見出し画像

タコス警察メキシコ研修編② カルニータス

日々、日本の平和を守る我々タコス警察。
本場の感覚を養うため、メキシコシティの外れ、隣町のエカテペクに研修にやってきた。


エカテペクはメキシコシティのベッドタウン。メトロB線が伸び、その両脇には延々と住宅地が続く。
しかし、それでもタコスはある。いや、中心部のチェーン店や安いだけの屋台に比べたら、むしろ比較的低所得な層が居住するエカテペクにおいて真のタコスを見つけることができるのかもしれない。


こちらが今回の研修先だ。名をCarnitas The Bananos and Johnと言う。

実はこの店、日曜日だけにオープンする隠れた名店なのだ。店主は普段はタクシー運転手だが、イベントでのケータリングと日曜日だけはタコス屋を開く。
というのも、日曜日には隣道でティアンギスと呼ばれる街路市が開催される。普段何もない住宅地に突如現れる賑わいの中心地に、地元の人々が流れ込むのだ。詳しくは筆者の修士論文を参照されたい。

準備はまだ夜の明けない朝5時から始まる。車で30分ほどの距離にある肉市場に買い出しに行くのだ。様々な部位の豚肉を買い集め、帰路につく。

さあ、調理だ。まずは大鍋に大量のラードを注ぎ込む。ラードが溶けたら内臓などの調理時間の長い部位から順番に加えていく。味付けは塩、にんにく、ローリエ、オレンジと、実にシンプルだ。

大事なのが攪拌作業だ。特に最初は肉が底面にこびり付きやすく、すぐに焦げてしまう。この焦げが苦味を産み、全体のバランスを崩してしまうのだ。

ここからは、ひたすら3時間、鍋の中身を混ぜ続ける。



ここで余談だが、カルニータスには地域ごとに特色がある。また、最近ではコカコーラを入れたりするけしからん奴らもいるそうだ。本場メキシコでもタコス警察は大忙しである。



さあ、完成だ。

何時間も肉汁で煮込まれた肉たちは、客の好みに応じてブレンドされる。組み合わせは自由だが、いわゆる「肉」であるmaciza(赤身。ロースやもも肉)やcostilla(リブ)の他、弾力のある内臓系と脂身のcueroを少し入れるのがコツだ。

注文すると、肉塊が豪快に切り刻まれる。タコス職人の一番の見せ場だ。

さあ、できた。

長時間ラードと肉汁で煮込まれた赤身はジューシーで柔らかい。そこに内臓系の食感と独特の風味が加わり、さらに脂身が乱暴に旨味を加える。遺伝子レベルでお代わりしてしまう味だ。


やはり、さすがは本場メキシコシティ(大都市圏)のタコス。これこそ、我々の求めている味だ。


恐れ入った。だが任せてくれ。日本のタコスの平和は、我々タコス警察が守る。


今日のタコス屋

Carnitas The Bananos and John
Calle Aries No. 2A, Col. Izcalli Sta Clara, Ecatepec, Mexico, Mexico
日曜日のみ営業。おおよそ10〜16時。イベントケータリングも可。

おすすめのメニュー

筆者の好みはコスティージャ(リブ)、ブチェ(胃袋)、クエロ(脂身)のスルティーダ(ミックス)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?