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Remember

Yさんと初めて会ったのは、新宿にあるレストランのアルバイトだった。当時の私は病気の母を看病するため、会社を退職してアルバイトを始めたのだが、そこで出会ったのがYさんだった。

Yさんはバンドのギターリストとして、プロを目指しているとかで、アルバイトの傍ら朝までバンド活動をしているようだった。

私は私で編集者とライターになる夢を抱いていた。夢を持ちながらアルバイトをしていることに親近感を抱き、アルバイトを辞めた後、Yさんが初めてソロのミュージシャンとして舞台に立つライブに、バイト仲間と見に行ったことを覚えている。

がら空きとまではいかないまでも、ちらほらお客さんがいる中で、緊張気味にシンガーソングライターとして演奏していた姿を、今でも鮮明に思い出すことができる。

やがてメジャーデビューし、発売したアルバムに「将来値打ちがつくかもしれないからサインもらっとこ!」と、バイト仲間とワチャワチャ戯れ、CDにサインをしてもらった。

「そうだよ、売れて値打ちがついちゃうかもしれないよー」と、冗談まじりに笑うYさんに、バイト仲間のA君が「もし、俺が結婚したときは式場で歌ってくれる?」と真剣な顔で聞くと、「当たり前だよー、それくらいしかできないけど」と言って笑った。


そうして時がたつと共に、Yさんはどんどん大きな舞台に立つようになり、有名なミュージシャンやアイドルグループに楽曲を提供するまでになった。

私はそのアイドルグループのライブで、Yさんが作った楽曲を聞いたとき、なんとも言えない感動に襲われ、現実と夢の狭間にいるような気持ちになり、涙が溢れた。その歌を全身に焼き付けるように受け止めた。


さらに時が過ぎ、先日、そのアイドルグループの一人とYさんがラジオで共演し、その歌について話しているのを聞いた。

またもや私は、現実と夢の狭間にいるような気分になり、なんとも言えない高揚感と時の流れをものすごく感じた…。

当たり前だけど、未来って、何が起こるかわからないものだなぁと。想像を越えた未来というものを、プレゼントされた気分だ。

有名になるとかならないとか、メジャーデビューするとかしないとかではなく、好きなことをとことんやり続けてたどり着いた今の場所。

Yさんには、本当に好きなことを夢中になって続けていくと、どうなっていくのかということを傍らで見せてもらった気がする。

そして私も夢を叶え、好きなことをやり続けながら歩む日々だけど、この先の未来がちょっとワクワクするのは、Yさんのおかげかもしれない。


話しは変わるが、私の同級生は、その有名アイドルグループの一人、P君の追っかけをしていた時期があった。その彼の再婚相手がなんと、その同級生の地元の隣の中学のひとつ下の子だと知り、衝撃が走った。

その同級生は地元のお祭りでP君を見かけ、興奮MAX!そりゃそうだ。あんなにも憧れていたアイドルP君が地元のお祭りにいるのだから。

同級生は勇気を出して一緒に写真を撮ってもらっていたけれど、嬉しい反面、とても複雑な気持ちになり、泣いていた。

星よりも遠くに存在していたP君が、まさか身近な相手と結婚していたなんて、そう簡単に受け入れられないのだろう。気持ちはとてもわかる。

私は、この出来事で、またしても時の流れをものすごく感じた。

長く生きていると(と言っても、そこまで長くはないけれど)、このように時の流れを強烈に感じる出来事が増えていく。

年を重ねるということは、自分の人生だけでなく、人の人生も多く見るということでもあるわけで、面白いなぁと思う。

もちろん、面白いなぁと言えない人生もたくさん見てきた。若くして亡くなった友人や知人もたくさんいる。

未来はいつだって見えないものだけど、確実にあるのはは今この瞬間であり、今を生きること…。

どうせなら、こどもの頃のように、好きなことに夢中になって生きていたい。それは独りよがりではなく、彼のように誰かを励まし、力を与えるものになるかもしれない。こんな時代だからこそ。

今と未来にワクワクしていたい。


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