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おてつたび in 北海道~ブロッコリーとじゃがいもと、時々おにぎり。~

とりあえず今と違うことがしたい。自然に触れたい。

そんな雑な理由で飛び込んでみたら、全く違う世界が待っていた。

コペルニクス的転回にまでは至らなかったけど、逆ホームシックにはなっている、ちょこっと特別な場所についてのお話。

おてつたび=旅×お手伝い

まず、おてつたびってなんぞ。
おてつだいと旅を掛け合わせた言葉で、お手伝いをしながら知らない町を旅して日本の魅力を感じよう、というサービスである。


知ったきっかけはSNS。友人が白浜のおてつたびに参加した写真を投稿していて、なんか面白そうだな、と旅行好きの血が騒いだのだ。
旅がしたい、人との交流が好き、でもお金がかかる。誰しも(特に学生)が抱えるそんな悩みを解決し、人生の糧となる体験ができる、それがおてつたびだ。

生粋の都会っ子、ド田舎へゆく

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北海道沙流郡平取町豊糠。
今回参加したおてつたび先「WFPダチョウファーム」の農地がある場所だ。

はっきり言って、信じられないくらいド田舎だった。(決してけなしているわけではない)
山道の先に点在する広大すぎる畑には、見たこともないほど大量のブロッコリーとじゃがいも。
滞在していたシェアハウス付近にあるのは、個人商店が3軒、スーパーとご当地コンビニが1軒ずつ、あとは民家がちらほら。基本的に人気はあまりなく、車通りが少なすぎて平気で道路のど真ん中を歩ける。

駅、学校、公園、スーパー、病院etc、ほとんどが徒歩圏内にあり、中心地まで電車で15分という好立地に在住21年。
いわゆる”The・都会っ子”な私が、ド田舎を選んだ理由。それは、

「北海道行ったことないし、この時期までには就活終わってる(だろう)し、ここにしよ」

それだけ。(ごめんなさい)
ちなみに、残念ながら就活はまだ終わっていません。まじ長ぇ。

飛行機、電車、車を乗り継ぎ、かかった時間は約10時間。
シェアハウスでお出迎えしてくれたのは、日本全国から集まった濃い仲間たちだった。

やっぱり、「人」が好きだ。

いざ、おてつだい初日。
農作業は想像の何倍もきつかった。
私は元々痩せ型だが、当時は引きこもりによる運動不足も相まってBMIが17を切り、大学の保健室から「痩せすぎて危険」と指導されるほど。当然炎天下で何時間も収穫作業ができるほどの体力などあるわけがない。
ブロッコリーの収穫を始めて1時間で体力が底をつき、熱中症になり、作業スピードの遅さに頭を抱えられ……

正直、真剣に帰りたいと思った。

でも、せっかく自分で決断して飛び込んだのに、たった一日で逃げ出すなんてダサすぎるしもったいないし、絶対後悔するに決まっている。
そう考えて踏みとどまった。
そしてこの時、逃げなくて本当に良かったと思う。
4日もすれば慣れてきて、決して早くはないけれど、1人で収穫ができるようになり、そこからはかなり楽しめた。
しかも考え事をするにはうってつけの環境で、北海道の雄大な自然に心洗われながら、自分と向き合う時間がたくさんできた。

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夏休みというだけあって、一緒におてつだいをした仲間たちは、ほとんどが同世代の大学生。中には転職活動中の30代もいれば、ベトナム人もいた。

朝8時から夕方5時まで働いて、一緒にご飯を食べて、毎晩のようにいろいろな話をする日々。
みんな多種多様な考え方を持っていて、本当に面白い人ばかりだった。
私が料理を作ると、いつも美味しいと喜んで食べてくれるのが嬉しくて、誰かに必要とされる喜びを味わえたのも、良い思い出だ。
お昼ご飯用のおにぎりの味を毎日アレンジしていたのが懐かしい。

それから、受け入れてくれた現地の方々には、本当に良くしてもらった。
体力も経験もなく、ちょっと真面目なだけで全く戦力にならなそうな私に、丁寧に教えてくれて、たくさん興味深い話も聞かせてくれて。
私にはもったいないほどの優しさがあふれていた。

そして印象に残ったのは、地域の方とのつながり。
休日に炊飯器でチーズケーキを作ろうと思い立ったものの、秤と泡立て器がなく、シェアハウス周辺の店(5店舗)を全て回ったが見当たらない。聞けば取り寄せないとないんだとか。
都会との違いに途方に暮れ、ダメ元で最後に薬局へ入った。

私「チーズケーキ作ろうと思うんですけど、秤と泡立て器がなくて……」
店主のおばさん「うーん、この町にはないと思うねぇ」
私「ですよね……」
店主のおばさん「よかったら私の貸そうか?」

という感じで、彼女は見知らぬ若者に快く、自宅の秤と泡立て器を貸してくれたのである。正直こんな経験は初めてだったし、就活やらなんやらで人間不信が加速していたので、純粋に感動した。

それだけではない。
シェアハウスの近くに住んでいるおばあちゃんが、目の前の畑でピーマンを取ってくれたり、山の駅を管理しているおばさんがトマトをくれたり。

私の地元では、まずこんなことはあり得ない。そもそも隣に住んでいる人の顔すら、一度も見たことがない。


確かに、仕事はかなり大変だった。
ブロッコリーが入ったコンテナは1個抱えるのすら必死だし、ジャガイモの選別で鼻の中まで砂埃だらけになるし、ひたすら虫だらけだし、炎天下でも大雨でもお構いなし……今までに経験したことのない辛さが待っていた。

それでも、終わってみての感想は「めっちゃ楽しかった!」

そう言い切れるのは確実に、出会った人たちのおかげである。

初めてのおてつたびを終えて

労働後の食事の美味さ。
自分が作った料理を、誰かと一緒に食べる楽しさ。
22時過ぎに眠り、朝日で目覚める規則正しい生活。

時計もカレンダーもWi-Fiもなく、ただひたすら農作業に勤しむ生活は、忘れていた些細な幸せを取り戻させてくれた。


正直な話、何か大きな収穫があったかというと、そうでもないのかもしれない。
相変わらず就活には行き詰まったままだし、自己主張するのも人を頼るのも苦手なまま。

だけど1つ確実なことは、
この旅は私の人生にとって宝物だということ。

今はまだはっきりとはわからないけれど、必ず何か意味があると信じている。

北の大地で出会ったすべての人と自然に感謝を込めて。


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