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「がま口」 まこも

つい最近、サンリオキャラクターの特集をしている番組を見た。その中で、ハローキティのがま口が紹介されていた。

ど真ん中にハローキティが描かれたシンプルなデザインでありながら昭和の暖かみのある寛大な雰囲気と、小銭が15枚くらいしか入らないのではないかと想像させるくらい小柄で無駄のないサイズ感が、映像から伝わってくる。

その映像を見て母がふと、「私も小さい頃、あのがま口使ってたな」と懐かしげに呟いた。その瞬間、いつも辛抱強くて意地っ張りだけど冷静な母が、幼い子どもの頃に戻ったように感じた。こんなに無邪気にテンションの上がった姿を見たのは久しぶりだ。

母は続けて、幼い頃そのがま口が実家のたんすの中に入っていて、お使いの度に取り出して使っていたことや、そのがま口が使い込まれてボロボロになって少し寂しくなったこと、そのがま口がいま、実家の何処にあるか気がかりなことを話してくれた。

私は母が実家の想い出を語るその姿に、懐かしさと哀愁と実家を想う気持ちが乗っていて、とても好感を感じた。話してくれてとても嬉しかった。とてもかわいいと思った。いつもは「お母さん」と呼んでいるが、ここで「母」と呼ぶことにすら、高揚感と悦を感じる。

そういえば、一緒に住んでいた祖母は財布のことをよく「がま口」と呼んでいた。祖母は時々、母と意見が食い違うこともあったが、最期まで母を信頼し慕っていたと思う。「がま口」は血が繋がってなくとも、同じ『母』という存在を繋いでいるのかも知れない。

まこも

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