『Anker』

手探りで
雨戸を開けたAM9:32
待ちくたびれた朝日が
決壊を起こして
侵入してくる遅い朝

光が届き始めると
マンガを読んでいるお前の背中に
緑生が始まる
光と種さえあれば 
創世記はいつでも始まるってこと

珈琲を淹れるまでの15分間
飛行機の通過音と鳥の囀りが 時間どおり働いているのに
お前の親父はこうやって 出遅れた朝を迎える
(知ってると思うけど)

それでもなんとか
今日を動かそうとしているのに
頑なに同じ場所にとどまっている あの雲ひとつ 
そういえば昔の友達が あんな顔をしていたっけ

自分に向かってため息をついたあとに
おはよう、といまさらのように
お前の背中に小石を置く
ここが誰も来ない 
隠された庭園であることの
確認作業

出来るだけ狭くカテゴライズされた安全地帯が
殻を突き破る力をくれる唯一のものだから
お前をアンカーにして
生き延びるという仕事をこなすために
マンガに夢中になっている
お前の背中に 小石を置く

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