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【夢日記】アスファルトに願いを

 僕は真っ黒なビルにいた。そのビルは高校の友達のウーリのマンションによく似て、20階以上あるマンションだった。おそらく4階か5階くらいには、エントランスがあり、沢山の人がいた。たぶんそこの住人だったのだろうか。その人たちはロビーのドアとエレベーターを行き来していた。
 僕はそれを遠目で見ていた。そして僕は手にしていたナイフで無感動にその人たちを次々に刺していった。例えるなら、まさに呼吸のようで、意識しなくとも僕の肝脳が肺に電気信号を発するように、神様が僕の四肢に命令を与えるようだった。だが、ふとした時に「自分は今呼吸をしている」と気づくように、ウーリの叫び声を聞いて意識を取り戻した。無数の蟻や蛆が足の指先から頭の先まで駆け上がるように、恐怖の雨雲はついに黒い雨を降らせた。
 僕はするとすぐさまエレベーターに引き返し、1階に降りたが、階段から降りてきたウーリに肩を掴まれた。だかその掴んだ手は、殺人鬼を捕まえるような手ではなく、友人を慰めるそれだったが、僕はその手を払い除け、マンションの外に出た。
 外は雨が降っていた。マンションの前は舗装されたばかりのアスファルトで、雨水が全て吸収できないでいる。僕はそんな濡れた地面に膝をつき、手をついた。濡れたアスファルトの感触、匂い、光景、それら全てが雨を強くしていると思った。僕は「これは夢であってくれ」とアスファルトに願ったが、僕は夢から醒めることはなかった。

2016年9月13日

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