源信が43歳の頃に完成させた「往生要集」の凄いところは、私たち現代人も戦慄するほどに、そこで描かれている地獄のイメージが生々しいことだ。しかも序文をほんの少し過…
源信は9歳から比叡山で仏道の修行を始め、大変優秀であったことから5年後に得度している。またその翌年、村上天皇により法華八講を説く講師にも選出されて下賜を受けた…
前回、紫式部について書いた。今回noteに書かせていただくのは、彼女と同じ平安時代を生きた僧侶、源信である。ただ源信は紫式部よりもずっと年上者であり、あの「源氏物…
最近、NHKの大河ドラマ「光る君へ」を視聴していて、少し気になる発見があった。それは主人公まひろが、少女時代に遭遇した母の死を思い出し、泣きながら悲嘆するシーン…
「肖像文」というタイトルを掲げてみたものの、元々肖像とは人の外観を表す意味で使われることが多い。特にリアルタイムの今の視点で語ろうとするなら、肖像は外観の印象そ…
神庫阪千東
2024年5月12日 16:41
源信が43歳の頃に完成させた「往生要集」の凄いところは、私たち現代人も戦慄するほどに、そこで描かれている地獄のイメージが生々しいことだ。しかも序文をほんの少し過ぎた辺りから、地獄の解説のオンパレード状態になっていく。これは「往生要集」や、その著者たる源信を知らない人でさえ地獄の存在を再認識するであろう。実際に「往生要集」を読むと、その凄惨な地獄の光景は真に恐ろし過ぎるのだが、それでも私たちの地獄
2024年4月25日 16:28
源信は9歳から比叡山で仏道の修行を始め、大変優秀であったことから5年後に得度している。またその翌年、村上天皇により法華八講を説く講師にも選出されて下賜を受けた。そして賜与の褒美の品を、大和国の故郷で暮らす母親へ送ったところ、意外にも送り返されてしまう。ところがこの源信のエピソードは極めて重要で、ひょっとすると源信の母親は、源信よりも優れた宗教者であった可能性がある。また紫式部は、源信その人よりも
2024年4月20日 17:13
前回、紫式部について書いた。今回noteに書かせていただくのは、彼女と同じ平安時代を生きた僧侶、源信である。ただ源信は紫式部よりもずっと年上者であり、あの「源氏物語」が完成した頃には、もう古希に近い老人であったと思われる。そして興味深いのは「源氏物語」において、この源信をモデルにした登場人物が第三部に現れることだ。それは「横川の僧都」という僧侶で、彼の人物造形には紫式部の仏教観が如実に反映されて
2024年3月26日 19:10
最近、NHKの大河ドラマ「光る君へ」を視聴していて、少し気になる発見があった。それは主人公まひろが、少女時代に遭遇した母の死を思い出し、泣きながら悲嘆するシーンだ。この吉高由里子さん演じるまひろこそ紫式部であり、彼女の熱演も相まって、この偉大な女流作家に抱いていた人物像が、今更ながらに深まった気がする。 ここでまひろは、殺害された母の悲劇に、痛切な自責の念を感じており、もし仮にあの日あの時、
2024年2月20日 16:56
「肖像文」というタイトルを掲げてみたものの、元々肖像とは人の外観を表す意味で使われることが多い。特にリアルタイムの今の視点で語ろうとするなら、肖像は外観の印象そのものになりそうだ。つまり虚実を綯い交ぜにしても、焦点を当てた人の情報量がかなり多く、それ故その人の人物評を書くにしても、あまり想像を働かせる余地が無い気がする。その意味では、古くから歴史に名を残している人々の姿形は曖昧なことこの上ない。ま