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UNTITLED REVIEW

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題名を記さない読書感想文です。本のタイトルに繋がるタグも付いていません。扉の鍵を傍に置いています。
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記事一覧

UNTITLED REVIEW|白いものたちの

雪深いまちで一度だけ冬を越したことがある。確かに現在いる場所にも雪は降る。でも、夜半過ぎ…

Lotos-Eaters
2か月前
9

UNTITLED REVIEW|訳者で本を選ぶ

以前から韓国文学というジャンルが気になってはいたものの、書店の新刊コーナーで面陳列されて…

Lotos-Eaters
2か月前
6

UNTITLED REVIEW|夢想或いは予感

村上春樹氏がこの小説を訳さなければと思ったのは2010年のことらしい。ご自身の手がけた日…

Lotos-Eaters
3か月前
12

UNTITLED REVIEW|画一化する世界

この小説に関するレビューをウェブ検索してみると、これまで崇高なものと信じて疑わなかった多…

Lotos-Eaters
6か月前
12

UNTITLED REVIEW|企業人のパトス

これまでも「定年退職」という言葉を漠然とイメージすることはあった。だが自分の定年退職を明…

Lotos-Eaters
6か月前
8

UNTITLED REVIEW|無情の写実主義

市内を縦断する鉄道の終端駅からほど近い場所に樹齢数百年とも言われる原生林の森に抱かれた神…

Lotos-Eaters
9か月前
8

UNTITLED REVIEW|単純化の果てに

人間関係のもち方に関する知見を得た。きっかけは社内会議の中で、とあるゼネラルマネージャーが使った「アサーション」という耳慣れないワードへの見識を深めようと買った本だった。今回その言葉に関する書籍を全部で三冊読んだが、その中でも本書は研修やトレーニングの基礎テキストとして使用されるだけあって、内容の詳しさや網羅性において最もすぐれていた。なお、いずれの本もアサーションという言葉を初めて日本に紹介した臨床心理士の平木典子さんが執筆している。 *ビジネスの場で重視されるのは効率や

UNTITLED REVIEW|似て非なるもの

文庫本に換算すると数ページ程度にまとめたことになるビジネス書1冊分の要約を、約三千冊の中…

Lotos-Eaters
11か月前
7

UNTITLED REVIEW|雨降る日の短編

太陽の光をプリズムに通せば七色の虹に分かれるということを小学校の理科の授業で教わった。も…

Lotos-Eaters
1年前
10

UNTITLED REVIEW|言葉を侮る勿れ

フィクションの中に潜むメタファーやアイロニーから示唆を得るのではなく、もっと端的に、さら…

Lotos-Eaters
1年前
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UNTITLED REVIEW|本は異端を魅す

いつもよりも乗り降りする人が少なく感じる最寄り駅のホームに降り立った時、誰かの視線のよう…

Lotos-Eaters
1年前
7

UNTITLED REVIEW|カルエルの苦悩

ギフテッドと呼ばれる生まれながらにして秀でた才能を持つ子供たちの、自分を抑圧して生きる苦…

Lotos-Eaters
1年前
10

UNTITLED REVIEW|ホヤガラスの炎

その短い物語を読み終えたとき、朝の通勤電車の車内で周囲の目も憚らずはしゃぎながら携帯ゲー…

Lotos-Eaters
1年前
8

UNTITLED REVIEW|不可視の境界線

街の胎動が始まる前の早朝を思わせる静かな物語の書き出し。そして、輻射熱を浴びたときのように身体の芯からゆっくりと湧き上がる暖かで満ち足りた読後感。デビュー作にして第二回京都文学賞受賞作品でもあるその短編に僕は魅せられてしまった。 カタカナで記された作者名を見て、繊細な文章表現に長けた訳者の手により和訳されたとの思考の前提に立って読み進めていたが、実は日本語を母語としない作者自らが綴ったものだったと読了後に知ったときは大層驚いたものだ。ただ、最初に日本語で完読された長編小説が