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短編小説・歌詞・エッセイ等、ジャンルに捉われずに創作物を掲載していきます。この世界観好…

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短編小説・歌詞・エッセイ等、ジャンルに捉われずに創作物を掲載していきます。この世界観好きだな、と思って頂ける作品があれば嬉しいです😊

最近の記事

【短編小説】時を洗う(後編)

私たちは洗濯が終わるまでの間、壁際のベンチに腰掛けて話した。 その人は、近くの大学に通う4年生だった。 「私もこの間まで大学生だったのに、既に懐かしいなあ。いつの間にか卒業して会社員になっちゃったよ。」 「僕も来年はそうですよ。けど、今は景気もいいし就職決まりやすいから良いですよね。ボーナスもいっぱいもらえるし。僕の先輩も毎年慰安旅行でハワイ連れて行ってもらってますよ。」 「え、今時そんな会社ある!?」 「はは、ありますよ。今はどこもそうなんじゃないんですか?」 い

    • 【短編小説】時を洗う(前編)

      私の住むボロアパートには、洗濯機がない。 「すぐ近くにコインランドリーがありますから、全く問題ありません。 むしろお家の中がすっきりして良いですよ。」 仲介業者のこんな言葉に釣られて契約したけど、やっぱり家に洗濯機があるにこしたことはないな・・住み始めて3日でそう思った。ま、格安だからいいんだけど。 携帯を見ると金曜の23時55分だった。 明日仕事もないし、今から行くかあ。 そう思い、自転車を漕いで教えてもらったコインランドリーに向かった。 満開だった桜がもう散り始めてい

      • Time Capsule(歌詞)

        無人駅 錆びたフェンスに からまった アケビの蔦よ したたるような 夏は過ぎ去り あなたと過ごす 時は置き去り 線路沿いで 鬼ごっこ あなたはいつも 捕まらぬ タイムカプセル 持ったまま もう何年も 戻らない 線路の上を 電車が走る 乗客は一人 真っ暗闇の 田舎の道に 観客は二人 今も想うよ 通り過ぎた 子供時代 夕暮れが 映すシルエット 太陽は 姿を変えて しびれるような 昼を連れ去り こぼれるような 言葉捨て去り フェンス越しに 夏を見た あなたが聴いた 寂しさは

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          田舎の風景 part2(写真)

        【短編小説】時を洗う(後編)

          香水(短編小説)

          ねえねえ、会いたかった人に会える香水があるとしたらあなたどうする? 一人だけ、誰にでも会えるの。 アインシュタインでも、ヒトラーでも、別れた昔の彼女でも、今会社にいるあなたのお父様でも、ヘプバーンにでも。 あなたが望んだ人、一人にだけ会える香水があったら、あなた誰に会う? 好きだった彼女が、ベッドの中でそう言った。 彼女の体からはいつも花のような甘い香水の香りがした。 え?と言って振り返る僕を見つめるまだ少女のような瞳と、それに不釣り合いな赤い口紅が僕の心を落ち着かなくさせ

          香水(短編小説)

          糸杉(自由詩)

          花咲く夜 雨降る夜 傘がなくても 光の中を 歩くなら 共に行こう あの空に向かう 糸杉の道

          糸杉(自由詩)

          羊雲(自由詩)

          いつの間にかもう セミは鳴かない 夏はそっと息をひそめて 畑のひまわりは首を垂れ 俯いたまま口を閉ざす 季節の終わりを知らせるように この台風が過ぎたらきっと 静かな秋がやってくる  少しの寂しさと、羊雲を連れて

          羊雲(自由詩)

          空に龍がいる 〜台風の海にて〜(写真)

          空に龍がいる 〜台風の海にて〜(写真)

          猫とクリームパン(短編小説)

          「ナァ」 と猫が言った。 「ナァ、それ食べるん?」 私は公園のベンチに腰掛け、クリームパンを頬張ろうと大きく口を開けたところだった。 口を開いたまま下を見ると猫がこちらを見上げている。 「ナァナァ、ぼく、鰹節がいい。 でも、クリームパンしかないならクリームパン食べる。」 ちょうどこの昼下がりの空のような、水色の瞳だった。 「半分こでもええよォ」 どこか嬉しそうな猫に見つめられ、私はパンを半分に割り、片方をベンチの上に置いた。 猫はぴょんとベンチに飛び乗り、

          猫とクリームパン(短編小説)

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          田舎の風景(写真)

          田舎の風景(写真)

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          嘘(自由詩)

          見えていてもいなくても 一緒だろうと言った 本当の事なんて 聞いたところで 窓を開ければ風と消えて行くのに それならいっそ あなたが笑う最高の嘘を 話しつづけよう 輝く星を拾った話や 夜の湖で見たネッシーの話を 空飛ぶ白馬や 海底でみたオーロラの話を はかない現実よりも いつまでも消えない作り話を いつだってあなたには最高の嘘を捧げたい

          嘘(自由詩)

          半月の夜に(短編小説)

          あれは八月だった。 日が沈み、辺りがすっかり暗くなり始めたころ。 私は外を歩いていた。 田舎の町に人影はなく、街灯もまばらな静かな道だった。 左側には潰れたガソリンスタンド、そして右側には、朽ち果てた大きなお屋敷の庭があった。 塀越しに見える緑がジャングルのように茂り、手入れもされないまま巨大化して歩道まではみ出していた。 海の方から吹いてくる湿気を含んだ風は、どこか不気味な表情をしていた。 早く家に帰ろうと急ぎ足で歩く私の前方を、年老いた小さな老婆が歩いていた。 真っ白な

          半月の夜に(短編小説)

          Light(歌詞)

          空にこぼした 絵の具みたいに オレンジの雲 沈んでいった すれ違う人  顔を無くして 世界は僕を  溶かしていった 何を描こう  無重力の時間 スーツの男が ハット目深に 大切なもの  奪いに来ても 光はいつも  心の中に ねえこんな風に 寂しい時を 君はどうやって やり過ごしたの 僕はまだ雨の中  息絶えるように 静かになる時を そっと待ってる 空に浮かんだ ちぎれた雲が 風に流れて  形を変えた 通り過ぎる街 消えて行っても 僕の景色は  変わらないまま 何を描こ

          Light(歌詞)

          あのとき(自由詩)

          あのとき 食卓ではパンが焼ける匂いがして あのとき 東の窓からは光が差し込んで あのとき 拾ってきた猫が家に住み着いた あのとき 窓の木漏れ日は空気と絡み めくられないカレンダーと 静かに漂う時間を照らしていた あのとき 外の空気は澄んでいて あのとき 空はもう秋の色だった あのとき 私の時間の真ん中で うろこ雲を見上げていたのは 誰だっただろう

          あのとき(自由詩)

          セミのお客(短編小説)

          玄関の前に、羽が片方もげたセミがいた。 ジジジとひっきりなしに羽音をたてている。 まだ梅雨も終わっていない初夏、雨の日に挟まれた貴重な晴れの日だった。 美しく濃い水色の空に、薄く漂う雲。 太陽の光は強く、梅雨の終わりを錯覚させた。 ドアを開けると、セミは行儀の良いお客のようにドアの横にちょこんと座っていた。 「すみません、飛べなくなってしまったんです。 まだ梅雨も終わっていないのに、困ったものです。ほら、この通り。」 そう言って、ジジジと片方の羽で飛ぼうとして

          セミのお客(短編小説)

          はじめまして

          ただ何となくあっという間に過ぎてく毎日。 今日という日を形に残していきたいなと思い、 noteで作品を載せていくことにしました。 ジャンルにとらわれず、詩や小説、エッセイなど、オリジナルの作品を載せていきます。 この世界観好きだな、と思ってもらえる作品があればとても嬉しいです。

          はじめまして