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NSC東京29期の3人です/書く人:1000タコ モサク,星ネギ 松平,ネネネ 善方基…

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NSC東京29期の3人です/書く人:1000タコ モサク,星ネギ 松平,ネネネ 善方基晴/3人それぞれが1つの同じテーマについて何かを書きます/毎週日曜日に3人のうち1人の文章が読めます/「費やす」に特に意味はありません

最近の記事

「写真」 松平

スマホの容量がない。 本当にない。 私が今使っているスマホ、iPhoneSE第2世代の赤。 使い始めてもうかれこれ5年目に突入しようとしている。割と古い方の機種だと思う。 2〜3個レンズがついた新しいiPhoneがかっこよく見えたり、だんだんSEに対応してるスマホカバーが少なくなっていることを切なく感じたりはしたが、これといった不満もなく愛用している。 ただ一年ほど前から、ある通知が来るようになった。 「iPhoneのストレージがいっぱいです」 新しいゲームアプリ

    • 「写真」 モサク

      誰でもどこでも写真を撮れるようになったいま、写真を撮られることに抵抗感を持っている人は少なくなったように感じる。 抵抗感というと少し嫌な印象を持つかもしれないが、単純に写真を撮られるという行為が恥ずかしいということだ。 お盆とお正月はおばあちゃんに会うために必ず帰省するのだが、その際に母親がおばあちゃんと僕のツーショットを必ず撮る。 その際におばあちゃんは写真を撮られるということにすごく恥ずかしそうにしていて、撮られているおばあちゃんの表情はとてもリアルに写っていて、す

      • 「写真」 善方基晴

         僕が尊敬してやまないとある人は、若い頃はあまりお金がなかったためエアコンのついていない部屋に住んでいたという。 その人は、街で室外機を見かけるたびに自分はその家に住む人に負けていると感じていたらしい。 室外機があるということは、その部屋にはエアコンがついているということであり、エアコンがついている部屋に住めるということは、それなりの収入を得ている人がそこには住んでいると推測できる。  僕はその話に触れて以来、街を歩いているときや電車から住宅街を見下ろせるようなとき

        • 「徘徊」 松平

          自宅から最寄り駅まで、徒歩40分ほどかかる。 これを東京で言うと大体驚かれるが、私はこの長さに高2まで気づかなかった。 それが当たり前の環境だったから、というより、電車を使わない人生だったため文字通り気がつかなかったのだ。 普段の遊ぶ場所といえば自転車で15分の友達の家がたくさんある住宅街、同じく15分ほどのいつも潰れかけている小さな商業施設。 高校には、コロナ禍の影響で大学がリモートになりいつも暇そうにしていた兄や、職場が近い母に送迎を頼んでいた。 ちいさな世界で生

        「写真」 松平

          「徘徊」 善方基晴

             自分が今なぜ冷蔵庫を開けたのか、何を取り出そうとしていたのか、5秒前にやろうとしていたことがわからなくなってしまうことはあっても、自分が今なぜ外出しているのかわからなくなることは、今のところない。 家の外に出る時、それはいつもどこか行く場所があって、そこで何かをする目的があるから家を出る。 当たり前だったそんな外出の目的が一切なくなったのが、コロナ禍だったのだと今改めて思う。  大学2年の4月から、いわゆるコロナ禍になって外に出る理由が皆無になった。

          「徘徊」 善方基晴

          「徘徊」 モサク

          僕の気分は天気によって簡単に左右されることをこの週末改めて感じた。 気温が高く快晴であることをカーテン越しで感じた寝起きの僕はいつもなら重心に負けているベッドを離れられないのだが、ピン!と起き上がり、iPhoneではっぴいえんどの「風をあつめて」を爆音でかけ、全カーテン全窓を勢いよく開けた。 外からはもう浮き足立っているみんなの高音肉声が聞こえる。その高音肉声に負けないようにはっぴいえんどを爆音で流した。 とりあえず、家の下にある汚い公園に行った。その前に自動販売機で三

          「徘徊」 モサク

          「土産」 善方基晴

             中学生や高校生の時、お土産は「渡す」というよりも「配る」ものだった印象が強い。 特に、同じ部活の人たちの間でお土産を配ったり、もらったりしていたことを思い出す。 お盆休みが明けて、久しぶりの部活のときなんかは特にそうだ。 誰かが、おもむろに箱を開けて、個包装になったお菓子を配り歩いていたりして、それに呼応してほかの人も親の実家に帰省先のお土産を配り始めたりしていた。  自分が、お土産を配布する側の立場だったら特に問題はない。 当時僕が入っていたサッカー

          「土産」 善方基晴

          「土産」 モサク

          久しぶりに熱が出た。目が覚めた瞬間すぐに熱を感じた。とりあえず体温を測ろうと思い、体温計がある場所まで歩く。もうしんどい。体の中心が取れていない。 久しぶりに開けた真っ白な体温計の先端の銀は少し冷たく、自分の左脇に突き刺さった瞬間にわぁあああ!ってなってしまったのに少し笑ってしまった。 その後、ピロピロピロリンという体温確定音楽が鳴るまでの虚無の時間、僕はタフィーローズのバッティングフォーム連続写真を頭の中で綺麗に並べて、やっぱ近鉄時代は堪らんなと思った。 そうこうして

          「土産」 モサク

          「土産」 松平

          3月は旅行シーズンだ。 卒業旅行やらなんやらで行く人が多い。 るるぶやまっぷるもこの時期は一層気合いを入れた表情で本屋の棚に並んでいる。気がする。 旅行において何を重視するかは、その人の価値観がすみずみまで露呈する問いだと思う。 非日常的な空間の中で大事に抱えるものに、日常が詰まっている。 私はお土産が好きだ。 買ったり貰ったりもそうだが、お土産屋さんそのものが。そのものの、空気が。 当たり前だが店内にいるほぼすべての人間が、お土産を買いに来ている。 人気そうな個包

          「土産」 松平

          「費やす」

          (※初回はテーマは決めず、3人の拙文を同時に載せています↓) 今日も前日に調べておいた時刻表通りの電車に乗り目的地まで向かっている。平日昼過ぎの電車は誰も急いでいない。流れる車窓と日の当たりが優しい。今、僕が乗っている電車の乗車率は何%なんだろう。都内最高乗車率は日暮里・舎人ライナーの朝ピーク155%らしい。日暮里・舎人ライナーのピークが都内のピークなんかい。日暮里・舎人ライナーのピークがピークなんかい。日暮里・舎人ライナーよ空を飛んであの娘の胸に突き刺さるんかい。 そん

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