「徘徊」 モサク
僕の気分は天気によって簡単に左右されることをこの週末改めて感じた。
気温が高く快晴であることをカーテン越しで感じた寝起きの僕はいつもなら重心に負けているベッドを離れられないのだが、ピン!と起き上がり、iPhoneではっぴいえんどの「風をあつめて」を爆音でかけ、全カーテン全窓を勢いよく開けた。
外からはもう浮き足立っているみんなの高音肉声が聞こえる。その高音肉声に負けないようにはっぴいえんどを爆音で流した。
とりあえず、家の下にある汚い公園に行った。その前に自動販売機で三ツ矢サイダーのロング缶を買った。
僕は炭酸のロング缶を買ったのだ。これは今日の快晴にアンサーを送る意味で買った。
結局上澄みの部分しか飲まずに家に戻った。もうこの時点で14時。ここからはプロ野球を見る。ベッドの上にPCを置いて寝転びながら。
窓際にベッドを置いてあるので、差し込む光と風が気持ちいい。布団を蹴飛ばしたベッドにいつも以上に体を預けた。
熱くなってきたのでモコモコズボンを脱いだ。今日はブリーフを着用していてよかったとすぐに思った。至るところに隙間がある。隙間から春がすっーと入ってきた。気持ちいい。ファミマのブリーフでよかった。
そんなことをしている間にあっという間に夕方になり、夜になった。まだ暖かったので外に出た。
目的もなく歩いていると団地の中にある誰もいない巨大な公園にたどり着いた。
ベンチでゆっくりしていると横のベンチにロング缶を持っている金髪女性が座った。
ロング缶を持っている。この人も今日のこの快晴にアンサーを送っているのだ。
その人はロング缶を飲みながらずっとハミングをしていた。巨大な団地が壁となっている中心でするハミングはすごく響いた。綺麗だった。
そんなときに家族が来た。ロング缶金髪女性はハミングをやめた。その家族は大木のくぼみにiPhoneのライトで光を当てた。
朝、ここに蜜を塗っていたらしく虫が近寄ってきているかを確認しにきていた。今年日本で一番早く木に蜜を塗った家族はたくさん虫が来ていることに喜んでいた。
僕は蜜で虫が寄ってきたのではなく、ロング缶金髪女性の綺麗なハミングで虫が寄ってきていると強く思った。
そんなことをずっと考えているとロング缶金髪女性はどこかへ消え、虫と僕だけが残った。
家に帰ろうと思ったけど、ハミングが耳から消えなかったので近くの野球場レフトからライト沿いをうろうろした。桑田真澄ばりに何往復もした。
また暖かい日がやってきたら外に出ようと思った。予定を立てて目的地に向かうのではなく、ふらふらと。だって今日は素晴らしかったから。
春からはもう養成所に通わなくなる。自分で目標を立てて、頑張らないといけないことはわかっている。
でも、僕は今日やることは今日決めるようにしようと思う。だって、その方がもっとでたらめになれると思うから。
ふんふふふふん
1000タコ モサク
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