本屋

私はスマホやタブレットで電子書籍が読めない。読みづらくて仕方ない。

そんな私のパワースポットは「本屋」である。ネットで本が買える時代になっても、やっぱり本屋には通ってしまう。本屋に入ると何か変なスイッチが入り、何時間でもウロウロできる。しかし、1回行くと5,000円から1万円は使ってしまうので、年金生活予備軍の今は月に1度を限度としている。

コロナ前のオフィス勤務時代、オフィスのあるビルの2階に本屋があった。毎日のように休み時間にはその本屋へ行き、買わないまでも棚の隅から隅まで背表紙のタイトルを眺めて回っていた。

本屋の平置き本を見るだけで世の中のトレンドが分かる。気合の入った本屋だと、新聞各紙の「書評」ページの切り抜きを壁に貼り、評されている本をその下に並べてくれていたりする。

ネットで本が買える時代なので、私も新聞の書評欄で気に入った本があればネットでも注文する。しかし、本屋はまた別の世界なのだ。

本屋へ行けば、自分の興味のない、または思いも寄らなかったテーマの本も並んでいる。今まで読んだことがなかったテーマのコーナーの本の背表紙デザインに魅かれていわゆる「ジャケ買い」した本も何冊かある。「フォレストガンプ」風に言うなら、本屋はチョコレートボックスなのだ。色々なフレーバーのチョコレートが入っていて、食わず嫌いだったけど食べてみたら美味しくて、お気に入りになった、なんていうこともある。この瞬間、自分の味覚の幅が広がる。

本屋で背表紙に魅せられて買ってしまった興味の範囲外の本でも、それまで持ち合わせていなかった自分の知見や教養を広げるのに大いに役立つのである。

味覚や興味の幅が広がることほど、人生においてエキサイティングなことは無い。

他方、ネットでとあるテーマの本を購入すると、「○○を購入したあなたにお勧めの本」と同じような題材の本をご丁寧におすすめしてくる。結局同じ題材・ジャンルの本ばかりをオススメされて、うんざりする。あれでは知見も興味の幅も広がらない。本当に賢い人工知能なら、「あなたは○○を購入しました、この本なんてどうでしょう?」と全く方向違いのジャンルの本をお勧めしてみろ、と思う。

とまあこんな具合で、本棚を整理して「多分一生読まない」本をブックオフに持って行っても、また新しい本が増えてしまう。

もう残りの人生少ないのに、今ある蔵書を2度3度読む時間があるんだろうか・・・と心配になるけど、本屋通いはやめられないばばちゃん57歳である。

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