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涙腺崩壊『朝顔』がいよいよ最終話をむかえる…

「監察医 朝顔」は、フジテレビ系「月9」で2019年7月期に放送され、続編である第2シリーズが2020年11月から、フジ月9史上初めて2クールで放送されているドラマだ。

(※ネタバレ内容含みます)

原作は香川まさひとによる漫画。
杏林大学医学部名誉教授(法医学)である佐藤喜宣が監修を務めているという。

主演は上野樹里。

原作では1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災で主人公の朝顔が母を亡くした設定となっているが、今回テレビドラマ化するにあたり、2011年3月11日に発生した東日本大震災によって母が行方不明になっているという設定に変更されている。

このドラマは一言で言うと良い意味で『ズルい』。

1クール目から毎回泣かされる。
毎回ずっとだ。
このドラマを観る時は必ず『きっと今日も泣かされるんだよねぇ』と思いながら、少々身構えてしまうほどだ。

テーマが〝震災〟と〝法医学〟という、どちらも重く大切なテーマなので仕方ないのだが、このドラマのおかげで、私の涙腺は崩壊しっぱなしだ。

         ***

そんな重いテーマの中で、一際存在が大きいのが、上野樹里演じる朝顔と、風間俊介演じる桑原真也との間に生まれた女の子、加藤柚凪ちゃん演じる〝つぐみチャン〟だ。

彼女の存在は、そんな重いドラマの一筋の光のようだ。

自然な演技力、むしろ演技ではないと思ってしまうくらいドラマに溶け込んでいる自然なしぐさや台詞の言い回し、それに毎回見るたびに〝にやけてしまう〟ほどの可愛さ。

私の次女はつぐみチャンが好きすぎて、結婚もまだなのに、生まれてくる子には〝つぐみ〟と名付けると明言している。

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ドラマの中で私がずっと引っかかっていたのは、石田ひかり演じる朝顔のお母さん・里子の存在。

なぜなら第8話で、里子と中高時代の同級生、大竹しのぶ演じる奥寺美幸が、店の公衆電話で『里子ちゃん?』と呼びかける意味深なシーンがあったからだ。

ーーえ?生きてるの?
と視聴者の誰もが思っただろう。

美幸もまた夫と娘を震災で亡くしていた。

大竹しのぶが、そのなんとも言えない寂しさで満ちた役を見事に演じていた。

第9話で美幸は、電話しているのではなく、繋がらないとわかっていてもかけたくなってしまう、と朝顔たちに話していたことから、その里子への電話のシーンも、寂しくて仕方ない美幸が里子に、里子の家族のことを報告していたのかも知れない。

実際に岩手県大槌町在住のガーデンデザイナー・佐々木格さんという方が設置した、通信ラインが繋がっていない〝風の電話(または天国に繋がる電話)〟と呼ばれる電話があるらしい。

『死別した従兄弟ともう一度話したい』という想いから、ご自宅のお庭に設置された特別な電話。
映画にもなったこのエピソードは多くの反響を呼び、東日本大震災以降3万人にものぼる人々が訪れているという。

それでも里子は〝実は生きていた!〟なんて展開にならないかしらと、少し期待したりしながら、第17話で遺体の一部が見つかった今でも、なんともやるせない気持ちになったりしている。

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そしてもう一つ気になるのは、時任三郎演じる朝顔の父、万木平の病気だ。

病名は〝アルツハイマー型認知症〟。
これも深いテーマだ。

私は以前病院に勤めており、脳神経内科の〝もの忘れ外来〟にいたこともある。

認知症の患者さんは高齢者の方が殆どなのだが、まれに30~50代の若い人が発症する〝若年性アルツハイマー型認知症〟の方もおられる。

記憶に新しいのが、戸田恵梨香主演のドラマ『大恋愛〜僕を忘れる君と』だ。
このドラマもまた涙腺崩壊の代表作。

認知症患者は不安になると症状が悪化するので、家族や介護者はできるだけ患者の感情を安定させておくように努めないといけない。

認知症特有の行動に対してもきつく叱らないで優しく諭すなど、家族や介護者の協力が必須であるのだが、そうは言っても現実はそんな簡単なものではないと理解している。

〝若年性アルツハイマー型認知症〟であるご主人に、奥様がとても自然に優しく寄り添っておられたご夫婦のことを思い出す。

放送の回を重ねるごとに、朝顔の父の病状も悪化しているような気がしている。

強行犯係の刑事で第一線を走ってきた平。

震災で妻を失い、次は自身が少しずつ記憶が失われていく病気に…。

毎日パソコンに向かい、自分の名前や家族の名前をひとつずつ確認しながら打っている平の姿は、私の胸を苦しくさせる。

一番つらいのはご本人。
それを見守るご家族も同じようにつらく大変なのだ。

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そしてドラマに欠かせないのが、挿入歌『朝顔』。

1クール目から引き続きこの曲が使われていて、このドラマと言えばこの曲であろう。

シンガーソングライターの折坂悠太さんが歌うこの曲は、その優しい声と歌詞とメロディー全てがこのドラマにそっと寄り添い、視聴者の心を包み込んでいる。

主題歌を担当することになった決め手は、何よりも一聴すれば忘れることのできない唯一無二の歌声にあったらしい。
どこか昔から親しんでいたような懐かしさがあり、異国情緒も溢れる新鮮な響きも併せ持ち、さらに老若男女に等しく強く訴えかけるような普遍性を持つ折坂の歌声。それが、主題歌担当に抜擢された理由だったようだ。

この曲、フルで聴くとまた少し違った印象をもつ。是非MVで視聴して頂きたい。

【朝顔】

歌:折坂悠太
作詞:折坂悠太
作曲:折坂悠太

ねえ どこにいたの 窓辺には空白んで
僕につげる 「また巡り逢うよ」と

真新しい街に 海鳴りがきこえて
手を振る誰かが 笑っている

ここに 願う 願う 願う
君が朝を愛するように
ここに 願う 願う 願う
その庭を選び今に咲く、花!

最後に ひとつ 聞きそびれた事
ふと呟いてる「あの日なぜ逢えたの?」

お祭囃子の 人波の向こうで
手招く誰かを 覚えている

ここに 願う 願う 願う
君が朝をおそれぬように
ここに 願う 願う 願う
その窓を選び降り注ぐ

ねえ この辺りも変わったよ
また何処かであがる産声を 待ちわびて

ここに 願う 願う 願う
君が朝を愛するように
ここに 願う 願う 願う
その庭を選び今に咲く

ここに 願う 願う 願う
暗闇に呼んだその名を
胸にきつく抱き 願う
物語は続く この僕に
ほら今に咲く、花!

「色はなんか?」
「群青!淡紅!」
「そりゃ結構」
「そりゃ上々」

         ***

震災と丁寧に丁寧に向き合ったドラマ『監察医 朝顔』。

1話ごとに重要なテーマがあり、それはここに書き切れないほど全て深いテーマであった。

そこが良い意味で『ズルい』のだ。

言い換えるのなら、〝朝顔〟というひとりの女性の人生の中に、1話ごとに違う誰かの人生がぎっしり毎回詰められていて、でもごちゃごちゃしておらず全て繋がっていて。
観ている者へのメッセージもしっかり伝わってきて、なおかつ〝朝顔〟は少しずつ確実に前を向いて歩んでおり、そして強くなっていっている。

         ***

明日はいよいよ最終話。

こっそり礼服を準備していた亡くなった大じぃじ(祖父)や病気が徐々に進行していく父のために、今まで見送ってきた自身の結婚式を挙げると決断し、それを3月11日にしたいと話す朝顔。

予告を観ただけで泣けてくる。
予告でまで泣かすとは…。
本当にズルいドラマである。





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