連載小説 河童-2

「あなた、私の師匠なんでしょ!私に教えなさいよ、水に顔をつける方法を」少女は大きな声で言った。
「まだお前を弟子にするなんて言っとらん。帰れ帰れ」
少女は河の中に入ってきた。腰ぐらいの深さの場所で顔を河に入れようとした。しかし、河を見てじっととどまっている。儂には何故水の中に顔をつけられないのか理解できなかった。
「何を躊躇っている」
「水に顔つけるのが怖いのよ。息できなくなるじゃない」
「そんなことはない。まず心を落ち着かせて深呼吸するんだ。それからゆっくり顔をつけるんだ。」
少女は深呼吸して、水の中に顔を入れた。
5秒くらいしてから、ぱっと水面から顔を出した。
「息できないじゃない!」
「お前は人間だからな」

それから少女は毎日のように来た。次第に水にも慣れてきた。泳ぎ方や魚の取り方も覚えた。しかし、彼女はみるみる老けていき気づくとおばあちゃんになっていった。

「私、あの時河に入った時、自殺しようとしてたのよ。でも、あなたに出会えてから毎日楽しかったわ」彼女は言った。
「人間の寿命は早いなあ。お前がいたおかげでしばらくは退屈しなかった」
彼女は笑顔だった。

あれから私の心には人間の形の穴がぽっかり開いている。よく河に流されるようになった。


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