする。ただ、弁護士として成長することで個人の名前が売れていったり、本を執筆したりセミナーを開くなどの活躍の幅が広がっていくかもしれない。これらはやはり弁護士の独立性の高さに起因する。
東大卒のうち、理系が進むような研究職や開発職は、比較的やりがいを感じている人が多いように思える。起業家も含めてよいだろう。官僚は本来はやりがいがある仕事だと思うが、過酷な労働環境によって価値が毀損されている気がする。東大卒の進路の中で仕事の面白さを感じにくいのは、文系が進みがちなコンサルや会計のようなブルシット系の職業や、裁量権の乏しいJTCの文系総合職などである。特に際立って低いのが金融業界だ。東大文系卒のキャリア論を見ていると、「専門に対する興味やプライド」という観点がかなり欠落しているのが特徴で、これが専門職や理系との大きな違いとなっている。いわゆる「文系就職」の一番良くないところは興味や理想主義との相性が極めて悪いことではないかと思っている。
感じ方は人それぞれなので、優劣を付けるのは難しいだろう。ただ、多くの東大文系の場合は法曹に劣後する可能性が高い。東大文系も法曹も、扱う事案が大きく違う訳では無いが、前者は業務の裁量権が乏しく、組織を離れて活動することもできないので、違いが出てくるわけである。仕事を通した自己実現は法曹の方が容易である。
まとめ
今回は東大vs法曹に関して考えた。筆者の独自の意見ではあるが、法曹になるメリットは東大に入るメリットよりも大きいと思う。ただし、圧倒的な差があるわけではない。収入や社会的威厳という点では大きく変わらないし、ダウンサイドリスクの回避という点でも微妙である。だが、独立開業の容易さや職業寿命の長さなど、普通の東大卒が手の届かない優位性が弁護士にある。総合的に見たメリットという点では概ね医師>法曹・会計士>東大というのが正直な順序ではないか。
医師や会計士と比べると、法曹は難易度に対してリターンは微妙であり、コスパはよろしくない。東大と同じだ。いや、これこそが本質かもしれない。法曹の資格は「かっこいい」のだ。
筆者が以前投稿したTier2最強論によると、ブランド力の強い試験や就職先は採算度外視で優秀層が突っ込んでくるため、コスパは悪くなることが多い。東大や官僚、マッキンゼーといったところもそうだ。逆に会計士は法曹に比べてブランド力で劣る分、コスパは上回っているだろう。医師も「かっこいい」仕事であることは間違いないが、大学受験の文脈に限るとそうでもない。東大の悪魔的魅力はほぼすべての医学部医学科を圧倒しており、旧帝医学部ですら正直霞んでしまうのではないか。東大に受かる学力を持っている人間が、あえて医学部に進学するのは、親が医者か、よほど医者に憧れていないと難しいだろう。
こう考えると、東大と法曹はそれぞれ大学受験の最高峰と資格試験の最高峰という点で良く似ているのかもしれない。確かに、三大資格の中でも弁護士はプライドが高い人が多いような気もする。会計士は実利的なタイプが多いし、医者の場合は親主導か、難関校の場合はそもそも医療に興味がなかったりするので、プライドの形は変わってくる印象である。いずれにしても、損得勘定だけでは目指せない業界だろう。資格試験の王たる司法試験に合格したという達成感はそれほど大きいということである。