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NSC東京29期の3人です/書く人:1000タコ モサク,松平,ネネネ 善方基晴/3人…

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NSC東京29期の3人です/書く人:1000タコ モサク,松平,ネネネ 善方基晴/3人それぞれが1つの同じテーマについて何かを書きます/毎週日曜日に3人のうち1人の文章が読めます/「費やす」に特に意味はありません

最近の記事

「ポケット」 善方基晴

 みんなのポケットの中には何が入っているのだろう。  僕のズボンについているポケットの中身の基本的な構成としては、左のポケットにハンカチと鍵、右のポケットにはポケットティッシュと交通系IC、そしてスマホだ。 小学生の頃、ハンカチとティッシュは遠足のしおりの持ち物チェック表に必ず書いてあるほど「持ち物」の常連だった。それを未だに引きずっている自分は、基本的にハンカチとティッシュを常にポケットに入れて持ち歩いている。  そんな中、ここ数年の間に右ポケットの中で問題が発

    • 「電車」 松平

      人生の中で、なぜか心に残っている日というのがある。 なぜか、何かと思い出してしまう数日。 その中の一つが2年ほど前の冬のある日だった。 TikTokに流れてきた赤子くらい大きいクレープの動画。 普段ならそのままスワイプしてしまうようなものだったが、受験もせずバイトもしてない12月の高3の私は、フットワークが軽い。縛られるものが何もない。 その日のうちに友人に「行こう」と送った。 当日、最寄駅に集合してみんなで向かう。 冬の中でも結構冷える日だったのに、なぜか薄着で来て

      • 「電車」 善方基晴

         駅のホームで電車を待っていると、外国人の女性が地面にスマホを向けていた。 何かを写真に収めている様子でスマホが向けられた先を見ると、そこには整列乗車を促すための車両の扉の位置を示す表示があった。 なるほどこれは外国人からしたら珍しい表示なのだろうと思った。 それを見て僕は、少し前に読んだ話を思い出す。  駅で電車を待っているとき先頭に並んでいたのだが、どうやら次に来る電車は車両の数が少ないらしい。 それに乗りたいのだが、自分が立っている扉の位置を示す

        • 「電車」 モサク

          大学の専攻は観光マーケティングだった。どうすればその町に人の流れを持ってこれるかなどの勉強をしていた。 実際に富山県立山町という町で地域のみなさんの前で発表することをした。 半年前から何度も立山町に行き、今はどのような流れで町に人が来ていないかを調べ、町の問題点などを改善しつつ、人を呼ぶ施策を考えた。 空き家が問題になっていたので、その空き家にゲストハウスを作る企画を考えた。 希望的観測ではなく、実際に作る際の費用、何年で返せるか、どこからお金を借りるかなどもいろんな

        「ポケット」 善方基晴

          「がま口」 まこも

          つい最近、サンリオキャラクターの特集をしている番組を見た。その中で、ハローキティのがま口が紹介されていた。 ど真ん中にハローキティが描かれたシンプルなデザインでありながら昭和の暖かみのある寛大な雰囲気と、小銭が15枚くらいしか入らないのではないかと想像させるくらい小柄で無駄のないサイズ感が、映像から伝わってくる。 その映像を見て母がふと、「私も小さい頃、あのがま口使ってたな」と懐かしげに呟いた。その瞬間、いつも辛抱強くて意地っ張りだけど冷静な母が、幼い子どもの頃に戻ったよ

          「がま口」 まこも

          「ゲーム機」 善方基晴

             小学生の途中まで、しばらく進研ゼミをやっていた。 コラショという陽気なキャラクターと共に「チャレンジ」と書かれている教材を使って一人で勉強する、通信制の塾みたいなあれだ。  ベネッセという会社によって行われる「チャレンジ」には、子どもたちの勉強のやる気を引き出すために、様々な企画があった。 そのうちの一つに、ただ教材を使って問題を解くのではなくゲームを進める中で勉強できる、とあるゲーム機が家に届いたことがある。 そのゲームは、進研ゼミの手にかかって

          「ゲーム機」 善方基晴

          「ゲーム機」 モサク

          おじいちゃんの故郷である島根のイオンで僕ははじめてゲーム機を買ってもらった。 ゲームボーイアドバンスのシルバーとポケットモンスタールビー。めちゃくちゃうれしくてめちゃくちゃやり込んだ。 何回も何回も四天王を倒す日々。ちょうど飽きてきた頃にビックニュースが飛び込んだ。 なんとポケモン映画の前売り券を買うとデオキシスを貰えるという特典がついているというのだ。 僕はデオキシスが欲しくて欲しくてたまらなかった。何フォルムで貰おうかずっと考えるぐらい興奮していた。 次の日の休

          「ゲーム機」 モサク

          「ゲーム機」 松平

          この世にはたくさんのゲームがある。 プレステやSwitchなどのゲーム機は一家に一台といっても過言ではないくらい普及していると思う。 私は物心ついた時からゲームが好きだ。 小さい時から数えると、50本くらいのゲームはやってきてると思う。 RPG(冒険系のやつ)やFPS(銃でばんばんする系のやつ)など色んな種類のゲームがある中で、特に好きなものがある。 シミュレーションゲームだ。 中でも主人公を細かくキャラメイクすることができ、その世界で主人公に人生を歩ませるような、日

          「ゲーム機」 松平

          「写真」 松平

          スマホの容量がない。 本当にない。 私が今使っているスマホ、iPhoneSE第2世代の赤。 使い始めてもうかれこれ5年目に突入しようとしている。割と古い方の機種だと思う。 2〜3個レンズがついた新しいiPhoneがかっこよく見えたり、だんだんSEに対応してるスマホカバーが少なくなっていることを切なく感じたりはしたが、これといった不満もなく愛用している。 ただ一年ほど前から、ある通知が来るようになった。 「iPhoneのストレージがいっぱいです」 新しいゲームアプリ

          「写真」 松平

          「写真」 モサク

          誰でもどこでも写真を撮れるようになったいま、写真を撮られることに抵抗感を持っている人は少なくなったように感じる。 抵抗感というと少し嫌な印象を持つかもしれないが、単純に写真を撮られるという行為が恥ずかしいということだ。 お盆とお正月はおばあちゃんに会うために必ず帰省するのだが、その際に母親がおばあちゃんと僕のツーショットを必ず撮る。 その際におばあちゃんは写真を撮られるということにすごく恥ずかしそうにしていて、撮られているおばあちゃんの表情はとてもリアルに写っていて、す

          「写真」 モサク

          「写真」 善方基晴

           僕が尊敬してやまないとある人は、若い頃はあまりお金がなかったためエアコンのついていない部屋に住んでいたという。 その人は、街で室外機を見かけるたびに自分はその家に住む人に負けていると感じていたらしい。 室外機があるということは、その部屋にはエアコンがついているということであり、エアコンがついている部屋に住めるということは、それなりの収入を得ている人がそこには住んでいると推測できる。  僕はその話に触れて以来、街を歩いているときや電車から住宅街を見下ろせるようなとき

          「写真」 善方基晴

          「徘徊」 松平

          自宅から最寄り駅まで、徒歩40分ほどかかる。 これを東京で言うと大体驚かれるが、私はこの長さに高2まで気づかなかった。 それが当たり前の環境だったから、というより、電車を使わない人生だったため文字通り気がつかなかったのだ。 普段の遊ぶ場所といえば自転車で15分の友達の家がたくさんある住宅街、同じく15分ほどのいつも潰れかけている小さな商業施設。 高校には、コロナ禍の影響で大学がリモートになりいつも暇そうにしていた兄や、職場が近い母に送迎を頼んでいた。 ちいさな世界で生

          「徘徊」 松平

          「徘徊」 善方基晴

             自分が今なぜ冷蔵庫を開けたのか、何を取り出そうとしていたのか、5秒前にやろうとしていたことがわからなくなってしまうことはあっても、自分が今なぜ外出しているのかわからなくなることは、今のところない。 家の外に出る時、それはいつもどこか行く場所があって、そこで何かをする目的があるから家を出る。 当たり前だったそんな外出の目的が一切なくなったのが、コロナ禍だったのだと今改めて思う。  大学2年の4月から、いわゆるコロナ禍になって外に出る理由が皆無になった。

          「徘徊」 善方基晴

          「徘徊」 モサク

          僕の気分は天気によって簡単に左右されることをこの週末改めて感じた。 気温が高く快晴であることをカーテン越しで感じた寝起きの僕はいつもなら重心に負けているベッドを離れられないのだが、ピン!と起き上がり、iPhoneではっぴいえんどの「風をあつめて」を爆音でかけ、全カーテン全窓を勢いよく開けた。 外からはもう浮き足立っているみんなの高音肉声が聞こえる。その高音肉声に負けないようにはっぴいえんどを爆音で流した。 とりあえず、家の下にある汚い公園に行った。その前に自動販売機で三

          「徘徊」 モサク

          「土産」 善方基晴

             中学生や高校生の時、お土産は「渡す」というよりも「配る」ものだった印象が強い。 特に、同じ部活の人たちの間でお土産を配ったり、もらったりしていたことを思い出す。 お盆休みが明けて、久しぶりの部活のときなんかは特にそうだ。 誰かが、おもむろに箱を開けて、個包装になったお菓子を配り歩いていたりして、それに呼応してほかの人も親の実家に帰省先のお土産を配り始めたりしていた。  自分が、お土産を配布する側の立場だったら特に問題はない。 当時僕が入っていたサッカー

          「土産」 善方基晴

          「土産」 モサク

          久しぶりに熱が出た。目が覚めた瞬間すぐに熱を感じた。とりあえず体温を測ろうと思い、体温計がある場所まで歩く。もうしんどい。体の中心が取れていない。 久しぶりに開けた真っ白な体温計の先端の銀は少し冷たく、自分の左脇に突き刺さった瞬間にわぁあああ!ってなってしまったのに少し笑ってしまった。 その後、ピロピロピロリンという体温確定音楽が鳴るまでの虚無の時間、僕はタフィーローズのバッティングフォーム連続写真を頭の中で綺麗に並べて、やっぱ近鉄時代は堪らんなと思った。 そうこうして

          「土産」 モサク