中小企業におすすめの助成金① キャリアアップ助成金正社員化コース 正社員登用しよう! 前編(注意点まで)
こんにちは。弁護士+大学院生+会社員のlotterです。
この記事は「キャリアアップ助成金正社員化コース」について、主な支給要件や申請の流れ、注意点を解説しています。
後編はそれを踏まえて労働法との関係や活用のコツを書きますので、そちらもぜひ読んでみてください!
長いので、2と3はとりあえず流していただいて。興味があれば再度読んでもらえるとありがたいです。
1.対象の確認(ついでに用語整理)
この助成金は、6か月以上雇用した対象者を、正社員などに登用すること(キャリアアップ転換)と同時に、賃金を5%以上アップさせ、さらに6か月雇用することで受給できるものです。
キャリアアップ助成金には普段の経営とはちょっと違う独特の用語の使い方があり、それを確認しておくことが理解のコツです。支給対象となる労働者を確認することにもなるので、ここで紹介します。種類が多いので、見る気持ちだけください。
要は、
1〜3に該当する労働者(対象労働者)を4〜7に
キャリアアップ転換する
あるいは、1を3にキャリアアップ転換する
これが中身です。ついでに支給額をみてみましょう。
厚生労働省の「キャリアアップ助成金のご案内」という資料から抜粋したものです。<>内は「生産性要件」という支給額が加算される要件を満たした場合の額です。また、()内は中小企業ではない企業に対する支給額です。
この表は先ほどの表よりシンプルですが、それは、
4〜7はすべて「正規」として扱われ、支給額が同じ
だからです。つまり、支給額がいくらになるかは、無期契約労働者(3)が絡むかどうかで決まるということです。
無期契約労働者(3)は、待遇が正社員よりも低いため、有期契約労働者(1)から転換させても半分しか支給されません。また、待遇が正社員より低いので対象にはなりますが、契約期間に決まりがないという点で正社員に近く、正規(4〜7)に転換させてもやはり半分しか支給されません。
すでになんかややこしくて罠っぽいですよね?こりずにまだお付き合いください・・・
2.支給要件(主なもの)
では、以上を踏まえて、主な支給要件を見てみましょう。ここも気持ちだけで。
1 対象となる労働者を通算6か月以上雇用していること
→有期の場合、雇用期間の通算が3年以内であること
2 キャリアアップ転換制度を就業規則等に記載すること
→面接試験や筆記試験等の適切な手続き、要件(※)および転換時期が明示されているものに限る。
※勤続年数、人事評価結果、所属長の推薦等の
客観的に確認可能な要件・基準等を設定する必要あり
※年齢制限や勤続年数の上限設定(例えば「勤続○年
未満」)などにより転換の対象を限定するとNG
3 キャリアアップ転換の実施
4 キャリアアップ転換後6か月以上の期間継続して
雇用し、転換後6か月分の賃金を支払うこと
5 キャリアアップ転換後6か月間の賃金を、転換前
6か月の賃金よりも5%以上増額させていること
→原則1時間単価で比較する
6 キャリアアップ転換後の賃金月額が、転換前より
低下していないこと
→時給制・日給制の場合は時間単価で比較する
7 キャリアアップ転換日の前後6か月間に、
労働者を解雇したりしていないこと
8 キャリアアップ計画書を作成し、労働局に
提出していること
8ステップ!・・・長い!
3.申請の流れ(ベーシック)
1 キャリアップ計画書の作成・労働局への提出(窓口)
↓
2 キャリアアップ制度の条文を就業規則に記載する(自社)
※正社員転換する前まで
↓
3 対象者(6か月以上雇用した後)をキャリアアップ転換させ、賃金を上げる(自社)
↓
4 さらに6か月間雇用・増額後の賃金支給(自社)
↓
5 支給申請(窓口)
※転換後賃金を6か月分支給した日の翌日から
2か月以内
4.罠
(1)キャリアアップ計画書は必須だけど内容はわりと適当でいい
助成金をもらうためには、まず、キャリアアップ計画書という書面を作成する必要があります。これは、法律上義務付けられているものではありませんが、助成金のためには必須です。
キャリアアップ助成金のパンフレットを見ると、「ガイドラインに沿って計画を作成すること」とあり、いかにも重そう・・・。
しかし、キャリアアップ計画書を「作成するだけ」であれば、
・「キャリアアップ管理者」を決める
→特に資格は不要
・労働者の代表から意見を聴く
ぐらいで、あとは書式を埋めていけばできてしまいます。記載例もあります。この段階を調査されたり指導されたりという話も聞きません。書いたことが実現できなくても、要件に関わるところさえクリアしていれば影響なしです。
つまり、キャリアアップ計画書は厳格には考えられていないということです。これが罠その1。
(2)「正規雇用労働者(④〜⑦)にする約束」で雇うと対象外
これは、例えば、「6か月後に正社員にするけど、とりあえず有期で」みたいなものが典型例です。聞くからに不正の匂いがプンプンして、それはさすがに・・・となると思いますが、労働法では使用期間との関係で少し複雑な点があります。罠その2です。
(3)賃金の5%アップ
正社員になったら5%ぐらいあがるよ!というのが一般的かなと思います。ただ、ギリギリかもしれない・・・という場合は注意が必要です。なぜなら、手当や賞与の内容によっては「計算に入れられない」ものがあるからです。最後の罠3です。
いかがだったでしょうか。この助成金はポピュラーで、結構使われています。でも、基本的な部分だけでも複雑でややこしかったと思います。使いこなすのは難しい・・・そして無機質!おもしろくない!
それなのに、最後までお読みいただきありがとうございました。
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では、また。
よろしければこちらの記事も(助成金の公式ページも載せています。申請の際にはそちらを)。
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