小説家の連載 ミッション・ニャンポッシブル 第五話

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(登場猫物紹介はこちら↑)

第五話

深夜。
 飼い主夫妻と一緒に寝ていた令は、鰹節を食べて満腹になる夢を見ていた。いつもは夜更かしな飼い主二号が、珍しく夫と一緒に早い時間に就寝したので、令も彼らと一緒に寝ていたのだ。佐々木家はベッドではなく、二組の布団を敷いて寝ている。令は飼い主二号の布団にもぐりこんで寝ていた。死ぬほど寝相の悪い夏葉が今日は大人しく、令も安心して寝ていられた。が、しかし安眠していた猫を起こす者が居た。首輪の通信機から声がする。犬より二倍も耳がいい猫、その猫の耳でぎりぎり聞こえる音量の声がする。ごん太が微かに何かささやいているのだ。
「・・・ちゃん、令ちゃん、聞こえてへんか?」
 令はその声を聞いて目が覚めた。のそのそと布団から抜け出す。飼い主二号は寝息を立てて寝ていたが、あまりにも静かだ。静かすぎて息をしていないんじゃないかとさえ思うが、ちゃんと呼吸している。すっぴんなのに、鼻が高くて濃い顔をしている夏葉は、隣で寝ている譲とは顔面の作りが違い過ぎる。
「ママとパパ、よく結婚できたにゃ」
 と呟きながら、開けっ放しのドアを通って令はリビングへ移動した。令のためにドアストッパーをつけて、ドアを開けっぱなしにしているのである。ついでに餌を食べて水を飲み、猫用トイレで用を足す。
 ようやく首輪に向かって話しかけた。
「ごめんにゃ。ちょっと、夢を見てて。ごん太、今日もまた任務にゃ?」
「すまんな、令ちゃん。わいも起こす気は無かったんやけど・・・アルファがちょっと手伝うて欲しいみたいでな」
「アルファが?」
 CATのメカ担当、アルファは福岡に住んでいる。任務に必要な道具を作っているアルファは戦闘担当の猫である令と違って実戦には参加しない。保護猫カフェファミーユからの幼馴染だから仲は良いけど、普段はほとんど会う事は無いのだ。
「でも、私、メカの事はほとんど判らないにゃ」
「うん、そう言うたんやけどな、どうも・・・メカ作りに使う部品が足りひんみたいでな、アルファはそういう・・・こそっと部品盗んでくるとかはできんから、令ちゃんにサポートしてもらいたいそや」
「うーんにゃ」
 ぶっちゃけ言うと、令は戦闘担当の猫なだけあって、戦うのが好きだ。敵(人間)を思いっきりぶちのめすのが好きだしストレス発散になる。普段飼い主の前で甘えん坊ないい子ちゃんを演じるのもなかなか大変なのだ。だから、戦うとかじゃなく、今回みたいな・・・潜入だけして戦わないのは、好きじゃない。
 まあ、でも、実は戦うかもしれないし。部品を盗みに行った先で、人間と戦うかもしれないし。それに何より、アルファは幼馴染だ。普段任務では会えない分、いろいろ話す事も沢山ある。
「判ったにゃ。今から向かうにゃ」
「ほんま助かるわー。おおきに」
 通話が終わった後、令は任務に出る準備を開始した。猫の視力は悪いが、暗闇ではよく見える。手探りで任務に使う道具を探す。キャットタワーの隅っこに隠しておいたカラフルゴーグルや、麻酔銃のついたベルトを身に着ける。ねずみのおもちゃは、ぶん投げれば猫用ジェットの形に早変わり。窓を開けてジェットを外に出し、もう一度窓を閉めて証拠隠滅。ジェットに乗って、いざ出発! 
 アルファが住んでいるのは福岡だから、すずの住んでいる東京に向かうよりは近い。トムの居る北海道よりもだ。って事は、前回、タレント猫の仕事のために山口に行ったトムってすごいにゃ・・・・。
 福岡の有名なものと言えば、明太子。夏葉は明太子が大好物だった。独身時代の彼女が会社勤めをしていた頃は、低血圧故に毎朝起きるのが地獄みたいに辛くて、会社へ行く前のご褒美に毎朝明太子を食べていたぐらいの大好物。しかし猫が明太子を買って帰る訳にもいかない。いくら大好きなママのためとは言え。
 しばらくジェットを運転していると、福岡県上空に到達した。そのまま運転して、アルファの自宅へ。工学部の教授に飼われているアルファは、少し広めの一軒家に住んでいる。
 家が近付くと、アルファが二階の窓から手を振っているのが見えた。令は急降下し、空いた窓から着陸。すぐにジェットを降りて、元のねずみ型おもちゃに戻す。
 二足歩行のアルファが駆け寄ってきて、令にハグをする。令もハグをした。猫達が後ろ足で立って人間のようにハグをしている。
「アルファ、久しぶりにゃ!」
 アルファは令と違って短毛の、灰色猫だ。毛が短いのであまりもふもふはしない。
「令ちゃん、久しぶりにゃ。相変わらず毛が長いにゃ・・・」
 幼馴染は彼女の毛に顔をうずめて、もふもふ具合を楽しんだ。
「僕は任務に出ないから、令ちゃんとはなかなか会えないからね。でもこうして会えて嬉しいにゃ。いつも任務で暴れてるってごん太から聞いたにゃ」
「もう、ごん太ったら、余計な事しゃべるにゃ」
 自分の一面をばらされて、令は恥ずかしがる。可愛い猫とは言え、彼女の強さはジェイソンステイサム並みなのだ。抜群の身体能力でばったばったと敵をぶん殴ってやっつける。彼女の戦闘能力の高さは全国の猫の間で知れ渡っている程。その辺の野良猫でさえ、令の噂を聞いた事があるレベルなのである。
 再会を喜んだ後は、ここに呼ばれた訳を尋ねる。
「でも、アルファ、どうして今日呼んだにゃ?メカ作りに必要な部品は、本部から支給されてる筈にゃ。部品が足りなくなったの?でもアルファの才能なら、そんな筈無いにゃ」
 令の問いかけに、アルファは暗い顔になる。
「それが・・・実は、隠しておいた部品が、その・・・パパさんに見つかってしまったのにゃ」
「えええ?!それは一大事にゃ!」
 驚く令。アルファの言うパパさんとは、飼い主の教授である。五十代後半の飼い主はとても温厚で、大学でも学生達から尊敬されているらしい。
「見つかったってどういう事?いつも隠している筈にゃ」
「そうにゃんだけど・・・ちょっと来てにゃ」
 二階の窓辺で話していた二人は、部屋の中央へ移動する。本棚等や学習机等があるこの部屋は、子供が使っていそうな部屋だ。
「この部屋は、元々お姉ちゃんの部屋だったにゃ。パパさんとママさんの一人娘で、僕の人間のお姉ちゃん。お姉ちゃんがずっと使ってたけど、今は海外の大学へ行っていて、居ないにゃ。長期休暇の間もちょっとしか日本に帰ってこないから。それで僕、この部屋の押し入れで主にメカを作ってるんだけど」
 アルファが押し入れを開けると、押し入れの上部、天井のところに穴が開いていた。アルファは穴に向かって進む。令も後に続く。穴から顔を出すと、そこは屋根裏だった。屋根裏はキレイで、子供の古いおもちゃなどが散乱している以外は、何も無い。
「僕、ここで研究してるにゃ」
「研究って・・・何も無いにゃ」
 するとアルファは壁にある小さなレバーを押した。すると。
「にゃにこれ?!」
 ウィーンと小さな音がして、猫一匹が入れる大きさの、子供のおもちゃの家のような、小さな建物が何処からともなく出現した。アルファはドアを開けて入る。令も後に続いた。中は電気がついていて明るい。そう、そこはアルファの研究室だったのだ。机の上には猫用ジェットやカラフルゴーグル等の既に完成した道具や、今作りかけであろう様々な道具が転がっていた。部品もある。これで足りないのだろうか?
「アルファ!すごい、この研究室!これがパパさんに見つかったの?」
「いや、違うにゃ。この前屋根裏に居たら、パパさんが人間用の階段を通って突然屋根裏に来る足音がしたから、急いで研究室を片付けたにゃ。この研究室は、レバーをもう一度引いたら瞬時に折りたたまれて、天井と同じ茶色に同化するようにできてるんだけど、こないだ研究室を片付けた時に、慌ててたから、部品のねじとかがぼろぼろこぼれてしまったにゃ。パパさんが来た時、僕が居るのには不審に思って無かったけど、その代わり落ちてきた部品が見つかってしまって、何処かに持っていかれたにゃ。多分、パパさんの研究に使われたんだと思うにゃ」
「そ、それは災難だったにゃ・・・」
「すぐに本部に連絡したけど、みたらしちゃんによると、今僕が開発中の道具を作るのに既に莫大なお金をかけて材料費とかいろいろくれたから、これ以上の補填は無理だってにゃ。その変わり、ごん太を通じて、令ちゃんを派遣して道具とかを盗んでもらうからって言ってもらえたから、今日来てもらったにゃ。この近くに工場があって、ねじとか無限にあるから、そこから盗んできてくれる?」
「了解にゃ!」
 話を聞いた令は、気の毒なアルファのために人肌脱ぐ事にした。
 すぐに猫用ジェットに乗って、工場へ向かう。
 工場は近かった。今日は夜勤の従業員が居ないのだろうか?工場は人気が無い。猫用ジェットで工場内を回っていると、ねじや釘などが無限に積まれた部屋を発見した。
「完璧にゃ!」
 令は巾着型の袋を取り出して、そこに入れられるだけねじや釘を詰めた。巾着をジェットの機体にくくりつけて、そして再びアルファ宅へ。
 戻ると、アルファはとても感謝してくれたが、これではまだ足りないと言う。
「ほんと申し訳ないにゃ、令ちゃん。また行ってきてくれる?」
「了解にゃ!」
 こうして、令は工場とアルファ宅を何度も行き来した。いつものように派手なアクションの一切無い、部品を届けるだけの任務。全部終わる頃には、猫特有の気まぐれさで飽きていた。
 全部運び終わってくたくたな令をアルファはねぎらい、お茶でも飲んで行かないかと誘った。
「体にいい猫用のお茶をみたらしからもらったから、飲んでいくにゃ?」
「ありがたいにゃ。そうしようにゃ。」
 こうして、令とアルファは、研究室のデスクの上をさっと片づけて、アルファが入れてくれたお茶を、椅子に座って飲んだ。久しぶりに会った幼馴染二人、会えば話に花も咲く。
「それにしても楽しいにゃ、前にアルファと会った時は・・・」
 と令が言った時、アルファが何かの音を聞いたらしく、険しい顔になった。
「アルファ?」
 アルファは研究所内にあるレバーを引いた。それは潜望鏡だった。
「アルファ、潜望鏡まで作ったのにゃ?!」
「令ちゃん、これはまずいにゃ」
 驚く令を無視して、彼は令に潜望鏡を覗くよう指示した。彼女が覗くと、そこはアルファ宅の門前を映していた。自宅の前には、折りたたみ式の一メートルほどの簡易な門がある。今は閉まっているが、人間の大人なら頑張れば乗り越えられる高さだろう。そこに、一人の若者が居た。金髪に近いぐらい明るい茶髪で、レザージャケット、明らかにチャラい感じの若者である。彼はしかめ面で、何かぶつくさ言っていた。そして、門を乗り越えたのである。庭を通って、家に侵入しようとしているではないか!
「え、アルファ!大変にゃ!あの人は何?」
 アルファはこんな状況でもめちゃくちゃ落ち着いている。
「多分、パパさんの教えてる学生の一人にゃ。ここはパパさんの勤務先の大学から近いから、きっと調べたにゃ」
「そうなの?でも、どうしてそんな事を。パパさんに用があるなら、昼間に来ればいいにゃ」
「令ちゃん、教師っていう立場は、時々学生から理不尽な逆恨みを買う事があるにゃ。今回の学生がどういう気持ちかは判らないけど、もしかすると夜忍び込んで、期末試験の答案を盗み見ようとしたのかも。パパさんは自宅に研究を持ち帰る事も多いから。今、パパさんは学会発表で東京に行っていていにゃいから、そこを狙われたにゃ。でも、これはまずい・・・今、家にはママさんしかいにゃいにゃ。ママさんは一回寝たら絶対に起きないから、ママさんがピンチにゃ」
「じゃあ、令がママさんを守るにゃ!こんな時こそ、令の出番にゃ!」
 待ってましたと言わんばかりに、令がファイティングポーズをとる。しかしアルファは令を宥めた。
「まあまあ、落ち着くにゃ。今回の相手は血気盛んな若者にゃ。落ち着いて行動しにゃいと」
「でも、このままじゃママさんが危ないにゃ!」
 一瞬考え込んだアルファは、机の上を見て、にやりと笑った。
「遂に、あれを使う時が来たにゃ」

 若者は一階の窓を割って侵入するが、家の中は誰も居ないのか、静まり返っていて、人気が無い。
「クッソ、あのじじい、俺の単位落としやがって」
 温厚で人気な教授だが、不真面目な学生には厳しい。彼も不真面目過ぎて単位を落とされた大学生の一人で、逆恨みしている。教授宅は大学から近い事で有名だった。何度か教授の後をつけた事があって家が判ったのだ。学会で居ない事は調査済みだ。憂さ晴らしに侵入し、ついでに持ち出されたら困る研究資料等を盗んでやろうと思ったのだ。教授はセキュリティ等に疎いらしいので、奥さん一人の時ならいけるだろうと判断した。
「俺の恨み、晴らしてやるぜ」
 ぶつぶつ言いながら、一応玄関では靴を脱ぎ、自宅に侵入する。
「クッソ、じじい、こんないい家に住みやがって」
 一階を見渡したが、リビングやお風呂場等、生活に必要な場所しか無い。夫婦の寝室もあり、覗くと教授の奥さんらしき人がいびきをかいて寝ているだけ。研究に必要な道具らしいものは見当たらない。
「おばさんしかいねえのかよ」
 文句たらたらで、二階への階段を上る。二階は二部屋しか無かった。あとは上に続く階段があるだけ。屋根裏部屋にでも行くのだろうか?まあ若者には関係無い。一つは昔子供部屋だったであろう、本棚や学習机がある。
「そう言えばじじい、娘がいるとか言ってたな。けっ、大学教授の娘だから海外の大学へ行けたのかな。どうせコネだろ、コネ」
 悪態を突きつつ、もう一つの部屋を見る。
 遂に教授の書斎兼研究室を発見した。
「やったぜ!」
 ずらりと並んだ専門書の詰まった本棚、机の上には論文の山、もう一つのデスクの上には何やら作りかけのメカが・・・。大学一年生の彼にはまだまだ判らない難しいものばかり。
「よくわかんねえけど、これもらっていくか」
 重要と書かれた分厚いファイルの中には、難しそうな紙束が無造作に入れられている。本のような一枚一枚入れるタイプのファイルではなく、学生が使うクリアファイルの中にざっくりそのまま入れられているのだ。
「ざまあ、じいさん」
 そう言って彼が部屋を出ていこうとして振り返ると、衝撃の光景がそこには広がっていた。
「え、猫?!え、な、何?!」
 彼の前には、全身ふっさふさの黒猫がファイティングポーズの構えで立っていた。しかも後ろ足で立っていて、腰には銃みたいなのをつけてるし、顔には謎のゴーグル、そしてファイティングポーズを取っている手は、よく見たら腰に下げているのとは別の銃を構えているではないか。
 黒猫の後ろには、短毛の灰色猫がこれまた後ろ足で立っていて、同じゴーグルをつけている。こちらはボーガンのようなものを突き付けているではないか!
「な、な、な!」
 若者はびっくりして思わず尻餅をついた。
「お前を仕留めるにゃー!」
 令はそう叫んで銃の引き金を引いた。魚の形をした弾が出てくるが、若者が瞬時に避けたので外れ、空中で爆発した。
「わ、何だ!」
 若者はびっくりして立ち上がり、令に向かって蹴りを入れるが、スーパーエージェントの令が避けられない訳が無い。令は蹴りを避けた後、今度はジャンプし、彼の頬に向かって自分がキックをお見舞いした。
「ぐはっ!」
 痛さに相手が叫ぶ。
「思い知ったかにゃ!」
 令が叫ぶが、相手からはにゃーにゃーと言っているようにしか聞こえない。
「な、何だこの化け猫!」
 令はもう一度銃を発射するが、若者はまたもや軽い身のこなしで避けた。しぶといやつにゃ。
 令が持っている新しい銃は、アルファが作っている試作品で、上手くいけば新しい武器として配られる予定のものだ。銃からは魚の形をした弾が出てきて、これに当たったものはただちに眠ってしまう。名前はまたたび爆弾銃。弾にはまたたびの成分が入っていて、元々またたびで酔っ払うのは猫だけだが、アルファが何とか改良して、人間と戦う時のために、人間にだけ効果があるように作ったものだ。アルファが構えているボーガンは、このまたたび爆弾銃のボーガンバージョン。これも試作品で、接近戦でも遠くからでも使える高性能な武器。
 しかし健康な若者を倒すには両方をもってしても難しいのだろうか?
「アルファ、敵が強すぎるにゃ!」
 仲間に助けを求める令。するとアルファは落ち着き払って、もう一つマントを取り出した。
「令ちゃん、これを着るにゃ!」
「これは?」
「いいから早く!」
 急かされて令がそのマントを着ると、たちまち令は恨みたっぷりな化け猫そっくりな恐ろしい姿に変身。それを着て若者の方を振り向くと、
「うわあああああああああ!!!」
 彼は化け猫の姿を見て絶叫した。
「アルファ、これも試作品?」
「そうにゃ。これは化け猫マントと言って、効果は見たら判るにゃ」
「化け猫だあああああああ!!」
 怯えて叫び散らかす若者。令は今だと銃を構えた。しかし弾は若者の足に当たったので、眠る程ではない。
「うわあああああ!」
 それでも足に弾が当たったので、猫に打ち殺されると思いパニックになった若者は青い顔でがくがく震えている。
「もうこれで終わりにゃ!」
 アルファが自分のボーガンを構え、弓で射った。弾はまっすぐ若者の顔に当たり、その瞬間若者の顔には刺さらずに爆発。またたびの煙を吸った若者は、あっという間に気絶してしまったのだった。

 その後、令とアルファは気絶した若者を教授宅から近くの公園へ猫用ジェットで運んで放置した。若者が割った窓も修理して、跡形も無かったようにして、痕跡をすべて消したのだ。若者を人間の警察に突き出しても良かったのだが、まあまだ若いし、これだけ脅かせば反省するだろうと思ったからだ。ごん太にはその判断が甘いとぶつくさ言われたが、まあそうする事にした。
 目が覚めた若者は悪夢を見て公園で酔っ払ったと思ったのか、真っ青な顔で自宅へ帰った。当然重要資料は盗めず、彼は落とした単位を来年再履修するはめになったが、まだ若いのだし大丈夫だろう。
 すべての後片付けを終え、令は再びジェットに乗って広島の自宅へ戻った。愛するパパとママが待つ、我が家へと。
 任務が終われば、エージェントも愛猫に戻る。令はご褒美の事を考えながら、ジェットを運転した。
「かつおぶし食べたいにゃ!」
                                   次回に続く

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