【結論】東大vs医学部結局どっちがいいのか

今回はネットでもよく取り上げられる東大vs医学部の問題に東大卒の筆者が自分なりの回答を用意したいと思う。筆者は東大を卒業しているので当然東大卒の友人は周りに多く存在する。一方で高校は関西の進学校であったので医学部に進学した友人も多く存在する。高校では大体50人くらいは医学部に進学していた。

30代となった今、結局東大と医学部どちらの方が幸せになっているかに関して筆者なりの考察を交えて論じてみようと思う。

ちなみにネット上では東大文系では医学部に通らないと言われることもあるが、これは進学校卒業者ではない人の意見だと思う。東大文系に合格する能力があれば、きちんと一年程度勉強すれば地方医学部は普通に合格するはずだし、旧帝医学部も十分に狙えると思う。
極端に数学が苦手で文系科目だけで何とか合格したといったパターンであれば厳しいかもしれないが、そもそもこのようなタイプは東大にもなかなか合格できないし、数は多くない。
筆者の高校では文理に分かれるのが高2であったが、東大文一に合格した学生は、高1のときは旧帝医学部に合格した学生と同レベルかそれよりも上位にいたので、当時の東大文系は間違いなく、旧帝医学部レベルの難易度であったと思う。

東大理系であれば、感覚さえ戻ればすぐにでも旧帝医学部に合格出来る。筆者の周りでは医学部再受験した東大理系卒は数人いたが、東大理三×2、阪大医学部×1、千葉大医学部×1、横浜市立大学医学部×1、広島大学医学部×1と難なく合格していった。結局医学部と東大の難易度は変わらないと思う。

ただし卒業後の人生は結構差がついてしまっている印象である。いきなり結論になってしまうが、【医学部】に進学した方が普通の人は幸せになれるということである。

ではなぜこのような結果になってしまうのか?今回はその理由に関して筆者なりの考察も加えながら説明していきたい。


1. 医学部の方が卒業後の平均年収が高い

具体的な値は記憶していないが、医者になった方が高い年収を期待できる。勤務医の平均年収は1400万程度、開業医の平均年収は3000万程度である一方で東大卒の平均年収は800万程度である。年齢が上がれば上がるほど待遇というか年収は大事になってくる。家族が出来た場合には、養っていくのにお金が必要になるし、若さを失った代償として若さを取り戻すためにお金を支払う必要があるからだ。

医者の友人に話を聞くと彼らは確かに激務であるのだが、専攻を適切に選択すればそうでもないらしい。東大を出たサラリーマンも基本的には皆もれなく激務である。
東大卒を出た普通のサラリーマンがバイト等は出来ない一方で、時給1万円スタートのバイトも出来る。

医者の場合は、地方に行くほど年収が高くなるらしい。地方は慢性的な医者不足なのでそこに出稼ぎに行けば年収は跳ね上がるとのことだ。普通のサラリーマンが地方に行こうとすると年収が上がるどころか、下がるし、そもそも仕事がないかもしれない。
筆者は関西の郊外出身なのだが、その町でトップクラスにお金を持っていたのは、近所の町医者であった。外車は3台持っていたし、家は戸建ての大豪邸であった。後に知ったのだが、出身医学部は正直東大レベルではなく、早慶よりも下なのではないかと思うレベルである。それでも地方では敵なしであれだけ富を築けるのは医師免許のおかげだと思う。

基本的にはファイナンスの世界では、リターンが大きくなればその分リスクも大きくなるのが当然なのだが、医師免許の場合と東大卒という学歴を比較した場合には、この法則が当てはまらなくなる。つまり医者の場合は東大卒よりも年収が高く、仕事の安定性も高いのだ。


2.東大であっても卒業してしまえば、ただの人

東大に入るのは難しく、学内でも進学振り分けがあったり、就職活動があったりして万年熾烈な競争に追われている。ただし、卒業して社会人になった途端、それ以外の大学出身者と同じ土俵に立つことになる。厳密には就職活動では有利であったり、初期配属が優遇されているので、マラソンでいうと半歩くらい先にはいると思う。それでも就職先としては基本的には早慶やMARCHとそこまで変わらないところに進むことになる。

筆者の場合は新卒で日系金融機関に入ったのだが、東大は少数派であった。どうして東大まで出てここに来たんだと言われることも多かったのだが、いやいや東大出てもそこまで進路の幅が広がるわけではないのになあと思っていた。仮に就活時点では日系金融よりも格上とされる外銀や外コン、更には官僚になったとしてもそこでは東大よりも更に厳しい内部競争が待ち構えている。数年でドロップアウトするものも珍しくない。
東大卒の同期は確かに初期配属は筆者も含めて恵まれていたのだが、そこから先は正直実力次第であり、慶応卒とかには普通に数年で逆転されていた。あの難しい東大受験を突破したとしても、普段の勤務態度が良くないとか、上司にうまく媚びることが出来ないといった些細なことですぐに逆転されてしまうのである。

また日本では未だに新卒主義が根強いので、一旦新卒で入った会社を抜けてしまうともう完全に東大であることの優位性はなくなってしまう。この場合は、東大を出ていてもただの便利屋で終わることが多い。普通のサラリーマンは転職を重ねるほど、履歴書は汚れるし、周囲からの尊敬も得られなくなってしまう。一度奈落に落ちるとなかなかそこから這い上がれないのである。
医者の場合も勿論出世競争はあると思う。それでも転職や独立が容易であるので、出世の見込みがない場合は、別の組織に移ってしまえばさほど問題でなくなる。そこから再度やり直せばよい。

ちなみにこれは他の士業も同じである。弁護士は東大よりも難しいと思うのでそのリターンが東大を上回るのは理解できるが、公認会計士であっても東大を出るよりは総合的に良い人生を送ることが出来ると思う。やはり士業の方が東大という学歴よりもはるかに強い。

3. 医者の方が働き方の自由度が高い

これもこれまでの話と関連するところであるが、東大卒の場合は卒業してからの自由度が低い。勿論転職することも仕事を辞めることも自由である。しかし多くのケースでは、その自由には様々な犠牲を伴う。転職すれば、生涯賃金の期待値は下がるかもしれないし、一度退職してブランクが空いてしまえば正規ルートには戻れないかもしれない。日本では職歴の空白はかなり忌避されることが多いので、どれだけピカピカの経歴であったとしても一度前線を離れてしまうと戻れなくなってしまうのだ。結局のところ東大卒であったとしてもサラリーマンには自由はない。

その点医者は比較的自由に職業選択が出来る。ちょっと仕事に疲れた場合は、バイトだけで生活することも出来るし、勤務時間が長くない自由診療の道に行くことも出来る。
筆者はこれまでワキガ治療、医療脱毛、AGA治療など様々な自由診療を受けてきたのだが、どのケースにおいても医者の診療時間はとても短い上、形式ばった説明を受けただけであった。これじゃ教科書の朗読と同じだよと思ったのだが、それでもかなりの好待遇を得ることが出来るみたいだ。ワキガ治療の際に医者がやってくれたことは、筆者の脇を嗅いで、「これはワキガですね」と言っただけである。正直羨ましい。
確かに社会的な威信はこれらの自由診療にはないかもしれないが、それでも裕福な生活が出来るというだけで勝ち組だと思う。

筆者のサークルには東大理3→東大医学部卒の医者のOBが卒業してからもたまに遊びに来ていた。どうやら一旦医者になった後再度勉強するために再度東大の大学院に入学し直したらしい。昼は大学院で勉強し、夜は当直のバイトを入れてその日暮らしをしていた。こんな芸当はサラリーマンには到底できない。ここでも羨ましいと感じた次第である。

4.医者の方が社会的ステータスが高い

これは言うまでもない。東大を出てもただのサラリーマンなので、社会的な威信はない。大企業勤務であってもそこを辞めてしまえばただの人であるし、そもそもサラリーマンが羨望の的になることは基本的にはない。

医者も都心ではそこまで威信はないかもしれないが、地方に行くとこれはもう別格である。地方には医者ほど稼げる仕事はないので、医者の社会的なステータスは非常に高い。関西の郊外であってもこのような感じであった。

井の中の蛙ではあるのだが、人間は周囲との相対感で幸福感を感じる生き物なので、地方で医者をやるというのも非常に良い選択肢だと思う。

高校の友人を見ていても、医学部に行った友人はライフステージを進めるスピードが本当に早い。東大の友人にはまだ結婚していないものもいる一方で、医学部に行った友人は結婚はとっくの前にしていて子供も複数人いるケースも多い。これはやっぱり仕事の安定性が高い上、社会的なステータスが高いことに起因しているのだと思う。

5.東大を出ると勤務地は限定的

東大を出て、サラリーマンになる場合は基本的に勤務地の選択肢は殆ど東京一択である。勿論関西や愛知、福岡辺りに住んでいる東大卒もいるにはいるだろうが、少数派であり、殆どは東京勤務であろう。というか何なら結構大多数が丸の内、東京駅近辺で働いているのではないかと思う。東京はいい街である。ロンドンやニューヨークに行ったこともあるので尚更これは実感する。治安もいいし、物価も他の世界の大都市と比べてそこまで高くなく、交通の便もいい。ただし東京はあまりにも人口が過密すぎるし、最近では不動産価格も高すぎる。東京ではなく千葉や埼玉、神奈川に住んでもいいかもしれないが、今度は地獄の通勤ラッシュが待ち構えている。東京を離れて地元の関西に戻りたいと何度も思ったことがある。しかしである。東京以外で筆者の職歴が活かせる場所はない。探してみたこともあったが本当にない。無理やり今までと全く異なる職種に就くことも可能だとは思うが、この場合は大幅な待遇減を覚悟する必要があり、そこまでする気にはなれない。
東大卒で日系大企業に入った場合は海外勤務の可能性が出てくる。ニューヨーク、ロンドン、香港、シンガポール辺りに赴任するものが多い。海外生活は確かにメリットが大きいのだが、近年では日本と世界の大都市の物価格差が大きくなりすぎたので、海外駐在員の生活はかなり厳しいようだ。また海外勤務の場合には、パートナーは仕事を辞める必要が出てくるかもしれない。これは生涯ベースでみると数億円単位のロスになる可能性もある。共働きが増えた現在においては海外勤務のメリットはかなり小さくなってしまったし、むしろ失うものの方が大きい。

この点、医者の場合は都心は勿論、大阪や福岡などの地方都市でも働けるし、更に田舎に行くことは出来る上、この場合は待遇が上がるという謎現象までついてくる。強制的な海外駐在は聞いたことがない。どう考えても地方の方が競争は緩やかで子育てとかには向いているよなと思う。東大の場合は勤務地の選択肢すら実質なく、いくら高年収でも良い生活は出来ない。

6.医者の方が結婚しやすい

結婚はマストではないと思う。それでもやっぱり結婚のメリットは大きい。男性の場合は、生涯未婚の場合はそうでない場合と比較して平均寿命はかなり短いという結果も出ているので、やっぱり結婚は大事だと思う。

医者の生涯未婚率は3%程度とのことだ。筆者の高校では少なくとも50人程度は医学部に進学していたが、そのメンツを思いだしてみても、正直普通に考えたら結婚は厳しいよなといったメンツも多かった。それでも生涯未婚率が3%なのでその中で結婚できないのは1人か2人である。

医者の場合は、そもそも社会的なステータスが高く、年収も高いので当然モテる。それに加えて、看護師や薬剤師等コメディカルは基本的に女性が多いので出会いも多い。
恋愛は当然その人の持つ絶対的な価値も大事なのだが、それよりも何よりもその人が属する集団の中の男女比が重要なのである。
工学部を出て、地方の工場で働く場合には周囲は男ばかりなので、同じ理系でも大違いだ。
ここでも医学部は圧勝である。

7.医者の方がドロップアウトに対する耐性が強い

これは卒業後という話からは逸れてしまうのだが、医学部の場合は基本的に多浪であっても問題ないし、留年したとしても医師免許さえとってしまえば問題ない。何年遅れたとしても基本的に職にありつけると考えて問題ない。しかしこれは東大の場合は全く事情は異なる。一浪は全く問題ない。一留もそこまで問題にならない。筆者のように一浪一留であっても、最難関を狙わない限りは問題ない。二留になるとさすがに言い訳が必要になってくるがこれでも就職は出来る。大きな問題になってくるのは+3からだ。この場合は新卒就活においては既卒扱いになってしまい、大手日系企業の場合はエントリーシートで落ちるケースが多くなる。東大卒であってもだ。というか既卒になってしまうと基本的に日系就活はかなり厳しい。筆者の周りにも東大法学部を出たのに名もない企業に行ってしまったものやニートになってしまったものもいる。現行の日本の就活制度だと一度レールから外れてしまえばいくら東大を出ていてもその後の道のりは厳しくなってしまう。この場合はさっさと見切りをつけて、医学部再受験や公認会計士受験に切り替えた方が賢明である。

しかもこのドロップアウトに強いという特性は卒業後も変わらないと考えてよい。医学部はここでも強い耐性を有する。


正直これ以外でも医学部に進学するメリットはあると思うが、考えるのも面倒なのでこの辺りで止めておく。

色んな観点で考えたが、正直東大に進学するメリットは医学部と比較して小さい。
ここまで書いておいて、では何で筆者は東大に進学したのかと聞かれると、正直当時はあまり考えていなかったというのが答えだ。サラリーマン家庭なので医者の人生がどのようなものか想像つかなかったし、当時は東大にどうしても行きたかった。また自分は当時から器具の取り扱いや血に対して苦手意識があったので、何となく医学部は選択肢から外れてしまった。もう少しきちんと自分の人生に向き合うべきであった。同じような後悔を抱えている東大卒は筆者の周りでもかなり多い。
勿論30代の今からでも医学部を目指すことも出来るかもしれない。医者の方が職業寿命が長いので生涯賃金ではそっちの方が上かもしれない。それでもさすがに今から脱サラして医学部に入り直すのはリスクが大きいし、人生が残り何年あるかも分からないのでこの選択肢は取りにくい。20代半ばに戻ることが出来るのであれば、医学部再受験は全然ありだと思う。

最近では東大理一の難易度がうなぎ上りとのことだが、これはファンダメンタルなバリューよりもただ首都圏の一極集中というテクニカルな要因が大きいのではないか。
株式投資で考えるのであれば、東大は万年バブル状態で、本源的な価値からだいぶ離れたところにプライスがついてしまっていると思う。勿論医学部は数年遅れて入っても問題にはならないので、最初に東大に進学し、後から医学部に行くという選択肢もあると思う。それでも最初から医学部に入った方が最短ルートではあると思うので、筆者がもし高校生にアドバイスできるのであれば、医学部の方が無難だと勧めたい。東大はどうしてもAIの研究がしたいとか歴史を究めたいといったこだわりがないのであればそこまでおススメできない。その後の人生が結構ハードモードになってしまう(筆者のように)。

東大を卒業して、こんな年になっても思ってしまうのである。ああ、医学部に行っておけばよかったな。と