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御朱印GIRLS

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#御朱印GIRLS

vol.23 今宮戎神社

vol.23 今宮戎神社

 境内は静かで、「有名どころだから」と言った友達の言葉を、私は少し疑い始めていた。

「人いないね」
「行事のない神社って、こんなもんだよ」

 だけど友達はあっさりと答えて、スマホをいじり始めた。画面を盗み見れば、どうやらカレシと連絡を取っているようだった。

「なんか工事してる」
「ああ、だから余計なんや」

 スマホをしまって、ようやく境内を見渡した友達は一人納得していた。
 だだっ広い砂地

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vol.22 長柄八幡宮

vol.22 長柄八幡宮

(どうしよう、早くに着きすぎちゃった)

 バイトの面接。道に迷ったり、遅刻したりしないよう、早く出た。二十分かかるという道に、一時間の時間を当てた。その結果が、三十分の空き時間だ。

 慎重に慎重を重ねた結果の空き時間に、萌は途方に暮れた。

 見知らぬ場所。近場にカフェも見当たらず、歩き回るのも憚られた。時間潰しで遅刻なんて、情けないことは避けたい。

 萌は面接会場のそばで立ちすくむ。辺りを

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vol.14 京都・豊国神社

vol.14 京都・豊国神社

 六波羅蜜寺から歩いてどれくらい経っただろう。
 小道を進んで、大通りを横切って、住宅街をさらに進んだ。道中のカフェや和菓子屋さんに立ち止まりそうになりながら、自制の先にたどり着いた京都・豊国神社は、階段の先にある。

「階段が重い」
「足に来る~!」

 腰が曲がる私とは違って、遥は声を弾ませた。

「なんでそんなに楽しそうなの?」
「なんでそんなに苦しそうなの?」

 数段先を行く遥は振り返っ

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vol.10 大阪天満宮

vol.10 大阪天満宮

 「久しぶり」なんて挨拶は、合流できない事件で流された。

「今、どこ?」
「2階? の、改札でたところです」
「え? なに出ちゃってんの?」
「も一回入ってきて」

 新年早々のあわあわな事態に、テンパる。横にいる元・バイト仲間は、”仕方ない”というより”なにしてんだ”という口ぶりで、私と電話越しの元・後輩を先導した。やっとおちあって、環状線にのりこんで、天満駅にたどり着いた。

「え? これ、

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vol.9 大神神社

vol.9 大神神社

 大きな鳥居を前に、足がすくむ。

「なんか緊張する」
「はじめてなんだっけ?」
「私は二回目~」

 私を挟んで、友達2人は実に楽しそうだ。

「そうだけど、霊験あらかたっていうじゃん!」
「霊感ないじゃん」
「関係ない、関係ない」

 右そして左から聞こえてくる声に、不安は掻き消された。そのかわり、気分が落ち込む。
 何ヵ月も前から計画していた大神神社参拝。1時間半かけてたどり着いた場所は、思

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vol.6 西院春日神社

vol.6 西院春日神社

「春日神社って、奈良の?」
「ううん、京都の」

 カウンターに背を向けて、100円のおしゃれな入れものにスプーンやフォークを並べる。
 忙しいランチタイムを過ぎ、一息つける貴重な時間。

 ランチタイムの助っ人も帰ったあとなので、プライバシー もそれなりに守られる程度のスタッフしか残っていない。ちなみに今は3人。私と穂香と奥に1人、無口な男性スタッフが黙々と食器を片付けていた。

「え? 春日神

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vol.5 港住吉大社

vol.5 港住吉大社

 ある展覧会へ向かう途中。公園の中に神社を見つけた。

 行きに立ち寄るには信号を渡るという苦難があったため、帰りに参拝することにした。だから今、私は信号待ちを食らっている。

 そういえば、小銭を参拝用の小銭入れに移しかえてきてしまった。お財布の中身を確認すると、100円玉と10円玉、1円玉しか入っていない。縁が遠のくと聞いてから10円だけでお賽銭を納めたことはないし、1円だけでは心苦しい。かと

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vol.4 生國魂神社

vol.4 生國魂神社

 私は今年、前厄に当たる。しかも、大厄といわれる厄年の前厄だ。
 気構えはなかったが、バイト先の店長に大厄は前厄から来るよ! と言われて以来、身震いが止まらなかった。だから、

「お願い! ついてきて! 一緒に来てください!」

 と美咲に泣きついた。御朱印巡りの友達は笑いながら、オーケーしてくれた。

「だって、今年に入って10日も経たないうちに、鞄が2個もダメになったんだよ!?」

 谷町九丁

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vol.3 サムハラ神社

vol.3 サムハラ神社

※『サムハラ神社』を読んでいただくにあたり※
参拝に伺ったとき、
指輪守りは授与されていましたので、
授与されていた当時の話に終始しております。
ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

***

 スマホを覗く。 お昼も間近。いつの間にかサイレントにしてしまっていたスマホが、光っていた。

「なに?」

 不機嫌に近い声音にも、

《あ、ごめん。起こした?》

 結子が動揺した様子はない。「ご

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vol.1 壬生寺

vol.1 壬生寺

 大宮駅から、歩いて20分。

「歩いて10分て書いてある」
「……迷ったね」

 事前に調べた地図を見、顔をあげる。
 ちょっと先にある高架を電車が通過した。

「でも近くない?きっとこの高架はコレのことだろうし」
「さっき人が並んでる店があったよねー。何の店だった?」
「鮮やかな壁だったよねー。何のお店かわかんないけど、飲食店じゃない? 並んでるのOLさんとかサラリーマンぽかったね」

 地図

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