社会、事業、組織を変えるサステナビリティ部の仕事─扱う領域もやりがいも拡大中!
TBMは2018年からサステナビリティに関する取り組みを本格化し、2022年2月には「サステナビリティ部」を新設しました。環境、社会、経済の中で、企業としてサステナブル(持続可能)であるための取り組みに加え、製品やサービスをいかにサステナブルなものにするか、データ、ファクト、ロジックを駆使して社内外のステークホルダーと協働しています。サステナビリティ部部長の羽鳥(写真左)と、2022年6月にジョインした荒川(写真右)の2人が、サステナビリティ部のミッション、業務領域とやりがいについて語りました。
サステナビリティを仕事にした、都会っ子2人の「原体験」
──サステナビリティ部に2022年6月にジョインした荒川さんが、環境問題と向き合うようになった原体験はどんなものでしたか。
荒川 育ったのは東京の練馬ですが、小さい頃から自然や生き物が大好きでした。小学2年か3年のころ、親に千葉の富津に釣りに連れていってもらって、ビギナーズラックでアナゴを釣ったんです。天ぷらにして食べたんですが、海で泳いでいたものを食べるということから、自然環境と生活のつながりを実感できたというか、あれが原体験となって、自然の中に生きている感覚を大事にするようになったんだと思います。特に、釣りにハマってからは素潜りの海士(あま)さんになるのが夢でした。
──羽鳥さんは以前のインタビューで、大学生時代にニュージーランドで見た星空に涙して「この景色を自分の子どもにも見せたい」と強く思ったことが環境分野に携わるきっかけだと語っています。それ以前、子ども時代は自然と触れ合う機会は多かったのですか。
羽鳥 僕も東京出身ですが、通っていた学校では林間学校もあったし、貝に関する検定のような自然教育のプログラムがあったり、親が夏休みに山梨の山奥まで虫取りに連れて行ってくれたりと、自然に触れる機会は結構多かったと思います。
荒川 うちも、週末は関東近郊の海や山に行くような家庭でした。
──2人とも都会っ子ゆえに親御さんが努力して子どもに自然体験をさせていたというパターンですね。家庭環境や家族との経験から得てきた金銭面以外の資産を「文化資本」と言いますが、家庭の文化資本としての環境教育がその後の仕事にも影響したというのは、なかなか興味深いです。
羽鳥 自然界にあるものを「これはきれいだね、ユニークだね」と提示され、自分もそれを尊いものに感じて大事にしなければと思うようになった面はあります。自然と触れることが“スペシャルなもの”であり、だからこそ仕事でそれに関われる喜びみたいなのがあるというのは、その通りかもしれません。
荒川 とはいえ僕は、最初の就職は環境とはあまり関係なくて、トラックメーカーの海外営業でした。でも、会社と家の往復ばかりの生活の中で、「自然が足りない!」という感覚になり、急に郊外に引っ越して、農業や狩猟、漁業をやったりして、自然とのつながりを確認するような生活を始めました。
仕事も自然や環境に関連したことをやりたいと思い、「地域おこし協力隊」として千葉の南房総市に移住者を増やす仕事に就きました。
──どんな仕事ですか。
荒川 移住体験のツアーを開いたり、イノシシを捕獲して食べる自給自足イベントをやったり、コワーキングスペースを立ち上げたりとか。仕事とは別に自分で畑をやっていたり、農業や漁業の手伝いなんかもしていました。活動自体は楽しかったのですが、収益的にはまるで自立できませんでした。地域おこし協力隊の契約は3年なのですが、経済的に回らなければ、続けることはできません。
また、元々自然に親しむ人を増やしたいという思いで協力隊の仕事をしていたので、50人くらいの方が南房総に移住してくれたことはとても嬉しかったのですが、移住まで踏み切る人は社会全体を見渡せば少数派です。環境に対して本当にインパクトのあることをやるなら、普通の人の生活の環境負荷を下げることに意義があると思うようになり、TBMに応募しました。
羽鳥 荒川さん以外にも何人も面接をしましたが、経済と環境の両立の難しさを実体験と共に知っていて、それをなんとかTBMでやりたいという思いが、一番しっかり伝わってきた人でした。あと、企業のサステナビリティ部門という領域自体は未経験ながら、「自分はキャッチアップする力や、新しく学ぶ力はあると思います」と、猛アピールしてきたのも印象的でした。そういうことを言える人ってなかなかいないと思うんですよね。
荒川 実際は、協力隊を卒業した後、何をするかは全く決めていなくて、カフェを開きたいと思って調理師の免許を取ったり、不動産屋になろうと宅権の資格を取ったり、自然体験のキャンプ場をやろうとキャンプ場で働いた時もあったし、ブレブレだったんですけど(笑)。
──意外と移り気なのは別として(笑)、短期間で資格まで取ってしまう勉強家ぶりがうかがえます。
サステナビリティが「武器」になったと実感できる瞬間
──荒川さんは、入社前と後で仕事に関する印象は想像通りでしたか。
荒川 TBMではサステナビリティを軸に、そこからできることを増やしていくという方針が決まったので、そこはすごくありがたいと思っています。
業務内容については元々、求人票に書いてあった業務内容が多岐にわたって、細かく書かれていたので、想像通りといえば想像通りですが、こんなこともやるんだ……みたいなこともあったりします。書かれていた以外のことも、どんどん出てきている感覚です。
羽鳥 TBM自身が短期間で変化しているという面もありますが、荒川さんが入ってくれたことでサステナビリティ部として取り組める領域が広がった部分もありますね。
──サステナビリティ部のような組織は今、多くの会社にあって、経営方針や事業戦略に対して、気候変動や資源循環などの環境問題や、人権・労働問題、地域社会への貢献などの観点を提言・発信することが求められています。一方、TBMの場合は事業そのものがサステナビリティの推進ですよね。事業成長そのものを担っているという点で、特殊な立ち位置のように見えます。
羽鳥 どんな会社でも、本質的には事業こそが社会との一番大きな接点なので、サステナビリティ部門が事業部門に働きかけることは必要だと思います。でも、TBMのサステナビリティ部門は、ライフサイクルアセスメント(LCA)という切り口で、素材や製品についてライフサイクル(資源採取ー原料生産ー製品生産ー流通・消費ー廃棄・リサイクルなど)を通じた環境負荷を定量的に「見える化」して、それをいかに改善していくかと、そのメリットをお客様にどうお伝えしていくかというところからスタートしています。起点がコーポレート側というよりは、プロダクトやビジネス側にあるというのは事実で、そこは今でも大事にしたいところですね。
荒川 確かに、営業支援で製品のLCAを提示して、それが商談の成立につながったりすると、サステナビリティがちゃんと武器になったという喜びがありますね。
──その他、サステナビリティ部の仕事のどんなところにやりがいを感じていますか。
荒川 自分の価値観とTBMのサステナビリティを進めていくという目的が一致しているので、どの仕事もやりがいとやる気を持って進められています。
今、メインで担当しているのは「環境マネジメントシステム」という仕組みの構築です。環境保全に関する目標を立て、それを達成するための体系的な体制をつくることで、結構長期の目標となります。工場や品質保証本部など、多くの拠点や部署と連携しながらサステナビリティを推進していけることにやりがいがあります。国際標準(ISO)に則った認証制度もあって、達成したと喜べるのは多分1年後とかになるんですけど、目標を細分化して取り組んでいます。
羽鳥 これまで、TBMでは環境に関する取り組みは一人ひとりの創意工夫に頼って進めてきたところがあるのですが、拠点も増えてきたことだし、各拠点で環境への取り組みを自律的かつ体系的に推進できる体制を作りたいという問題意識はもともとありました。荒川さんがジョインしてくれたのを機に着手することにしました。
──入社半年で、しかもサステナビリティ領域は未経験なのに、キャッチアップが得意だとアピールしたからか、なかなかの大仕事を任されていますね。
荒川 一から本読んで勉強したり、社内でも前職などでISOの経験があった人もいるので、そういう人に話を聞いたりしながら進めています。でも、知らないことをやるのは本当に好きなので、楽しいですよ。
扱う領域の広さ、深さ、時間軸の長さ。サステナビリティとは経営そのもの
──羽鳥さんはサステナビリティ領域のやりがいってどこにあると思いますか。
羽鳥 扱う領域の幅広さと深さ、時間軸の長さですね。サステナビリティとは自分ゴトを広げることだと思っています。身の周りの人のことだけを考えるのでなく、もっと広く地域的な広がりを考えるとか、テーマも環境だけではなくて人権まで広げて考えるだとか、時間軸も1週間後でなくて10年、20年、100年というスパンで考える、みたいな。
射程がどんどん広がっている領域なので、実装していく時にも考慮すべき事象がすごく大きい。それが飽きない要因になっていると感じます。そんな広がりを発見しながら楽しめる人が向いている仕事だと思います。
──改めて考えると、範囲も広いし、変数も多いし、しかも考慮すべき時間軸が長いというのは経営そのものですね。
羽鳥 TBMのサステナビリティ部が独立したのは2022年2月ですが、私がジョインした2018年からサステナビリティに関する取り組みを本格化してきました。その傍らで、TBM CAMPと呼んでいる全社のミーティングを運営したり、企業理念体系「TBM Compass」の策定にも関わったり、組織づくりという角度から会社に働きかけることに関わらせてもらってきました。
その過程で、TBMがサステナビリティを経営に組み込んで推進していこうという時に、さっき言った事業軸での貢献だけでなく、組織軸での貢献の重要性をつくづく感じました。ただサステナビリティレポートを毎年作って発行します、というような仕事ではないのは確かです。
社会や事業の変革をリードしたい「意志のある人」を求む!
──他社のサステナビリティ部門とも交流があると思いますが、スタートアップでここまでの規模で取り組んでいる会社って珍しいんじゃないですか。
羽鳥 そうですね。ありがたいことに「そこまでやられているんですね!」と仰っていただけることも増えてきました。中小企業の場合、国内の機関が出しているフレームワークに則ってものごとを進めることはありますが、TBMではグローバルな視座を常に意識しています。
例えば、CDP(企業や都市の気候変動・水セキュリティ・森林に関する情報を収集・評価している英国のNGO)のCO2排出量や気候変動への取り組みに関する質問書に2017年から自主的に回答しているとか、2022年にはSBT(Science Based Targets:温室効果ガス削減に対する「科学的根拠に基づく目標」)の認定を取得するなど、国際的な水準で、製品だけでなくコーポレートサステナビリティの取り組みをこのフェーズでやっているのは結構珍しいと思っています。
──サステナビリティ部としてまだやれていないと感じていること、今後やりたいことがあれば教えて下さい。
羽鳥 会社の規模が大きくなり、海外でのビジネスも拡大していく中で、サステナビリティの取り組みをTBMとして整えていくだけでは全然ダメだと思ってます。バリューチェーン全体を意識した取り組みをもっと進めたいんです。たとえば、原料のサプライヤーさんや、製造してくださってるパートナーの会社さんで環境や社会への配慮がどのように行われてるのかをもっと知って、自分たちが貢献できることを探してお手伝いするとか。ただ、そこは手間もかかるし専門性もいるので、 新しいメンバーと一緒に取り組みたいですね。
もっと身近なところで言うと、TBMのメンバーには、家でもサステナブルであってほしいので、そこを支援できるような会社の仕組みもつくっていきたいです。
──これからのTBMのサステナビリティ部に求める人物像を教えて下さい。
羽鳥 もしかすると、コーポレートのサステナビリティ部門って、 事業活動であまり良くないことしているのを覆い隠すために、きれいなストーリーを作ってプレゼンするみたいな仕事だと想像している人もいるんじゃないでしょうか。でも、そういう捉え方だと、なかなかその事業自体を変えるみたいなところまでたどり着けません。
実際には、TBMのサステナビリティ部は事業との繋がりも深いし、日常の業務で経営陣と関わることも多い。その中で社会を変えたいとか、事業変革をリードしたいと思っている方には、すごく向いていると思います。 未経験の方でも学ぶ意欲さえあれば、荒川さんのように入社半年で大きいプロジェクトを進めることができますし。学ぶ意欲の根源は、結局のところ「こういうことをしたい」という意志の強さだと思います。それがしっかりある方には絶対活躍できるように伴走していくので、是非ご応募いただきたいです!