見出し画像

【手紙】月並みな僕

僕は太陽にはなれない。
太陽は世界の粒さえ溶かし、
溶かしたエネルギーは中央に佇んで
そして存在以外の全てを与える。
君に熱を与え、君に昼を与え
君に時間を与え、君に風を与え、君に生命を与え、
君に栄養を与え、君に神を与える。
まるで純粋な愛のようだ。
僕はそんなアポロンにはなれないし、
僕の心は海王星よりずっと冷ややかだ

僕は流れ星にもなれない
宇宙の石ころは重力に巻き込まれて
大気に身を焦がして美しさは迸る。
目に見えることが稀有な光は
一瞬の刹那しか姿を現さない。
それは君の目にはとてもロマンチックで、
願いを込めるんだ。
でも僕は祈られても願いは叶えてあげられない。
僕は一瞬でいなくなるわけにはいかない。

君の月は僕だよ。
僕の身体は君の弾除けになって穴だらけだ。
僕は太陽がないと輝けないし、
昼や曇りの日は君からは見えないし、
晴れた夜にしか姿を現さない。
でも夜には細い灯りとなって、
街灯がない道の目印になれる。
君に見せる面はいつも同じだけど、
きっと裏の顔があるかもしれないね。
太陽と僕の立位置で僕の影の形は変わって、
たまに僕はウサギに見えるかもしれない。
僕が君を見ている時間には、
君は大抵遊んでいるか、寝てしまっている。
でもコペルニクス展開があっても、
変わらず君の周りを回っている。
僕はそんな君の衛星なんだ。

2023年6月15日


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?