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ひとりで仕事をしない。専門的な職種でも、チームで「共有」しながら一緒に成長する方法

こんにちは。LINE校閲チームの伊藤です。

みなさんの職場には、自身の成長につながるような「共有」がありますか?
たとえば、成果を出した同僚がどのように仕事を進めたのか、その工夫をチームで共有するといったことです。

校閲者の仕事はひとりきりで文章と向き合う時間が長く、個々で作業が完結してしまう側面もあるのでノウハウが属人化しやすいですが、私たちの職場では毎日決まった時間を設けて、同僚の視点を自分の校閲に活かすための「共有」を行っています

当初は些細な取り組みだと思っていましたが、業務を続けるなかで共有のありがたさを実感してきました。

属人化しやすい職種の現場でどのような共有を行っているのか、またリモートワーク化でバリエーションが増したさまざまな共有の形をご紹介します。

同僚の視点から得られる「気づき」

読者に正しい情報を届けるために、内容に誤りがないかチェックすることが校閲者の仕事です。これまでの知識や経験をもとに思考を働かせ、疑問が生じたら一つ一つ調べながら入念に文章を読んでいきます。

しかし残念なことに、違和感や誤りに気づかないこともあります…。たとえば以下の一文に直したいところがありますが、みなさんはわかりますか?

誤字脱字や変換ミスといった誤りはなさそうですよね。
あとはGoogleで「la tomatina」と検索して内容が合っているか確認するだけでよさそうです。

パソコンで検索してみます。

引用元:Google 検索結果

確かに検索画面の左上にトマトのイラストが表示されました(トマトをクリックすると画面上にトマトを投げつけるギミックで遊べます)。

問題はなさそうなのでチェック完了…としたいところですが、同僚は違いました。スマートフォンでも検索したのです。


引用元:Google 検索結果

なんと右側にトマトが…!
同僚は以下のように指摘をしました。

「検索画面の左上」とありますが、スマートフォンで検索すると右上に出現するようです。昨今スマホでの検索も多そうですが、左上としてよろしいでしょうか。

校閲業務では主にパソコンを使うため、私には「スマートフォンでも検索してみる」という発想がありませんでした。同僚はパソコンとスマートフォンで表示が異なるかも、という可能性を考えていたわけです。同僚の校閲視点からしか得られない「気づき」でした

LINE校閲チームの校閲者は約20人。それぞれが持つ校閲視点から、チーム全体でみると毎日多くの指摘が生まれています。自分の仕事に集中しているだけでは、「気づき」のきっかけになる指摘はただ埋もれていくばかりです。誤りのパターンを知ることも、自分の校閲に活かすこともできません。

そこで毎日決まった時間に行うのが「指摘の振り返り会」です。終業時間の前にその日の指摘を一つずつさかのぼってメンバー全員で振り返ります。トマトの指摘はこの振り返り会で把握できたものでした。

校閲システムだからこそ「共有」しやすい

なぜ、指摘の振り返りを毎日簡単に行うことができるのか。それはパソコンで校閲できる環境があるからです。

校閲というと一般的には印刷された紙に赤ペンで指摘を入れるイメージだと思いますが、私たちの校閲方法では紙と赤ペンは使いません

リモートワークでの仕事環境

独自設計した校閲システムを通して校閲者はパソコンで記事をチェックし、指摘があればキーボードで指摘文を作成し、チャットツールを通して編集部に送信します。全員が閲覧できるオープンな場所で、誰が、いつ、どのような指摘を出したのかわかる仕組みになっているため、リモートワークでも簡単に振り返りが行えるというわけです。

振り返り会の最後には、最も参考になった指摘を話し合いのうえで選出し、その理由も添えてチーム全体にメールで共有します。たとえば以下のような形です。

●月●日の●●さんの指摘

・指摘内容
妊婦検診で病院を訪れた女性は、偶然にも中学校時代の友人と再会した。
「検診」→「健診」でしょうか

・指摘のポイント
「忘れた頃にやってくる間違い」との意見が多数上がりました。
見逃してしまいそうな指摘なので気をつけていこうと思います。

健診:健康診断の略語。健康状態の確認を目的とした検査
検診:特定の病気の有無を調べるために行う検査

健診と検診の使い分けに対して一層注意力が高まります。ほかにも、誤解を招くような見出しや、差別的な表現への指摘など、チームに注意を促すような共有が日々行われています。実際に「このパターンは振り返り会であった‥!」と校閲中に思うことも多々あります。

また、過去の指摘をさかのぼって調べることも簡単です。指摘文の作成時に「用語の意味・用法の間違い」などミスの種類も指定するので、蓄積されたデータの中からミスの種類を選んで一覧表示することができます。同僚の指摘を自分の校閲に活かしやすい環境は、校閲システムの存在があってこそといえるかもしれません。

ポイントは「発信しやすい」場所づくり

最近では、指摘以外の共有会も活性化しています。
同僚の自発的なアイデアによるもので、コロナ禍でのリモートワークが定着した今、コミュニケーション不足を補う一環にもなっていると感じます。

その一つが「しりとり豆知識」です。
毎週行う情報共有の定例会でも指摘の振り返りを行っていますが、もう少しゆるいテーマで全員が参加しやすいコンテンツを作ろうと発案されたものでした。

しりとり形式で豆知識を紹介すること自体に目新しさはないと思いますが、校閲者それぞれの趣味、興味、得意分野などから披露されるので、自分にはない個性が出て興味深いものになります。あらためて同僚の人となりを知る良い機会にもなっています。

以下は、しりとりでつながってきた豆知識の一部です。

ザッハトルテ → 天むす → 相撲 → うに → ニタリクジラ → ランドローバー → 罰 → つくね → ネーミングライツ → ツイッター → 「太平洋」と「大西洋」 → うるか → 科捜研の女 → 那須 → スタッドレスタイヤ → 八重洲再開発 → ツキノワグマ → (※略)→ 略字 → 十円玉などの硬貨 → 皆既月食 → 勲章と褒章 → うまい棒 → うるう秒

ちょっとのぞいてみたくなりますよね。
多様なジャンルの記事を読む私たちにとって、無駄になる知識などありません。たとえば「ツイッター」の豆知識では、便利な検索方法を知ることができました。校閲時にツイッターをチェックすることもあるので参考になります。

引用元:Twitter検索結果
検索窓で、「from:」以後に「ユーザー名」+「検索文字列」でそのアカウントのツイート内で文字列を検索できます。さらに、たとえば「since:2022-12-1」で日付以降のツイート、「until:2022-12-1」で日付以前のツイートを探すこともできます

もっとも、しりとりとしてつながっていないと知識を共有できない点は弱点でしょうか…。

そんなときはチャットツールでの共有方法があります。
ビジネス用語で使われる「For your information」の略から「fyi」という名前の共有用のグループをチーム内に作りました。「ご参考までに」という意味です。

チームに有益だと思う情報があっても、「全体共有するほどのレベルではないかな…」と遠慮してしまい、発信できない状況もあると思います。

「ご参考までに」という体裁なら発信の心理的なハードルが下がるうえに、受ける側も特にリアクション不要というルールにしているので気楽に共有しやすい形になっています。以下はその一例です。

■fyi
記事本文「馬場の真ん中から各馬をまとめて交わし去った」とあり、「躱す」の誤変換ではないかと思ったのですが、競馬用語だと「交わす」で抜き去るという意味になるようです。知らなかったので共有です。
参照URL:xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx

指摘の振り返り会は「指摘があったもの」を振り返るので、「指摘とは関係ないところで気になる部分があった」という共有は出にくい性格があります。「fyi」では調べ方や最新情報など、指摘に限らない共有を広くカバーできるのが特徴です。

共有を活かせるかは自分次第

今回の記事を書くにあたって「共有」をキーワードに整理してみると、個々が持つ知識、視点、キャッチした情報をチームに還元しあえる環境があることを再認識できました。

ご紹介した校閲指摘に限らず、業務の振り返りは自分ひとりでもできますが、仕事に追われていると余裕がないこともあります。意識的にチームで共有する時間や場所を設けることが大事だとあらためて感じます。

ノウハウを蓄積しながらチームで誤りを防いでいこうとする環境にあっても、文章に向き合うときはひとりきりです。日々の共有をありがたく吸収しながら、自分自身の校閲スキルの向上につなげていきたいと思います。

伊藤 貴彬(いとう・たかあき)
2018年12月入社。LINE株式会社ポータルカンパニー編集局校閲チーム所属。
サッカー雑誌・オートバイ雑誌の編集を経て校閲へ。オートバイ雑誌時代の弾丸日帰り企画(東京~山口往復2000km)など長距離運転の体力には自信あり。

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