レーエンデ国物語~喝采か沈黙か~を読んで
これは、第一部、第二部のあらすじと、感想の続きになります。
今回は、第三部の『喝采か沈黙か』について取り上げていきたいと思います。
舞台は、テッサが処刑されてからおよそ100年後のレーエンデです。
長きに及ぶ戦争は終わり、平穏な世になり文化が発展します。蒸気機関車や劇場、ホテルなどが並び産業、文化が大きく発展しました。
しかし、この時代は、ウル族は森を焼き払われ、レーエンデ人は下級市民として自由がない奴隷としての生活を強いられることになります。
レーエンデ人は、レーエンデから出ることができません。イジョルニ人に買われないと出ることが許されないのです。出ようとしたら、外部逃亡罪により射殺されさてしまいます。
レーエンデ人は、檻に閉じ込められ完全に一切の自由が許されない奴隷階級と成り下がってしまいましました。
この回は、とある劇団の有名女優が産み落とした双子の話になります。
双子は、仲が良くいつも行動をともにしますが、性格や境遇が全く異なります。
兄の方は、天才戯曲家でバンバン名作を生み出します。彼はそんな自分の才能に絶対の自信を持っています。
弟の方は、そんな兄を尊敬しつつ強い劣等感を抱きます。周りの人からの凡人と天才の差について核心をついたグサリとくる発言に苦しみました。
私も凡人側の人間なので、読んでいて弟の葛藤や苦しみが痛いほど理解できました。
間近で天才的な人をずっと見てきて、それに比べ自分は何で何もないのだと、天を恨みたい気持ちが妙実に表現されていました。
彼らは、リスクを承知でテッサの活躍を戯曲にしようとあらゆる人に聞いてまわります。
憲兵に捕まりそうになるような、ハラハラする場面もありました。
弟のアーロンは、自分が凡人であることに苦悩しているのですが、彼はレーエンデの歴史に繋がるような大きなきっかけを起こしたのだと思います。
危険を顧みす、レーエンデの誇りに掛けて己の信念を貫き通した双子に、私は心を突き動かされました。
最後に双子が入れ替わる描写に、私は騙されてしまいました。
『僕は、やっぱり凡人だ。』と『調子の外れた声で歌って~』と、いう表現がヒントなのだと思います。
苦悩が巧みに表現されていました。
私は、何で、アーロウ目線で話が語られているのに、序章で紹介された名前が、リーアンなんだろう?と、ずっと疑問に感じてましたが、その理由がようやく解けました。
今回も、ハッピーエンドとは言い難い展開でしたが、この双子の活躍ぶりが今後のレーエンデの歴史に大きな変革をもたらすことになりそうです。
レーエンデ国物語は、一巻から三巻まで心ときめく本なので、是非とも読んで頂きたいです。
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