マネジャーの最も大切な仕事
職場での影響がパフォーマンスへ直結する
職場での出来事
(進捗の法則・触媒ファクター・栄養ファクター)
↓
インナーワークライフ
(感情・認識・モチベーション)
↓
パフォーマンス
(創造性・生産性・コミットメント・同僚性)
マネジメントの新常識
グーグルは「アメリカで最も称賛される企業」と「最も働きがいのある企業」のトップ5に同時にランクインした。
そしてその実現の秘訣は、無料の食事でも運動施設でもない。
その秘訣は豊かな“インナーワークライフ”を生み出す環境(ポジティブな「感情」、強い内発的な「モチベーション」、仕事仲間や仕事そのものへの好意的な「認識」を育める状況)を作り上げることだ。
豊かな“インナーワークライフ”とは仕事そのものから得られるものであり、仕事に不随する特典から生じるものではない。
さらに豊かな“インナーワークライフ”は、「創造性」「生産性」「コミットメント」「同僚性」というパフォーマンスの四要素に影響を与える。
つまり、素晴らしいパフォーマンスの秘訣は、才能ある人びとにやりがいのある仕事で成功を収めるための力添えをすることなのだ。
言い換えれば、社員に対する仕事関連の心理的支援は、会社に対するパフォーマンスの支援と同義だということだ。
小さな勝利(と敗北)の力
些細な物事はインナーワークライフに大きな影響を与える。
調査の結果、人が重要でないと考える出来事でさえ、しばしばインナーワークライフへ大きな越境を与えていた。
つまり、小さなポジティブな出来事やネガティブな出来事は、心を上向かせも落ち込ませもするちょっとした「加速装置」なのである。
人のマネジメントにあたっては、小さな出来事にしっかり気を払う必要がある。
更に、この調査による大きな発見は、多くの人々のインナーワークライフは個々の性格に応じてではなく、それぞれが直面する出来事に応じてその時々で大きく変化するということだ。
不快な出来事は基本的に陽気な人の気分さえも落ち込ませる。
インナーワークライフの三大要素
①感情
近年の研究では、感情が創造性や、意思決定や、交渉などを含む様々な職場での行動にポジティブな影響もネガティブな影響も与えることが明らかになっている。
たとえば、ポジティブな感情は問題解決や交渉に優れた柔軟性をもたらす。
②認識
職場で何か気になることが起こったとき、人は状況認識を始める(その出来事の意味を理解しようと努めるのだ)。
特に掴みどころがなかったり不測の出来事である場合、様々な疑問が頭に浮かび上がってくる。
相手が無能なのか?
私が無能なのか?
この仕事に本当に価値があるのだろうか?
誰もが毎日、組織内での自分のバックストーリーに基いて社内の出来事を解釈している。
③モチベーション
モチベーションを少し厳密に言えば、仕事をするかどうかの選択、それに努力を費やそうとする熱意、そしてその努力を続けようとする意欲の組み合わせである。
モチベーションの源水となり得るものは数多く存在するが、職場生活に最も関連するものとして際立った源水が三つある。
一つ目は、外発的動機づけ(何かを手に入れるために何かを行う)
二つ目は、内発的動機づけ(面白い、熱中できるなど)
三つ目は、利他的動機づけ(他人と関わったり他人と助け合いたいという欲求)
インナーワークライフは人間の、感情と認識とモチベーションが一日の中で織りなすダイナミックな相互作用である。
この三つの要素は互いに影響し合い、その人の主観的な体験を形作る。
調査結果から、ポジティブなインナーワークライフが優れたパフォーマンスを引き出すことを示している。
これがインナーライフ効果だ。
私たちのこの調査結果から、プレッシャーや、不安や、不満や、恐れを感じるときの方が社員はより力を発揮すると言うマネージャーは、純粋に間違っているということがわかる。
インナーワークライフを向上させるには
私たちは多数のチームのデータを分析した結果、私たちは「やりがいのある仕事が進捗する」ことこそがインナーワークライフを向上させる最も強力な要因であるという結論に至った。
もし障害が単に仕事の難しさから生じるものであれば、自力であれサポートがあれ、その難題を乗り越え始めるに従ってインナーワークライフはネガティブなものからポジティブなものへと変わっていった。
しかし障害は、マネージャーや仕事仲間がアイディアを切り捨てたり、必要なときに手を貸さなかったり、人の努力を台無しにするなど、他人の振る舞いによって直接的あるいは間接的に引き起こされることが多々あった。
そうした場面では、インナーワークライフをネガティブなものからポジティブなものへ変えるには、「進捗の障害」となるものを取り除くか無効化する必要がある。
インナーワークライフに影響する三大要素
進捗と障害は最も重要な影響要素だが、最高のインナーワークライフと最低インナーワークライフをわけるのはそれだけではない。
進捗と障害ほどに顕著ではないからだが、進捗の法則とこの二つのファクターは共にインナーワークライフに重大な影響を与えている。
①進捗の法則
進捗をサポートし、進捗の障害となるものを取り除くか無効化する。
②触媒ファクター
ある人物やグループによる仕事への直接的なサポートをする。
その他、目標や、リソースや、時間や、自主性や、アイディアの交換や、仕事上の問題対処などに関係するものだ。
③栄養ファクター
人間関係にかかわるもので、人間に直接作用する。
そのファクターには尊重、励まし、慰め、その他社会的あるいは感情的なサポートが含まれる。
インナーワークライフは、職場以外での出来事、たとえば株価の上下や私生活での面倒事など、あらゆる出来事に影響される。
しかし、たいていの場合、インナーワークライフは社内で起こる三つの大きな出来事群を中心に変化するものだ。
人はどうやって進捗したことを知るのか
一つ目は、フィードバックを貰うことだ。
マネージャーや仲間がメンバーに対して彼らの仕事が創造的であるとか技術的に優れたものだと伝えれば、メンバーたちは「進捗」したのだと自信を持つことができる。
しかし興味深いことに、仕事自体からフィードバックを貰う二つ目の道のりの方が望ましい。
もし女性プログラマーが込み入った新しいコードの作成に取り組み、その後コードのテストを繰り返しているとしたら、彼女はコードの欠陥を探るテストを通して、仕事がどれほど「進捗」しいているかを即時かつ完全に把握することになる。
しかし、テストがプログラミング作業とは切り離された場所で行われていたり、別の誰かによって行われる場合、先程のプログラマーはインナーワークライフを瞬時に好転させることはできない。
そこで、ポイントは一連の仕事の中で自分が作業した結果がわかるように各工程をデザインすることだ。
マネージャーにとって最も大切なこと
優秀なマネージャーは各個人とチームが成功する限りにおいて会社が成功すること、そしてそれはマネージャーたちが社員たちの「仕事を絶えずサポートする」ことに重きを置く限りにおいて実現するものだと理解していたのである。
これはいかなるプロジェクトも完了に向けて実際に前進を見せなければならないということではなく、社員たちがいつも「重要な仕事」が「前に進んでいる」という感覚を持ち、マネージャーたちが自分のアイディアを尊重し、やりがいのある何かを成し遂げるサポートをしてくれていると感じることが重要だと主張していた。
気づきは行動への最初のステップだ。
各人のパフォーマンスにとってインナーワークライフがいかに重要であるかを日々知っていくことで、マネージャーとしての自信の仕事や周囲の社員たちの仕事に「敏感」になっていく。
たとえ小さなものであれ、日々の「進捗」が人の一日を最高のものにし得ること。
そしてたとえ小さな障害でも一日を最悪のものにし得ること。
を知ることで、この双方に対するアンテナを研ぎ澄ますことができる。
大多数のマネージャーは、たいてい組織を管理することあるいは社員を管理することがマネジメントだと考えている。
しかしやりがいのある仕事の日々の「進捗」を重視すれば、社員や組織全体の管理は遥かに上手くいくだろう。
『まとめ』
大多数のマネージャーはたいてい組織を管理すること、あるいは社員を管理することがマネジメントだと考えている。
しかし、マネージャーにとって最も大切なのは、「チームや部下にとってやりがいのある仕事が、毎日少しでも“進捗”するよう支援する」ことだ。
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