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Pan dei morti|ミラノの秋

ミラノの義実家に行っていた息子がこの季節のお菓子を持ち帰った。

Pan dei morti


Mortiは「亡くなった人」という意味で、よく「死者のパン」というような呼び方で紹介される。

カトリック教会では11月1日の万聖節(諸聖人の日)に続き、11月2日を万霊節(死者の日)としている。亡くなった方々を思い起こすという日で、特別にミサが捧げられたりする。
ということで、この季節にはミラノのどこのお菓子屋さんでもこのPan dei mortiが並んでいる。

手のひらにのるぐらいのサイズが一般的だ。
材料に砕いたビスケットが入るという一風変わった作り方で、他にドライフルーツや卵白、カカオ、シナモンなどのスパイスが入る。
食感はしっとりほろっと崩れるといったらいいか。ドライフルーツがたっぷり入るのでもちっとした感じもある。しっかり甘く、ふわっと漂うスパイスの香りはいかにも冬に向かうこの季節にぴったりだ。

インターネットには家庭で作るレシピもいろいろ載っているが、顔を見がてら馴染みの店に寄って買うというのがまたいい。

以前のようには歩けなくなった義母が、息子とともに行きつけのこの店に行き、買って持たせてくれた。
あれほど記憶力のよかった義母が、いまは銀行カードの暗証番号が覚えられないと言って紙に書いて持って歩いているという。「カードと一緒にしておくのはちょっと危なくないかな」と気にする息子だったが、今回はその紙を息子に渡して入力をお願いしたという。

Pan dei morti は私も好きだが、何より夫の大好物である。
故郷の季節の味を食べさせたいと思う母心の深さをあらためて尊く思った。


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