あのとき(自由詩)


あのとき

食卓ではパンが焼ける匂いがして

あのとき

東の窓からは光が差し込んで

あのとき

拾ってきた猫が家に住み着いた


あのとき

窓の木漏れ日は空気と絡み

めくられないカレンダーと

静かに漂う時間を照らしていた


あのとき

外の空気は澄んでいて

あのとき

空はもう秋の色だった


あのとき

私の時間の真ん中で

うろこ雲を見上げていたのは

誰だっただろう





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