昔、ピーターラビットに会いにいったお話②
1991年の夏、イギリス湖水地方のニア・ソーリー村を訪れた時の旅行記です。
はじまりのお話は、こちら。
いよいよ、ニア・ソーリーにやって来ました。
村は、もうすぐです。
後ろにいた小さな女の子は、何度も「ファンタスティック!」と叫んでいました。
本当に、その通りの場所です。
「牛に注意」なんて、こんなのどかな標識がたっています。
フェリー乗り場から、テクテク歩いて40分。ついに、ニア・ソーリー村に到着。
ピーターラビットの生みの親、ビアトリクス・ポターが晩年住んでいたヒル・トップは、村の1番手前にあります。
入口に、ほんの小さな案内が出ているだけなので、知らなければ、全然気づかずに通り過ぎてしまうことでしょう。
ヒル・トップは、本当にこじんまりとしたコテージです。
この可愛らしい家や庭の風景は、絵本の中にも度々登場しています。
ポターは、自分の家や牧場などを、ナショナル・トラストという機関に託し、自分が生きている頃と同じ状態で、後世まで残すように頼みました。
ポターは、この美しいニア・ソーリーが、文明の力によって壊されるのを防ごうとしたのです。
ですから、私たちは今も、ポターの生前と変わらぬヒル・トップを見ることができるのです。
ヒル・トップのドアをくぐると、まずこの部屋があります。落ち着いた感じで、いかにも居心地が良さそう。
家のあちらこちらで、絵本に描かれた家具や部屋など、そのままを見ることができます。
まるで、絵本の中に入り込んでしまったよう…。
こちらは寝室。
ヒル・トップには、日本人の観光客がたくさん来てました。ギフトショップで立ち話をしている、にぎやかな集団には、同じ日本人として恥ずかしく思いました。
ヒル・トップを出て、近くのティールームに入り、紅茶とスコーンを食べました。
お天気だったので、庭に出て、風に吹かれながらのお昼を楽しみました。
私の他には、サンドウィッチを食べている女性が1人だけ。この方も、ひとり旅のようでした。
静かにカチャカチャお皿を洗う音が、奥から聞こえてきます。
この店で飼われている小犬がキャンキャン鳴き出し、赤毛の女の子(まるでミュージカルのアニーそっくり)が、慌ててかけってゆきます。
窓辺には花が咲き乱れ、その周りをハチがブンブンうなっています。
私はこの、のどかなひと時を、心から楽しんでいました。
ところが、ここにもにぎやかな日本人グループがやって来てしまいました。
優雅な田舎のティータイムは、どこへやら…。
ティールームの空気は、さっと変わってしまいました。
紅茶のカップを持つ手を宙に浮かべて、ポーズをとりながら写真など撮りだすのですから、嫌になってしまいます。
ひとり旅をすると、どうしても日本人集団の嫌な部分が、目についてしまうのです。
脇道にそれて歩いてみました。
どの家も可愛らしくて、あちこちキョロキョロ見てしまいます。
古びた農家の納屋の横を通り、石垣沿いに、丘のてっぺんまで登ってみます。
石垣の見えるニア・ソーリーの風景は、絵本にも描かれています。
旅は、まだつづく…
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