tetsumae

東京都小平市。8歳の息子と2歳の犬。それに妻との4人家族で生活中。働きながらゆったりと…

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東京都小平市。8歳の息子と2歳の犬。それに妻との4人家族で生活中。働きながらゆったりと詩作に挑戦しています。日々の記録、心の記録。黒田三郎さんのような「私詩」の世界が憧れ。

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  • Report from Little Field

最近の記事

9月の夜

乱れた水 幾枚もの紙片が沈み 役割を終えた 何度も掬ったのに 掬われたのに カプセルトイの人形たちは こうやって 季節に取り残される 誰もいないのだ 誰も この庭には今夜 誰もいない ずっと誰もいなかったように 抑止をはずして 明日の朝までそこにいれば 君もぐっすり眠れるはず もう終わったんだよ 大丈夫 やるべきことをやり切ったって 仕事はまだ 残っているから

    • 色彩の粒度

      古民家の色彩 の狐の嫁入り に雨と似つかぬ 風が吹き 髭の人が 中で待つ 原生の 「青」と「ピンク」と「橙」に 小さな手の肌色が触れ 溶けたり抜けたり流れたり さっき思っていた 汗の速度と粒度について うしろのポケットに 押し込んだタンブラーの 夜色の海の代理人が 助手席で待っているから 気が滅入るくらい暑いけど たぶん、なんとかなるよ

      • 花弁

        南にある新古書店に売るために 君は首から下げた財布に 長方形の花弁をしまう もう今日が終わる頃 熱気の残る夕刻間近の地層の上 最後の仕事のように 西の空がちょっとだけ オーロラソースのようだ、と コンビニで買ったからあげを つまみ食いしながら 店へ急ぐ あまたある炭酸飲料の あれは美味い、これは不味いといいながら 雲が街を囲って 壁のように 山のように遠くに見えて 君は「もうあれは、山なんじゃないか」と 花弁をお金に変えてきた財布を揺らしながら 自転車の後部座席で言

        • 新しいアイスクリームについて

          繰り返し貰うLINEのメッセージを 返しきれないときに ひとまず押したスタンプが 案外言葉を超えていて 安心して欠伸をする (ナイトキャップと抱き枕で今日は安眠できると思う) 面倒なのはいつも 打ち込めば打ち込むほど 肝心なことが 遠くに行ってしまう気がすること 肝心なことは話さない という生き方が 性にあっている といまさら気づいて きょうのできごとだけを そっと横において 新商品のアイスクリームについて 少しだけ話すことにする

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        • Report from Little Field
          10本

        記事

          不可抗力

          コーヒーの飲みすぎが嫌なので 柚子レモン&ジンジャー・スカッシュを選んで 人を待つあいだ 息子を見ている 外はとてつもなく暑い 息子が見ているのは僕ではなく ずっとスマホの画面 画面から目をそらさないまま 口だけがストローを探して 物足りない時間を口に運ぶ 店には遠い国から来たというカップルや 常連らしき人たちが 入れ代わり立ち代わりやってくる なのに僕たちの待ち人だけが いつまでもやって来ないのは 今夜開催される花火大会のせいで 混雑した道に 発生した蜃気楼が原因と

          『ミトンの裏側』

          ミトンが見つからないから 夕食の準備はやめて 部屋に引き返した 今日は 原材料のない手紙を 書き終わるまで眠らないと決めた 一向に進まないので お茶を取りに行くふりをして リビングにいる君に 惑星の後戻りする軌道について 話したり 話さなかったりする たとえあと100万回の夜があっても 死んだ猫が何べん生き返っても なんとか書き上げて ポストに投函するまで 増えていくカウントに焦りながら 布団に入った猫たちは 早回しの映画みたいに 何べんも出たり入ったりしていることだろ

          『ミトンの裏側』

          No Name

          Wi-fiが切れて 何度も切れて 静かになった 取り戻さなくていい音を 置き去りにして 夕食どきを迎え ナイフでもフォークでもない まったく新しいカトラリーに まだ名前をつけられないまま 皿の上の食べきれない料理に手を付ける 君が残した「か」は 僕が変わりに食べてあげるから 君は残していい 今日はコップについだ ビールに似た飲み物だけを ちょっと笑って 飲んでいればいい 明日の献立を どうしても思いつかないから 買い物リストはいつまでも埋まらず 君は無くしてしまった「せ

          クローディア

          毎週のホット・チョコレートサンディよりたいせつなものを きみはいつか見つけるだろう 秘密をたくさん ポケットにしまいこんで バスに乗るんだ いちばん後ろの席で息をひそめながら いったいどんな話をする? 旅にでるのに必要なのは何? カバーの取れた文庫本と “しるし”をつけすぎた紙製の地図 笑う星を頼りに 虹の架からない空の渡り方を 無言で教えてくれる風ひとつ 偶然2人同時に見つける 溢れる寸前の タンブラーを強めに閉めて 誰かが降りるバスに乗る 料金ボックスの音の配列 毎

          クローディア

          笑う仕事

          急ぎ渡る橋の向こうに 一本の樹 定刻通りに来ないバス 人は冬眠を忘れ 覚醒した時間を持て余し 「理由」の傍に座って 過ごしたがる 直観を信じるために 笑う仕事を 耕している 最終便に間に合わせるため 夜中までかけたメッセージを 上書き保存してしまったので ひとつ前のメッセ―ジが本当だから そっちを気にしてくれればいいよ 急ぎ渡る橋の向こうに 星ひとつ 定刻通りに来ないバス 最終便に間に合うために 笑う仕事を 干す 耕す

          笑う仕事

          ほどけ

          靴紐のように 5本指を 夜にほどく 影絵を作る 作る音が 反響を作る 作るのは あなたが声にしなかった声 夕暮れが 曖昧に保証する 約束に似た 音と色 原材料のわからない 手紙を作らなくてはなりません ほどけたものの回収を しなくてはなりません 作る 作る音が 反響を作る 色を頼りに 作るのは あなたが声にしなかった声 こんなにも 完璧に 知らないこと それが嬉しくて ほどけた指が帰ってくるのは 明日よりもっと先なので 一本となりの路地で 銀杏が 日曜日を 激しく燃

          『決行日』

          『決行日』

          Little Field

          用水路が町を横切って 「日常」がアスファルトに染み込んでいる それは街路樹の養分 平屋のドラッグストアに 冷凍食品を買いに行くのは あれこれ上手くいっていないときだ たくさんの「所用」を食べて 地球の曲線にへばりついているから わからなくなることが多いけれど 自転車が削った白線と 祭りの翌日の割り箸が きちんと散らかっていれば とりあえずは大丈夫 新しい標語が町を不本意に埋めても 交差点で「じゃあね」と別れる君の顔が 根拠の無い自信で溢れていれば それでいいよ

          Little Field

          『Anker』

          手探りで 雨戸を開けたAM9:32 待ちくたびれた朝日が 決壊を起こして 侵入してくる遅い朝 光が届き始めると マンガを読んでいるお前の背中に 緑生が始まる 光と種さえあれば  創世記はいつでも始まるってこと 珈琲を淹れるまでの15分間 飛行機の通過音と鳥の囀りが 時間どおり働いているのに お前の親父はこうやって 出遅れた朝を迎える (知ってると思うけど) それでもなんとか 今日を動かそうとしているのに 頑なに同じ場所にとどまっている あの雲ひとつ  そういえば昔の友達

          『頬、得る』

          『頬、得る』

          『買い物』

          好きなお菓子は昔からこれ とスーパーマーケットでカートを押しながら いま、僕に言った? 独り言のように 話しかけてくる 無防備な 韻律 シナプスが記憶してるのは 巨鯨が残していった大きな波紋 その一番端っこに置かれたレジスターで 空想を清算して 僕はお釣りを受け取った うちに帰った僕たちは カーヴァーの小説みたいに ああ今日も何もなかったと 起こった出来事を反芻しながら 巨鯨が悠々と泳いでいくのを 静かに並んで見送っていた

          『買い物』

          『決行日』

          整骨院の中2階に かくし扉があって 鍵は腹巻の中 手掛かりはあいつ サウナでいつものぼせている あいつに聞けばわかるから 公民館の屋根の上で 蛙が遠吠えする月夜がチャンス 町に住むのは 底意地の悪い人間 人間らしい、人間 いつも人の悪口を言っている 人間らしい、人間 漂白されすぎて 失ったものを 今夜奪い返しに行くのさ

          『決行日』