ショートショート 笑顔の人
いともたやすく糸を絶やした午前10時、
僕は糸を買いに外へ出た。
すると、その2分後、
名前は知らないけど、
常に笑顔の人
という認識はあるおじさんの足を
踏んでしまった。
その瞬間僕は、
特に申し訳ないという気持ちもなく、
「あ、すいません」
って感じの対応を取ったんだけど、
おじさんはそれでも笑顔で、
なんならもっと笑顔になった。
それだから僕は、
なんか変な恐怖を感じて、
「いや、ホントすいませんでした!」
と全力でおじさんに頭を下げていき、
そそくさとその場を去った。
いやー、なんだあの笑顔。
ゾッとしたわ。
地獄に連れて行かれるのかと思った。
絶対、恐い人だろあの人。
前々から得体の知れない人だとは思っていたけど、恐らく恐い人だ。
あのまま、ちゃんと謝らずに去って行ってたらどうなっていたんだ?
もしかしたら、
火炙りの刑とかされたのかな?
されたかもな。
あー恐ろしい、恐いよもう。
今まであの人から挨拶されたら無言の軽い頷きで対応してたけど、それやめよう。
ちゃんと
大きな声で
挨拶をし返さないとダメだ。
じゃないと、
いつ火炙りの刑になってもおかしくない。
あー、あんな恐い人だとは思わなかった。
色々、態度を改めよう。
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