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韓国の街並み#05.弘済川の自然美術館と滝〜散歩と美術を同時に楽しめる空間〜

 ソウルの麻浦区マポグ(마포구)、西大門区ソデムング(서대문구)、鐘路区ジョンノグ(종로구)を流れる弘済川ホンジェチョン(홍제천)。

 北漢山ブッカンサン(북한산)を源流とした漢江ハンガン(한강)まで続く川で、散歩するのに調度良い、憩いの川です。


自然美術館(자연미술관)

夏の弘済川の様子

 弘済川の大きな魅力のひとつが、自然美術館ジャヨンミスルグァン(자연미술관)です。弘済川の上には内部循環路ネブスンファンノ(내부순환로)と呼ばれる都市高速道路が走っているのですが、その高架下には世界の名画が飾られています。

 世界の名画を鑑賞できるこの空間は、まさに自然の美術館です。
 ここで、いくつかの作品を抜粋してご紹介したいと思います。

セザンヌ作『りんごとオレンジ』
セザンヌのりんごは落ちないよ。だって、絵なんだもん
ネクラでもドヘンタイでも最高、オレたちのドガ作『緑の衣装をつけた踊り子』
~色褪せたせいで緑というか青い衣装になっちゃってるね~
ミレー作『落穂拾い』
女性たちが落穂を拾うのは、貧困とキリスト教の教えが関係しています
ゴッホ作『夜のカフェテラス』
~ゴッホの黄色は本当に魅力的です。でも、彼の人生を知ると心が痛いですね

 この他にも、スーラ作『グランド・ジャッド島の日曜日の午後』、マネ作『笛を吹く少年』、フェルメール作『真珠の耳飾りの少女』、クリムト作『接吻』、フラゴナール作『ぶらんこ』、ベラスケス作『青いドレスのマルゲリータ王女』などが飾られています。

 ゴロワーズの皆さまにはお馴染みの作品ばかりです。

 また、ここでは海外の作品だけでなく、韓国の近現代名画も鑑賞することができます。

ここから先は韓国の近現代名画が並びます。少々見えにくいですが、後ろにある作品は、韓国抽象美術の第一世代・金煥基(김환기)の作品『10‐VIII-70 #185』です。
同じく金煥基作『梅とハンアリ(매화와 항아리)』
~ハンアリとは壺のこと。韓国の自然と伝統文化が調和された深みのある温かい作品です~
韓国近代美術の大巨匠・李仲燮(이중섭)作『黄牛(황소)』
~韓国ではかなり有名な作品です~

 これらの作品はランダムに飾られているのではなく、西洋画はテーマごとに、韓国近現代名画は作家ごとに分けて展示されています。また、これらの絵画と共に、簡単な解説も見ることができます。

各絵画の紹介とテーマに沿った解説。左は『新印象主義ー後期印象主義』、右は韓国近現代名画の巨匠金煥基に関する解説です。


ドラマ『ボーイフレンド(남자친구)』の撮影


 ひょっとすると、この自然美術館には見覚えがあるという方もいるかもしれません。ここは、2018年に放送された韓国ドラマ『ボーイフレンド(남자친구)』の撮影場所でもあります。 


 以前、弘済川沿いをジョギングしているときに、このドラマの撮影現場に出くわしました。

 ーー突然現れた人だかり。

 どうやら何かの撮影をしているらしいということはすぐに分かりました。そして、折角なので、近くで芸能人を見てみたいという好奇心が発動します。私は「野次馬ではなく、この道を通り抜けたい人」を装いつつ、観衆の中にどんどん入っていきました。すると、スタッフらしき女性が私に近づき「振り返らずに走り抜けてくださいね」と言うのです。

 お! 撮影中だけど走って良いのね。

 ラッキーなんて思いながら、絵の前で話をしている2人の後ろを走り抜けました。ただ、通り過ぎる間は2人のことを絶対に見てはいけないと言われているので、それが誰だったのかは全く分からず、家に帰ってネットで調べてようやく、『ボーイフレンド』の撮影だったことを知ったのです。

ちょうどこの辺りで撮影をしていた気がします。念のため、確認はしていませんが、おそらく私が後ろを走り抜けたシーンは使われていないと思います(笑)


鞍山(안산)の麓にある滝で季節を感じる


 話は弘済川に戻りーー。

 弘済川は全長19km近くもあり、場所によって、その姿を様々に変化させます。その中でも特におすすめなのが、鞍山アンサン(안산)の麓にある滝です。自然美術館の途中にあるため、散歩の途中にゆっくり休むのにも適した場所です。

2,3年前に取った写真です。確か、秋だった気がします。

 ちなみにこれは自然の滝ではなく、人工の滝です。

 手前の広場は季節に合わせて様々な植物が植えられているので、いつ来ても色鮮やかです。

太陽が照らしても、見るからに寒い光景です。

 そんな滝ですが、冬真っただ中の現在はこのように完全に凍っています。

三日月には座って写真を撮れるようになっています。夜になるとオブジェクトはライトアップされるようなので、その様子を見たいと思うのですが、寒いのでなかなか出掛ける気にはなれません。

 不思議なのは、この滝は人口のため冬の間は水が止められているはずなのに、零下の日が続くと、いつの間にかこのような豪快な姿に変わってしまっているのです。止まっているとはいえ、ちょろちょろと少しずつ流れているのかもしれませんが、ここまで迫力のある光景になるのは、何ともすごいとしか言いようがありません。

水が上がる度に現れる虹が素敵です。

  また、この広場には噴水もあります。
 温かい季節には1日に数回、噴水を楽しむことができる憩いの場です。


◆◆◆


 最後にもう一枚ーー。

素敵な親子。昔話が始まりそうな光景です。

 今まで見た弘済川の景色の中で、一番好きだったのがこちらです。

 右下に、雪だるまを作っている親子がいます。
 まったくもう・・・。
 可愛いったらありゃしない。

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