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【随想】『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』
を読んだ。

Yahoo!ニュース|本屋大賞 2019年ノンフィクション本大賞の受賞作だそう。

2018年 『極夜行』角幡唯介
2019年 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ
2020年 『エンド・オブ・ライフ』佐々涼子
2021年 『海をあげる』上間陽子
2022年 『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』川内有緒

英国在住の著者が、
現地の元底辺中学校へと通う息子との日々(1年半の出来事)を綴った珠玉のエッセイ。

構成がいいなと思ったのは、
息子がノートの端に「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」と書いた時の話。
ざわっと心が騒いだ。

それと、リアーナという少女を水泳大会で見かける話。
序盤に出てきて、印象的に描かれるから、
あとで絶対出てくるのだろうと読んでいたら、案の定だった。

泣いたのは、友達のティムに服をあげるところ。
あそこの会話は、フィクションには太刀打ちできない。
立派すぎるだろう息子よ。

あんな歳に、あんな考えたり、配慮できていただろうか。
自分は。

他にも興味深い話はいっぱいあった。

プールのこちら側とあちら側で露骨に格差が生まれる話や、
何気ない会話から、アフリカ移民のお母さんの地雷を踏んでしまう話、
口の悪いダニエルと学園祭のミュージカルを通して仲良くなる話、
行方不明になった知り合いの女の子の従弟のお母さんとスーパーで遭遇する話、
大雪の日に、路上生活者のためのボランティアに親子で参加する話、
LGBTQの話を友達同士でする際、オリバーが自分はまだ分からないと打ち明けた話、
地元福岡のDVDレンタルショップで、会員証を作るのに本人確認ができなくて疑われる話、
生徒会長の中国人の先輩が、少数派として仲間意識を抱いて助けてくれる話、
日本で息子が、アイルランド人と日本人の子供として周りからなんて呼ばれるかの話、
学校の決まりでデモに参加できなかった恨みをバンドの歌詞にする話、
ダニエルとクイーンの伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』を観に行く話など。

Nothing really matters
Anyone can see
Nothing really matters
Nothing really matters to me
Any way the wind blows

クイーン『ボヘミアン・ラプソディー』

それにしても、活字を通して行ったことのないイギリスの生活を
こんなにも違和感なくイメージできるとは驚いた。

遠い世界の出来事ではない。
同じように、人が暮らし、様々な問題を抱え、成長している。

インターネットやテレビによって、
海外の情報は手に入りやすくなっているとは言うものの、
実際にそこに住んでいる当事者としての日常は、
主体的に知ろうとしなければ、なかなか縁遠いものがある。

「頭が悪いってことと無知ってことは違うから。知らないことは、知るときが来れば、その人は無知ではなくなる」

この本を読むことで、
少しまた知ることができたことは、幸いなことである。


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