「Tier2最強論」について語る

 一連のキャリア論の一環の記事である。今回は筆者の友人が考え出した「Tier2最強論」について考えてみたいと思う。

 Tier2最強論ってなんじゃラホイと思う人が多いだろう。筆者の主張するTier2最強論とは「Tier2に該当する進路を進んだ場合、最も実入りが良く、幸福度も高い」というものである。筆者の友人は転職活動を通してこの原理に気が付き、現在は悠々自適のJTCライフを楽しんでいる。そんな記事である。

 Tier1とかTier2といった語に慣れない方もいるかもしれないが、要するに格付けをかっこ付けていっただけである。Tier1は1番手、Tier2は2番手という意味だ。

 さて、Tier2最強論の理論的背景には「業界トップクラスの就職先はその待遇に比して内部競争が激しく、コスパが悪い」という事実がある。その理由はいくつか考えられる。

 Tier1の就職先は「一番手」というプライドだけで人が集められるので、待遇が悪くても問題ない。例えば官僚がいい例だろう。国のために戦う(働くといって生易しいレベルではない)エリートというプライドがあるため、安月給と重労働でも優秀な人が採用できてしまうのだ。

 また、Tier1はその性質上プライドが高い人が集まることになる。彼らは競争心が強く、簡単に他人を認めることができないので、雰囲気はどうしても競争的になってしまう。これに「自分たちより上がない」というプライドが加わることで、ますます内部競争に目が向くようになるだろう。

 一方、Tier2はどうか。「何が何でも一番を狙う」といった野心的なタイプはTier2の進路はあえて取らないから、必然的に穏やかな人が多くなるだろう。競争は抑えられ、どちらかと言うと平和で仲良く分前を共有しようという雰囲気になっていく。Tier2の進路は確かにブランドという観点では若干「カッコ悪い」のだが、そのカッコ悪さと引き換えに安楽と高待遇が用意されているのである。筆者の知る限り、Tier2的な立ち位置の会社でブラックという話はあまり聞かない。

 これがTier3以降に成り立つのかという疑問が湧いてくるが、これは場合による。医者のような資格業の場合や、金融専門職のように高度な専門性を持っている場合はTier3であっても高待遇が狙える可能性があるだろう。一方、文系総合職のサラリーマンなど、得意な専門性を持っていない場合はTier3以降になるとTier2には劣後する事が多い。やはりTier2の会社の方が企業体力があるし、福利厚生や給与水準も魅力的だ。集まってくる人のレベルも差がある。

 筆者の友人はこの理論に従い、転職活動を行った。彼は高度な専門性を持っていたため、小規模な事業体に行っても給料や待遇の低下を恐れる必要がなく、むしろ上昇しているようだ。この場合、Tier3の会社に行くと内部競争のゆるさや会社全体の楽さの恩恵をもろに被ることができる。ただし、一つ注意すべきは福利厚生は大手ほど十分ではないことである。

 Tier2理論において重要なのはいかに「名より実」を取るかだろう。就活生は人にもよるが若者特有の野心家であることが多く、どうしてもTier1の大手に内定してドヤ顔をしたがる事が多い。経産省と農林中金にダブル内定したら普通は経産省に行きたくなってしまうだろう。しかし、それでも「名より実」を取る者もいて、彼らは目論見通りホワイトな会社生活を満喫している。

 Tier2理論は最近の労働市場の動向を踏まえると、実現しやすくなっている。どこの企業も中途採用を拡大しているため、専門性を適切に積み上げればTier2の会社に入り込むことが容易になっているからだ。例えば外資コンサルでつかれた人が日系大手に30代で転職してワークライフバランスを確保するといった例がわかりやすい。以前のサラリーマン社会では転職へのイメージは悪かったし、仮に転職しても会社で疎外感を味わうことが多かったが、最近はそうではないようである。

 なお、この手の話は学歴に関しても当てはまる。東京大学は日本一の大学という名誉を求めて日本中から優秀な受験生が殺到するため、異常な難易度となっている。それに反してリターンの方が微妙である。悪い訳では無いが、入試難易度を考えると少々劣るのではないかと思われる。

 Tier2最強論を踏まえて筆者が勧めたい大学は地方の国立医学部である。これらの大学は特に入っても得られる「名誉」が無いため、相対的に受験に関しても、入ってからに関しても、競争が緩い。卒業して医者になってしまえば、収入・安定性・社会的威厳の観点で東大卒の多くを上回ることになる。

 もう一つ、京都大学もオススメである。京大は東大に舐められない唯一の大学であり、学歴フィルターに引っかかる恐れがまったくない。大学としての実績は東大と同等だろう。その上、地方にあることもあって、東大ほど競争的な環境ではない。京大の入学者を見ていると、中高一貫は半分以下で、普通の公立高校からも十分合格可能な難易度である。ただし、文系の場合は文系就職の首都圏偏重により、不利かもしれない。この場合は一橋大学がTier2最強論にふさわしいかもしれない。もっとも医科歯科のようにTier2ではあるがコスパが悪い学歴も存在するので、全てに当てはまるとは限らない。

 「一番上」を目指すというのは、野心に燃える若者にとって魅力的なことなのだが、それだけが人生の満足感に繋がるとは限らない。むしろ、あえて肩書のかっこよさに囚われず、Tier2を目指す戦略の方がトータルでは実入りが大きいかもしれない。Tier1を目指すことに取り憑かれている人は、今一度「どうして1番なんですか?2番じゃ駄目なんですか?」と自分に問いかけてほしい。ただし、最初から2番を目指すと、思わぬ対抗馬が現れて3番まで落ちてしまうというリスクもあるので、油断は禁物である。

 

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