見出し画像

ジェンダー/古典の模倣と独自性:英国コートルードの美術史講座【2日目】

事前課題のレクチャー動画の再生回数が0回?

イギリス・ロンドンのコートルード美術館・研究所が開講するサマースクールをオンライン受講中。

2日目は、Zoomでディスカッション・セッションが始まる2時間前から、事前に見ておくレクチャー動画(約1時間×2本)を見始めるという暴挙に出ました(笑)。

ところで、レクチャー動画はYouTubeの限定公開になっているものを視聴しますが、今日の1本目は再生回数5回、2本目は再生回数0回になっていました。・・・誰も見ていないの?このカウントがおかしいだけ?

Zoomのディスカッションの参加者が1日目と比べて激減していたらどうしようと心配したものの、杞憂に終わり、ちゃんと15人くらいが参加者していました。

テーマの1つ目は「ジェンダー」

2日目は、ラファエル前派の絵画に見られるジェンダーとオリジナリティーが扱われました。2本のレクチャー動画のタイトルは次のとおりです。

Lecture 3: Approaches to Victorian art and Gender
Lecture 4: Modernity and the Old Masters: Watts and Leighton

ヴィクトリア朝の美術とジェンダーでは、絵画や文章で表象される当時のイギリスの「完璧な妻」「完璧な女性」の姿、その移り変わりを見ていきます。

ラファエル前派ではエリザベス・シダルをはじめとする女性画家もいましたが(彼女は男性画家のモデルも務めた)、ほとんどのメンバーは男性です。

そのため女性は、男性に従い家庭を守る妻や、結婚前は純潔、といったイメージで描かれました。文筆家として生計を立てていた女性でさえ、そうした女性像をよきものとして文章で語っていたそうです。

当時の絵では、優雅な中上流階級だけでなく、家庭教師や「落ちぶれて」娼婦になった女性も題材となっています。

ただ、19世紀のイギリスは、サフラジェットの運動などが起こり、少しずつですが以前と比べれば女性の権利が獲得されていった時代でもありました。

2つ目のテーマは「オリジナリティー」

2本目のレクチャー動画で取り上げられていた、巨匠の作品を模倣したラファエル前派(周辺)の作品は、そのような視点をあまり意識したことがなかったので面白かったです。

重点的に見たのは、ジョージ・フレデリック・ワッツとフレデリック・レイトンの絵画。

その前にダンテ・ガブリエル・ロセッティの作品も登場し、ボッティチェリやティツィアーノの絵と比較されました。ジョン・エヴァレット・ミレイの『マリアナ』とヤン・ファン・エイクの『アルノルフィーニ夫妻の肖像』の比較も興味深かったです。

ワッツの絵はルーベンスなどと比較されていました。それと直接は関係ないのですが、40代後半で16、17歳の女優と結婚したというプチ情報も出てきました。

レイトンはジョルジョーネやベラスケス、アングルと比較。どの比較も、共通点と相違点を洗い出していくことで、「オリジナリティー」がどこにあるのかを探ります。

今日のディスカッション・トピックは?

事前に渡されたディスカッション・トピックは次のとおり。

• Are ideals and stereotypes of gender supported or challenged in Victorian painting?
• How did Victorian artists approach the ‘Old Masters’?
• Can an imitation be original?

・ジェンダーに関する理想とステレオタイプは、ヴィクトリア朝の絵画で強化されているか、それとも対抗されているか?
・ヴィクトリア朝の芸術家たちは「巨匠」にどう迫ったか?
・模倣は独自性を獲得し得るか?

Zoomのセッションでは、これらのトピックを基に、講師が新たな作品も提示して、参加者たちが気付きなどをシェアしました。

英語での描写力

参加者はイギリス人が多く、発言するのも彼らがほとんどで、1人、そうでない(南米の)人もよく発言します。

描かれているものを観察し、それを言葉で表現する力がすごいなと思います。英語力もですが、気付く観点や語彙などの表現力が多様で豊富で、見習いたいです。

英語と日本語で発音が大違いの固有名詞、人名

ディスカッションの中で提示された絵画のタイトルに「Circe」とあり、英語で「スィルセー」のように発音していました。こういうときはたいてい描かれている場面で神話などの登場人物が題材だとわかるのですが、その絵の場合は不明でした。

そのため検索してみたら、日本語では「キルケー」。なるほど、だいぶ違う・・・。

西洋美術史の著名なアーティストの名前の発音が日本語と英語とでは大きく違うというのもよく知られているところです。例えば、ミケランジェロ(Michelangelo)が英語発音では「マイケランジェロ」になり、ティツィアーノ(Tiziano)は英語では「ティシャン(Titian)」と呼ぶとかがたぶん有名です。

チャットで質問できた!

1日目は何も発言できなかったので、今日は意を決して(大げさ)、音声はハードルが高いので、Zoomのチャット機能でごく短い単純な質問をしました。

もっとも、質問の英文がちょっとずれていたのか、知りたかった方向性とは違う答えが講師から返ってきましたが、ほんの少しだけディスカッションに参加した気分になれました。何もしないよりはましと考えることにします。

その後、ほかの人たちもチャットボックスを活用していたので、ライブセッションの場が活発化しているようで勝手にうれしかったです。

今日はZoom中に講師の自宅に配達の人が来て講師が一瞬離席するというハプニングも(笑)。

講義の動画とディスカッションできちんと理解できない部分もありましたが、3時間ぶっ続けで美術史に関する英語にどっぷり漬かって楽しかったです。

▼続く

▼コートルード美術館・研究所の講座のこれまでの受講体験記


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?