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【音楽コラム】国内アーティストの時代を超える名盤5選【私的セレクト】

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〜9月30日 01:30

音楽って、素晴らしいものですよね。
(金曜ロードショー風)

日本のポップミュージック文化ってすごいです。
最近の個性爆発状態もすごいですが、それも何十年も前から続く先人の積み重ねがあってこそ。
レトロブーム、昭和ブーム、世界的なシティポップブームの中で、そのクオリティの高さが改めて評価されている昨今です。

ただ、実際に平成時代を生きてきた者からすると、当時の日本の音楽業界が何もかもいい状態だったとは、決して思えませんでした。
一つには、あまりにも商品性を高めることを重視していたため、クオリティは上がるものの、どうしても「芸術」ではなく「大人の仕事」だと感じられてしまうこと。
それが逆にドライな距離感になって、今の時代には合うのかもしれませんが…
作り手側の顔や仕掛けがちらついてしまうため、本当に「若者自身のもの」になることはなかった気がします。
だからこそ、私なんかは洋楽のインディー・ロックなんかに走っていったわけですが、やっぱりその後のインターネットの誕生によって、全ては変わっていったという感じがします。

そんな革命前夜のせめぎあいの中から生まれた、時代を超える名盤5作を、ピックアップしてみました。
それではどうぞ!👇


①『Nostalgia』 徳永英明

シルキーヴォイスの帝王、徳永英明。
90年代初頭に活躍していた多くの男性シンガー、横山輝一・楠瀬誠志郎・陣内大蔵・東野純直などの中でも、その存在感は図抜けていました。
あまりにも美しいその声は、性別すらも越えているように思えるほど。

しかし今、彼の存在が最もよく知られているのは、「カバーシンガー」としてではないでしょうか。
幾多の昭和の名曲を、その唯一無二の声で、あまりにも素晴らしく歌い上げています。
また、往時の彼を知る人でも、そのイメージは「輝きながら…」や「夢を信じて」など、明るく爽やかなヒット曲とともに記憶されているかもしれません。

しかし、彼にはまた一つ別の面がありました。
それは得体の知れないほど深いダークサイドです。

「恋の行方」や「I Love You」などは、既にその暗さが顔を覗かせていますが、まだヒットシングルとしての体裁を保っています。
しかし、このアルバム『Nostalgia』収録の「FRIENDS」まで来ると、その切迫感はもはや隠しようもなくなってきます。
私はこの曲をずいぶん長く聴いていますが、未だに歌詞を解釈しきれません。

ああ 愛することさえ迷わせた二人の
破り捨てる 破れない 無情な夜 破れない
取り繕った笑顔の奥で 声にもならない悲しみが
愛し合えない 君に伝えて
走れよ今 叫べよ今 歌えよSoul My Friends

激しく情念的なメロディの盛り上がりと合わせて、ただただ絶望の純度ばかりが伝わってきます。

『Nostalgia』は、彼のキャリア全体の中でも極めて異質なアルバムです。
ひたすら深く、静かで、暗い。
が、その芯には、思いもよらない強さが宿ってもいます。
中盤のハイライト「魂の願い」の大サビでは、実に十六回にわたって、
「頑張れ」という一言だけが繰り返されます。

頑張れ 頑張れ 頑張れ 頑張れ
頑張れ 頑張れ 頑張れ 頑張れ
頑張れ 頑張れ 頑張れ 頑張れ
頑張れ 頑張れ 頑張れ 頑張れ ALL DAYS

そして最終曲「もう一度あの日のように」の、セピア色の風景に向かって叩きつけるような叫び、神話的なまでの思い出の横溢で、アルバムはしめくくられます。

どこかでどこかで 憧れだけを抱いて
大人の大人の 慰めだけを待って
ああ 流れてないか もう 流されないで
ああ 培った夢は 真夏に濡れた白いシャツのように
緑の風を受けて 輝いていた
もう一度あの日のように

実はこのアルバム、「タイトル曲が収録されていない」という、Led Zeppelinの「Houses Of The Holy」や、Queenの「Shear Heart Attack」のような状態になっています。
後日、そのタイトル曲が別の作品に収録されてリリースされた、という点でも全く同じです。
その楽曲「Nostalgia」は、これまた飛び抜けてダークですが、その中で彼はこう歌っています。

子供のころに見た夕日の中で 僕らはいつも輝いていた
胸に手をあて尋ねる場所で きっとみんなと同じ答えが待ってる


②『RADWIMPS4~おかずのごはん~』RADWIMPS

新海誠監督のアニメ作品と連動することで、国民的バンドとなったRADWIMPS。
しかし彼らは、それ以前から邦楽離れした演奏力と作曲力、さらには目もくらむほどの言葉の力で、
「なんでこんなにすごいものが、世の中に大きく評価されないんだろう?」
と疑問を抱かせるほどの存在でした。

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