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兵庫県南あわじ市に移住した黒川香苗さんのLOCAL MATCH STORY 〜移住しなくて後悔するくらいなら 移住して後悔する方がいい〜

移住を経験し、地域で活躍されている人を紹介する「LOCAL MATCH STORY」。
今回は、兵庫県南あわじ市に移住された現役地域おこし協力隊の黒川 香苗さんをご紹介します。
そして、この記事は黒川さんご本人に執筆いただきました。

自己紹介

黒川香苗(くろかわ かなえ)

岡山県総社市出身
兵庫県南あわじ市 南あわじ市役所商工観光課(地域おこし協力隊)

大学卒業後、大阪の建材メーカーでデザイン開発を担当。退職後、夢だったゲストハウス開業に向け、生きた英語を学ぶため単身カナダへ。帰国後、開業に向けての準備をするうち、ひょんなことがきっかけで淡路島での仕事の紹介を受ける。現在は南あわじ市地域おこし協力隊として特産品の魅力を伝える活動をしながら、市内でゲストハウスの開業準備中。

南あわじ市は、便利な田舎リゾートアイランド

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写真:海はすぐそこ

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写真:淡路島と言えば玉ねぎ。友人の畑で収穫のお手伝いをさせてもらいました。

兵庫県南あわじ市は、南北に長い地形の淡路島の南部に位置する4万6000人の街。市の中央を走る神戸淡路鳴門自動車道によって、明石海峡大橋を経て神戸へ約60分、また、大鳴門橋を経て徳島へ約40分の距離にあり、利便性が非常に高いです。

温暖な気候なので一年中住みやすく、肥沃な大地と海があるため、農業・酪農・漁業が盛んです。なんと淡路島の食料自給率は100%を超えています。
京阪神からアクセスがいいのでリゾート施設も充実。田舎暮らしを楽しみながらリゾート気分も味わえます。

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自然がある場所でおおらかに暮らしたい

淡路島に来る一年前、私はカナダのトロントに住んでいました。トロントは日本で例えるなら「でっかい神戸」みたいな街です。海はないですが、南は海のように大きなオンタリオ湖、北は広大な自然に囲まれており、人々の暮らしと自然がいい塩梅で混ざり合っていて、みんなおおらか。そんなカナダのことが大好きになって帰りたくなかったのですが、ビザの関係もあり、あっさり帰国しました。

カナダのおおらかな暮らしから一変、大阪でのせわしない日常に戻ったわけですが、なんとなくしっくりこない日々を送っていました。そんな中、京阪神に住む知人から「淡路島でゲストハウスを開業したんだけど、現地で管理人してくれる人がいなくて困っている。興味があれば一度見に来ませんか?」とのお誘いを受け、ほぼはじめての淡路島へ。

神戸で待ち合わせて一時間ほどで現地に到着。想像していたより近くて非常におどろきました。物件を見に行ったあと、知り合いのみかん畑で収穫体験をさせてもらい、海辺をドライブしながら帰宅。一度行っただけなのに自然の素晴らしさにすっかり魅了され、ゲストハウス開くなら、大阪より淡路島がいいな~と思ったのです。

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写真:見学させてもらったゲストハウスからの風景

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写真:みかん畑での収穫体験

移住しなくて後悔するくらいなら 移住して後悔する方がいい

一度行っただけなのに「淡路島に移住したい!」という思いは日々強くなっていきました。にもかかわらず、淡路島には仕事のあてもない、旦那さんには「仕事を辞めてまで島には行きたくない、行くなら一人で行ってくれ」と言われ、八方塞がり状態。
そんなとき、知り合いに“地域おこし協力隊”の仕事を紹介していただきました。仕事内容は、特産品の販路拡大、淡路島の美味しいものを広める仕事ということで「こんな素敵な仕事ならぜひやってみたい!」と思い、いろいろ悩みながらも応募。数日後、無事に採用のお返事をいただきました。旦那さんも喜んでくれて大阪にはたまに帰ってくるという約束で、大阪⇔淡路島の二拠点生活をはじめることにしました。

離れて暮らすことになったので、夫の実家に移住の件を伝えに行きました。仕事を見つけて移住するんだし、文句はないだろうと自信満々で報告。そうしたらなんとお義父さんが大激怒!「近くにいて夫を支えるのが妻の役割だ」と昭和節をかまされ、私は大泣きして家に帰宅。ずっと泣いている私に旦那さんは「ウジウジしているくらいなら好きなようにやったらいい」と言ってくれました。(なので家族会議の結果、夫の実家には秘密で移住することにしました)

移住について、家族全員が賛成してくれるケースは稀だと思います。でもあの時思い切って好きな場所に移住してよかったと私自身は思います。なぜかというと、反対されて親が望むような生き方をしていても、いつも心の片隅に「もし移住していたら」という後悔の念が残り続け、ずっとモヤモヤしていたと思うから。

そして2020年3月、夫の職場がコロナ禍で原則テレワーク化。出社義務がなくなりどこでも仕事できる状態になりました。なので、思い切って大阪の家を引き払い8月からは旦那さんも淡路島暮らしをはじめました。2年越しに家族そろっての暮らしを実現でき、好きな場所で、好きな人たちと暮らせるありがたさを感じる今日この頃です。

早寝早起きの規則正しい生活

平日は8:30-17:00で地域おこし協力隊の仕事をしています。朝は部署の朝礼があるので市役所に登庁し、一日のスケジュールを部署のみなさんと共有します。そのあとは自由に活動できるので、特産品の販路拡大にまつわる活動や起業の準備などをしています。

休日は家族で新しくできたカフェを巡ったり、家のDIY、家庭菜園、海で散歩、温泉に入ってゆっくりしたりしています。大阪にいるときはよく飲みに行っていましたが、車移動なこともあり、居酒屋にはまったく行かなくなりました。夜にやることがなくなったので、早寝になり、自然と早起きにもなりました。

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写真:近所の農業公園イングランドの丘でBBQ

自分らしく暮らしている人にたくさん出会える

今の時代、通販で何でも買えるので、田舎暮らしでも特に困ることはないです。島は橋でつながっているので、送料も離島価格になることなく届きます。通販で買いづらい生鮮食品などは、産直で安く購入できるのも魅力です。都会に住んでいた時は、会社員の知り合いしかいなかったのですが、移住してからは、農家、漁師、職人、お店のオーナーなど自営の知り合いが増え、自分らしく暮らしている人が多い印象です。多様な暮らし方に触れることができ、型にはまった生き方から、思考が自由になった気がします。

移住先での住まいについて

【1年目】
物件種別:マンション
家賃:4万5000円
築年数:築23年
広さ:25㎡程度(1DK)
駐車場:あり

移住1年目は土地勘もまったくない状態だったので、不動産屋でおすすめの物件を3軒ほど内見。出した条件としては、高速バスのターミナルに徒歩で行けて、スーパーなどが近く、職場(市役所)に20分以内で通えること。結局、家具・家電がついていることが決め手になり、福良という漁師町のマンションに住むことにしました。福良の町は気に入っていたものの、漁師町ということもあり早朝からの作業音がうるさくて少し落ち着かないのと、物が増えてきたので部屋の狭さが気になっていました。

【2年目~現在】
物件種別:戸建
家賃:5万円
築年数:築45年
広さ:100㎡程度(4DK)
駐車場:あり

友人づてに平屋の一軒家を紹介されました。海水浴場やコンビニに徒歩で行け、国道から一本入った静かな住宅街。便利な割にゆったり暮らせるのが気に入って現在も住み続けています。ロケーションがいいので、この家を改装して宿泊施設にする予定で準備を進めています。

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写真:少し雨漏りがしていたので自分たちで補修しました

移住先でのお金事情について

3人暮らし(夫婦+1歳児)

【支出】
平均25万円程度(現在は家賃補助ありなので20万円程度で暮らしています)

食費:6万円(ほぼ自炊)
家賃:5万円(協力隊の任期中は5万円まで家賃補助があります)
教育費:4万円(娘の保育料)
交通費:3万円(車2台分のガソリン・保険・高速代など)
教養娯楽費:2万円(週末どこかに出かける程度)
被覆および履物:2万円(服はほとんどユニクロ化、靴はサンダルとスニーカー)
水道光熱費:1万5000円(島はガス代が高いのでオール電化にしました)
通信費:1万円(携帯、インターネット)
家具・家事用品費:5000円(洗剤・トイレットペーパーなどの消耗品)

【収入】
協力隊の収入が手取りで約15万円。業務時間外にデザインや記事作成などの副業もしているので、ひと月で1~2万円の副収入もあります。旦那は島に来てからも大阪の仕事をテレワークでしているので、収入は大阪時代と変わっていません。田舎で暮らしながら都会並のお給料がいただけるのは非常にありがたいことだと思います。

基礎的な部分は都市部と変わらずかかってくるのですが、家賃が安く、娯楽は山や海に行くような遊びが主なので、昼食代程度しかかからない。その分、安くなっていると思います。

移住先の暮らしで困ったこと

孤独が一番つらい
誰も知り合いがいない場所での新生活。孤独なのが一番辛かったです。ですが、思い切ってイベントを企画したり、地域のお祭りに出店したりしているうちに少しずつ知り合いが増えていきました。知り合いがいないから、協力してくれる人がいないからといって何もしないのではなく、勇気を出して一歩踏み出してみると、応援してくれる人がいるというのが本当に嬉しかったです。

地域おこし協力隊に応募した理由

豊かな食材の魅力をデザインの力で広めたい
食べ歩きや料理が趣味で、その延長で食材自体にも興味があり、旅先では道の駅に立ち寄ってご当地の食材を発掘するのが好きでした。そんな中たまたま訪れたのが南あわじ市。海・山・広大な平野があり、漁業・畜産業・農業が盛ん。ほとんどの食べ物が地元で生産されており、地元食材のバリエーションが非常に豊か、それがとても魅力的だと感じました。

南あわじの豊かな食材の魅力を自分の持っているデザインの力で広めたい、そう強く思いました。

地域おこし協力隊になるまでにやったこと

興味のある仕事が住みたい街にたまたまあっただけ
移住したい場所が決まっていて、そこで自分の興味のある仕事内容(特産品の魅力発信)の求人がたまたま南あわじ市の地域おこし協力隊でした。

地域おこし協力隊の活動内容

特産品の淡路手延素麺を使った食堂の運営
淡路島に来てすぐに紹介してもらった淡路手延素麺。むかしむかし、島民がお伊勢参りの帰りに奈良の三輪で素麺づくりに出会い、その製法を学び淡路島に持ち帰ったとされています。機械化されなかったので、手延べならでばのコシ・のど越しのよさがあります。

たまたま近所の製麺所の工房を見学させてもらったときに「食べてみて!」といただいたサンプル品。なんとなく食べてみたら、びっくりするくらい美味しかったのです。
“きっと私みたいに思う人ってたくさんいるんじゃないかな”とふと思いました。なんだか居ても立ってもいられなくなり、この美味しい食べ物をたくさんの人に知ってもらいたいと謎の使命感がフツフツと湧いてきたのです。

ということで、飲食店営業可能な古民家を間借りし、移住後4か月後、素麺シーズンの8月から、淡路手延素麺が食べられる食堂「南淡そうめん食堂」をオープンさせました。

もともと夏のみ2ヶ月の営業予定でしたが、イベントに出店したり、場所を変え営業再開したりしながら現在も活動を続けています。私が活動をはじめた時は素麺専門店がなかったので、いろいろなイベントに呼んでいただきました。(いまはめでたく製麺所さんが運営する素麺専門もオープンしています)

南淡そうめん食堂
Instagram:https://www.instagram.com/go_somen/?hl=ja
Facebook:https://www.facebook.com/gosomen/

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写真:淡路手延素麺を干しているところ

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写真:食堂で提供している淡路島の食材を使った創作そうめん

そのほかにも、SNSで地域の魅力を発信、特産品のデザイン支援、ゲストハウスの開業準備(卒隊後の起業準備)などをしております。

南あわじ市地域おこし協力隊(非公式)
Facebook:https://www.facebook.com/minamiawaji373okoshi

地域おこし協力隊の受け入れ体制や関係する人々

いい意味での放置状態
私の地域は受け入れ時に「特産品の販路拡大」というミッションこそありましたが、配属後はこんなことをしてほしいという具体的な指示はほとんどありませんでした。市役所から頼まれるのは、たまにある都市部で行われるPRイベントの手伝いをしてほしいということくらい。なので、日々の仕事は自分から主体的に動いて作っていきました。それについて特に何も言われることもなく、いい意味で放置されていました(笑)。でも、やりたいことを相談すれば適切な人を紹介してくれたり、職場のみなさんは基本受け身ですが親切にしていただいています。やりたいことが明確な人にはいい体制だと思いますが、なんとなく就職した人にとっては酷な体制だと思います。

地域の人との関係構築

とにかく動いていろいろな人に会う
いきなり地域に入っていく勇気もなかったので、自治体などが開くまちづくりワークショップなどに参加したり、自分でもイベントを開いて参加してくれた人たちとFacebookなどで繋がっていくうちに、自然と知り合いが増えていきました。

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写真:活動の一環で企画した流しそうめんイベント

地域おこし協力隊の3年計画

【1年目(2018年4月~2019年3月)】
地域を知る
とにかくたくさんの人に会い、たくさんのイベントに参加して知り合いを増やしました。自分でもイベントを企画して場づくりも行いました。

【2年目(2019年4月~8月)】
自分の活動を広げる
1年目に種まきしたことで、自分から動かなくてもお誘いを受けることが多くなり、自分の活動に集中することができました(妊娠のため8月から産休・育休を取得)

【3年目(2020年6月~現在)】
卒隊後を見据えての活動
午前中はいままでやって来た活動を続けながら、午後からは卒隊後の起業(ゲストハウスの開業)の準備を行っています。

地域おこし協力隊卒業後にやりたいこと

多目的な宿の運営
繁忙期は宿泊施設として旅行者をもてなし、閑散期は全国定額住み放題サービスの拠点としてリモートワーカーの受入を行いたいと考えています。

南あわじ市に住んでいる私自身が宿の管理者となることで、地域との交流の機会やユニークなローカル体験、その地で暮らしているからこそ分かる情報をお客様に提供したいと思っています。ローカル体験のメニューとしては、農業、漁業、瓦クラフト、ヨガ、マリンスポーツなどを予定。地域の方にも集会などで使っていただけるように時間貸しプランも検討中です。

地域おこし協力隊の魅力

市役所の信用を借りて活動できること
市役所の中で働いているというだけで「移住してきたよくわからない人」から「なんとなく信用できる人」という認識になるようで、地域の人にも割と親切にしてもらえた気がします。一個人がいきなり、○○したいといってお願しても承諾してもらいないことが、市役所の人になることでイベントなどの許可が下りやすいといったメリットがあります。田舎での市役所の信頼度はすさまじいなと感じます。

地域おこし協力隊の大変なところ

税金でお給料をいただいている責任
給料が税金から出ているので、これは街の役に立っているのだろうかといつも自問自答しています。地域のみなさんに活動内容を説明するときは毎回ドキドキします(苦笑)

移住検討している方へメッセージ

自分が大切にしたいことは何か考える
私は海の近くに住みたいという強いイメージがありました。それがずっと頭の中にあって、淡路島に来たときに「ここだ!」とピンときました。したい暮らしが明確になれば、いろいろなところに出かけるうちに、ピンとくる場所に出会えると思います。
家族と一緒に暮らすというのは素晴らしいことですが、家族に反対されても、毎日一緒に居ることが出来なくても、自分が心地よいという気持ちを大事に行動してほしいと思います。なぜなら、自分が幸せな気持ちじゃないと家族を幸せにすることは出来ないと思うからです。大阪⇔淡路島で二拠点生活をしていた1年半、一人暮らしで寂しいときもありました。だからこそ旦那さんの存在のありがたさに気づいたし、大事にしたいと思えました。そして、たまに行くからこそ大阪のよさにも気づくことが出来ました。
私の地方移住ストーリーが迷っている方のお役に立つことが出来ればうれしいです。

(終わり) 執筆時期:2020年9月

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