ショートショート テラシビト

ほんの少し前まで
闇の中を彷徨さまよっていた闇彷徨い人の俺は、
光照らし人になるべく、
日々、修行修行の毎日だ。

闇の中で苦しんでいる者がいれば、
懐中電灯を取り出し、
光を照らしてさしあげる。
それが光照らし人だ。

ただ、顔に光を当てるので、
「喧嘩売ってんのか!」
とブチギレられることが多々あり、
「いや、これは正義の一環でございまして」
などと訴えても、全く聞き入れられず、
ぶん殴られることが多い。
厳しい現実だ。
闇に囚われし者は気性が荒いし、
笑顔が少ない。あと、態度が悪い。
だから俺は余計なお世話かも知れないけど、
そんな人達に光を当てて、
闇の中から救い出してあげたいのさ。

俺が積極的に光を当てる対象としては、
ヤクザっぽい人や、ヤンキーっぽい人だ。
見かけたら必ず光を当てている。
だけれども、そういう人達なので、
毎度のように殺されかける。
その中で何回か泣かされたりもした。
生のサソリを食わされたりもした。

俺は敵ではなく味方なのに……。
圧倒的正義なんだぞ俺は。
なんで分かってくれないんだ。
分からず屋共め。
しかし、もうこの街には居られないな。
まだまだ俺は未熟だ。
未熟故に敵を作りすぎた。
組長らしき人間にスマホのライトを当てたのが、その一番の原因だ。
この街に居ては、いよいよ命が危ない。

でもあの時は懐中電灯の電池が切れていたから、しょうがなかったんだよ。
許してくれませんか組長?
並びに組員の方々。
無理なお願いなのかなぁ……。
まぁそもそも懐中電灯で照らされても厳しい人達だもんな。
ここは俺が去るべきだ。
もう命には代えられない。
今までありがとう、慣れ親しんだこの街。
そして、サヨナラ……。

という訳で、
やって来ました隣町!
早速、街の不良を見つけたので、
光を照らしていくぜ!

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