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第6話 違いを認め合うこと

はじめに

おそらく皆さん方は、もう何度も、
たぶん小学生の頃から、道徳の授業などで
お互いの違いを認め合う」ことの大切さを聞かされてきました

私が校長として勤務していた学校でも、
お互いの個性を認め合う、
寛容で懐の深い教育環境の実現を目標に掲げて
日々取り組んでいました

しかし、目標はともかく実際はどうでしょう
頭では理解していても、実践するのは易しくありません

それどころか、現代社会には
差別と偏見に満ちたさまざまな事件が後を絶ちません

今日は、「お互いの違いを認め合う」ことについて
考えてみたいと思います
では、さっそく…

第6話 違いを認め合うこと

 
違いを認めることは
必ずしも「相手が正しいと受け入れること」ではありません

自分と異なる考え方や行動に対して
それを正しいと思おうとすればするほど
自分を押し殺すことになって
息苦しくなってしまうのではないでしょうか

逆に、自分の気持ちや立場を理解してほしいと思っても
相手にうまく伝わらなかったり
理解してもらえなかったりすることはよくあることです

相手に「理解してもらいたい」という思いが強ければ強いほど、
理解されないことへの怒りや悲しみが湧いてきます

自分を大切にすることは決して悪いことではありません
でも、自分の個性を尊重することばかりが重視されると、
それは単に、個人のわがままを助長することに繋がるのではないか
という懸念が生じます

では、どうすればいいのでしょう

重要なのは、私の個性が大切なのと同じくらい
あなたの個性も大切なのだという視点
です
 
新型コロナの影響で
1年延期して開催された夏季オリンピック2020東京大会…
その大会ビジョンの基本コンセプトの一つに掲げられていたのが
多様性と調和」でした

人種、肌の色、性別、性的指向、
言語、宗教、政治、障がいの有無など、
あらゆる面での違いを肯定し、
それらを受け入れて互いに認め合い、
共生社会の実現を目指す大会となるよう、
内外の大きな期待を集めて開催されました

各国のアスリートたちが、競技や交流を通じて
数えきれないほどの感動を与えてくれましたが、
この大会が成功だったかどうかを測る物差しは
そうした感動のシーンだけでなく、
ほかにもさまざまあるはずです

大会後に発覚したスキャンダラスな汚職事件については
ここでは詳しく触れませんが、
とりわけ基本コンセプトの一つであった
多様性と調和」という観点に立って、
私たちは、この大会を通じて少しでも成長できたかどうか、
今こそ胸に手を当てて考えてみる必要がありそうです

私たち一人ひとりが人権感覚を磨き
謙虚に自分を見つめ
他者に敬意を払い
自らの尊厳を大切にしながら
地に足をしっかりと付けて
人生を主体的に歩んでいけるよう
自ら意識改革ができたでしょうか

「この世に誰一人として同じ人間はいません」

だからこそ、若い皆さん方には、
他人との違いに心を悩ませ
無理に自分を変えようとする必要はない
敢えて言いたいのです

他者の考えや立場を
無条件に受け入れる必要もありませんし、
周りに理解してもらえない怒りに
苛立つ必要もありません

あるがままの自分を受け入れ、
「ほかの何者でもない自分」の人生を生きる
ことこそが
違いを認め合うことの第一歩です

私たちは、一人ひとりの存在は小さくても、
皆で支え合って、助け合って、この社会を形成しています

あなたの人生は、一つ一つは小さな、ささやかな人生であっても、
世の中の大きな流れを形づくる大切な人生なのです

そして、あなたの人生がかけがえのないものであるのと同じくらい
あなたの周りの人たちの人生もまたかけがえのないものなのだ
という意識を、常に心に強くもち続けることが大事です

人の命は、この世の中で何よりも重いものです
あなたが放つ命の輝きが、あなた自身の人生を照らすだけでなく、
あなたの周りの誰かの道標となるはずです

あなたが燃やす命の炎が、
あなたの周りの誰かの心をきっと暖めているはずです

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