千葉県市原市に移住した掘エミイさんのLOCAL MATCH STORY 〜地元を愛してきた人たちの暮らしと文化を受け継いでいく〜
移住を経験し、地域で活躍されている人を紹介する「LOCAL MATCH STORY」。
今回は、千葉県市原市に移住された現役地域おこし協力隊の掘 エミイさんをご紹介します。
そして、この記事は堀さんご本人に執筆いただきました。
私の自己紹介
掘 エミイ/1980年市川市生まれ。
音楽大学に進学後、舞台やダンス公演への出演を続けるかたわら、米大リーグ「LAドジャース」傘下の野球選手等プロアスリートへのヨガ指導をはじめ、都内・千葉を中心に15年以上のキャリアを積んできました。
穏やかな空気の中で身体がみるみる元気になっていくヨガを用いて過疎地域の活性に貢献できないかと2018年秋から市原市で個人的に活動をしていたところ、市原市の市長から「協力隊になってみないか?」とお声をかけて頂いたのをきっかけに、2019年7月より同市の地域おこし協力隊制度に則り採択され、東京から養老渓谷へ移住いたしました。
「里を営むヨガ講師」として、地域活性のためのレッスンイベントを中心に、自生している野草や樹木と里山の流通再生を目指す「渓谷アロマブランド〜ya-sauge(野草樹)〜」
畑を新たな教育現場として活かし、クリエイティブな発想と自主性を育む
キッズイノベーション事業「畑のがっこう」も立ち上げ予定しております。
私が移住した地域はこんなところ
市原市について(市原市ホームページより)
人口27万人超、工業地規模は全国第2位。
財政規模は年度間907億円弱、ゴルフ場の数は日本一。
市原市を象徴するデータをパッと見ただけでは、よくある「地方都市」を真っ先に想起させるかと思います。
▼市原市について
https://www.city.ichihara.chiba.jp/joho/liveinfo/about/index2.html
しかしながら、
市原市を縦に3分割した最下部「加茂地区」の資料を見ると、
「人口約4900人」
「高齢化率5割以上」
「休耕地の増加」など、
15歳以下の子供に至っては240人しかおらず、毎年のように学校施設の統廃合が行われています。
まさに「過疎化・高齢化・若手世代の後継者不足」という、地方が抱える代表的な課題がそのまま表されているかのような数字が並んでおり、20〜30年後には消滅してしまう可能性のある集落は増加するばかりです。
「人口減少は全国的な傾向にあるからある程度は仕方ないのではないか」
そんな意見もあるかもしれませんが、そのまま見過ごしていくことでどんな事態が起こるかを予想したことはありますか?
少なくとも市原市においてはまだまだ課題解決はもちろんのこと、日本が本来誇るべき豊かな自然資産や里山の原風景、住民の方々の篤い地元愛が再評価されるべき機会は多分にあるのです。
前述の課題に先んじて危機を感じて主体的に動かれている地元住民が原市内は大変多く、行政や編集社発信はもちろんのこと住民発信のローカルメディアも地区ごとに複数あり発信力も行動力も、若者の存在あるなしにかかわらず以前から活発だった模様です。
【自治体・編集社メディア】
・広報いちはら
・シティライフ
・ちいき新聞
【地元住民発信のメディア】
・伝心柱(市原中部〜南部)
・加茂里山通信(市原南部)
市内を縦断する形で走るローカル線「小湊鉄道」沿いの景観を美しく保とうと、ボランティア団体も複数活動しており、平均年齢70歳越えとは思えないほど皆さん精力的に整備活動に励んでいます。
整備された土地には毎年1000人近くのボランティアさんが菜の花の種をまいてくださるおかげで3月には見事なまでに一面眩しいぐらいの黄色い菜の花が満開になり、旅行者に喜ばれています。
菜の花畑でヨガレッスン
私も今年はこの菜の花畑でヨガレッスンの写真を撮る事ができました。
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なぜ移住しようと考えたのか
都内には都内の良さがあり、地方には地方の良さがあると思っていますが、これからは地方の良さを再認識することで日本の未来が拓かれていくし、その必要性を今の都市部を取り巻く問題に投影されていると私は思います。
市原南部もそうですが、地方の里山・里海はとにかく豊かなのです。
移住する数年前のお盆休みに訪れた、ローカル線「小湊鉄道」の無人駅で、
「なにもしない、でもすごく豊かな時間」を過ごす瞬間があり、我々が時代の混沌の中で起き忘れてきてしまったものがここにはあると、そう思いましたし、これからは地方がどんどん面白くなっていく、活性度が上がっていくと先見性を発揮した起業家たちの勇敢な背中に私も感化されました。
加えて、ヨガ講師という職業は場所を選ばずできると言うのと、それまでに起業や事業のスタートアップについてはある程度勉強してきたのもあり、適切な機会があれば移住もありだなと考えていました。
移住するまでこんなことありました
そもそも20年近くずっと都心を拠点に仕事をしていたこともあり、都内の暮らしに特段の不満もなく年月が経過していましたし、本当のところを言うと
つい3年ぐらい前までは移住したいなんてこれぽっちも考えていませんでした(笑)
思えば10年ぐらい前にまだその当時存命だった母親が突然、市原南部に家を購入したところから私の移住へのきっかけは始まっていたのかもしれません。
都心を拠点に仕事をしていた私はそれはもうビックリするしかなく、「私は絶対そっちにはいかないからね!」なんて喧嘩をしたのを覚えています(笑)
それでも連日ニュースで流れてくる地方で起こる問題や事件の影に、若者の流出や過疎化が少なからず起因しているであろうことは地方創生に明るくない当時の私でもなんとなく推し量れるところがあり、決して他人事ではないと胸に引っかかるものがありました。
そんなモヤモヤが蓄積されていた頃、転機が訪れました。
当時お勤めしていた会社を退職し、都内で起業準備をするために東京都が運営していた丸の内の起業支援施設で開催されるイベントの中で「地方創生」がテーマになった企画に参加。
「ローカルベンチャーってなんて面白そうなんだろう!」と、直感的に強く惹かれるものがありました。
都内で起業もしており順調に軌道に乗ろうとしていましたが、「ローカルベンチャー(地方活性化を軸点にした起業)」にとても興味が出てきました。
とはいえ、いきなり完全移住するには特段雇用の枠があるような企業がある訳でもありませんし、自分で会社を設立して収益を得るには準備期間も資金調達も必要です。
幸いにも母が購入した家は市原市南部にあり、都内から往復できなくはない距離感だったので、2018年の中頃から「二拠点生活」を視野に入れて活動し始め、平日は都内でヨガのスタジオレッスン、週末は市原南部でイベント企画を開催したり、市内で活動している若手プレイヤーとの交流が始まりました。
移住を決断した最後の決め手は「地域おこし協力隊」への採用です。
2019年に着任しましたが、その前年から市内南部で活動している私の様子を見てくださっていた方を通じて、市原市の市長直々に「協力隊になってみないか」とお声をかけていただきました(笑)とはいえ推薦枠などはありませんので正規の手順で応募の上、おかげさまで採択いただき今に至ります。
協力隊の枠は狭き門ではありますが、地元の方々との健やかな信頼関係を積み重ねながら活性に向けてのスタートアップをしていくには本当に良質な制度だと私は思います。
移住後のライフスタイル
近頃は来年春ローンチ予定の事業の立ち上げ準備やアロマブランドの販売オファーがありつつ、思いがけずお仕事の依頼や取材が立て続けにあったりしてかなり忙しくなってしまって生活リズムが崩れがちなのですが(笑)、通常モードの場合はざっとこのようなルーティンで動いています。
・午前中:自家製野草茶を一服、畑の作業、洗濯、集落のお年寄りたち向けヨガ教室の指導
・午後:畑の作業、打ち合わせ、備品の買い出し
・夜:資料作成や事務作業、オンライン会議
今年から生まれて初めての畑デビューしました!
都内に住んでたころは家庭菜園すら全くやったことがなく、花屋で買ってきた花すらまともに生けられずに枯らしてしまうような生活だったこの私が、、、!
人の心境の変化というのは本当に不思議なものです。
50年以上休耕地だった土は有機物と栄養満点でほぼ水しかあげてないのに作物がびっくりするぐらいスクスク育ち、夏野菜が面白いぐらいたくさん取れました。
とれたて野菜で作るご飯は最高!のひと言。
なすはプリプリと肉厚、ミニトマトはフルーツのように甘く、シソや香草系は濃くて良い香りで、まさに生きていることを感じさせてくれる。
「そうだ、野菜は生き物だったんだ」と、改めて実感します。
休耕地を50年ぶりに復活させて畑づくり。有機物たっぷりの肥沃な土壌のおかげでオーガニック・無農薬で野菜がすくすく育ちました。
ご近所もみなほとんど農業が暮らしに根づいているし直売所も目と鼻の先にあるので、何苦労することなくフレッシュで美味しい野菜がすぐ手に入るため、心なしか健康状態も良くなった気がしているし、都心部に住んでいて健康志向が強かったり食生活に気を使っているような人からすると、喉から手が出るほどに贅沢で豊かな暮らし方だと思います。
そして「畑のある暮らし」になった途端に、メリハリのある時間の使い方になりました。
畑は日中・晴れた時しか基本的には作業しないので、雨天の日や夜に主にパソコンを使った作業をするようになりました。
まさに「晴耕雨読」を地でいくライフスタイル。
畑はほぼ毎日手入れをしないと簡単に草だらけになるため野良作業の時間確保は結構重要。
そのためデスクワークに割ける時間が限られてくるのでむしろ集中して作業するようになり、長時間作業で変に脳みそを消耗しているような感覚にはなりにくいかも。
そろそろ冬野菜の準備をしたいので、早い所通常モードに戻りたいです(笑)
「畑をやりたい」と伝えたらたくさん苗をおすそ分けしてくれた集落のご近所さん
移住先での住まいについて
本当にラッキーなことに生前母親が市原南部にある民家を購入し、かなり手をかけてリフォームしてくれていたため、家具も全て揃っており私はそこへ身ひとつで転居することができました。
女性が単身で移住するのはまだまだかなりハードルが高いところ、私の場合は本当にラッキーだったと思いますし、住居環境が整ってなければ安全面を考えると移住や協力隊としての活動には至らなかったかもしれません。
いわゆる庭付き戸建ての平屋ですが、現在は私の後を追って東京の家を引き払って引っ越してきた父親と2人暮らしで、間取りとしては過負荷なくちょうど良いかなと思っています。
移住先でのお金事情について
幸いにも協力隊制度を活用する形で移住してきたので、当面の生活費用などは保障されていますし、ご近所さんが皆さんほとんど畑や田んぼをやっていらして何もなくてもとにかく野菜やお米をたくさんいただくため(市原は実は米どころ)、外食が続かなければ食費はあまり、、、というかほとんどかかりません。
家賃も私はかかっていませんが借りるとなったとしても戸建てサイズでも破格の値段かと思います。
ただ、どうしても車がないと生活にはかなり不便するので車の購入は必須に近いかと思います。
ガソリン代や維持費も発生するので協力隊の任期終了後は地味に影響のある出費になってくるかと思います。
また、山間部や寒冷地だと暖房費用がかなりかさんでくるはずですので、移住をご検討の際は現地でかかる光熱費の相場を調べておくことをお勧めします。
移住先の暮らしで困ったこと
幸いにも移住先特有の悩みに長期的に困った事はないのですが、去年2019年に発生した台風15号・19号そのあとの大雨による水害でちょうど市原市は被害が直撃し、私の地域活動も大いに影響を受けました。
山間部や地方はまだまだ上水・下水の整備環境は進んでおらず上水は電気で汲み上げているため、停電と断水がセットで発生してしまい、それが約半月も続きました。
移住後まもない時期だったので土地勘もほぼなく、夜間は目を開けてるのか閉じてるのか分からないほど真っ暗。。。かなり困惑しましたが、幸いにも近隣の方がまめに声をかけてくださったり友人も物資を送ってくれて本当に心強かったです。
ようやく被災状況も落ち着いて「さぁこれからだ!」と言う時に、今度は新型肺炎が猛威を振るい、今もなお影響は続いています。
国も何とか経済活動がこれ以上低迷しないように施策を講じて奔走していますが、だからと言って新型肺炎の感染力が弱まった訳では全くありません。
いつどのタイミングで何ができるのか、どこまでできるのか、、、、状況の見極めが非常に難しく気の休まる瞬間は正直なく、いついかなる時も自問自答の連続です。
ならば尚更、自分ができることを最大限、かつコツコツと根気よく取り組み、アクセルとブレーキを踏み換えながら進めていくしかないと、日々腹を据えて取り組んでいます。
地域おこし協力隊に応募した理由
2018年の半ごろから市原南部や近隣の自治体にて若手のプレーヤーさんたちと交流したり、 ヨガイベント企画を立てたりしておりましたが、当初は協力隊になることは検討していませんでした。
ただ、二拠点生活をするには私の移住先と都内は電車移動だとなかなか時間がかかるため、移住したい気持ちはあるけど、上手くいかず路頭に迷ったらどうしよう、
という気持ちがぶつかり、応募締め切りギリギリまでずっと悩み続けましたが、未知の世界に飛び込んでいくワクワクの方が勝ち(好奇心旺盛な性分ゆえ)
「とにかくやってみよう!後はやってみてから考えよう!」
という勢いで応募しました。
それが果たして良かったのかどうかと言えば、結果として私としては腹を据えて活動できるような流れになったので、現時点では「本当に良かった!」と思えています。
地域おこし協力隊になるまでにやったこと
結果として協力隊になる道を選択するに至りましたが、
1年かけて移住先になる現地に足を運び、そこにどんな課題やニーズがあるのか、自分なら何をして解決の糸口を見出せるのか、頼れる仲間や地元の方々などがいるのか、などなどを時間をかけて把握していく中で、自然と現地で活動する若手のプレーヤーたちとの交流が生まれていきましたし、協力隊になってもならなくてもそのプロセスが自分にとっては非常に有益だったと思います。
また、協力隊のとして地方活性のための事業の立ち上げがひとつのミッションなので、先進事例を調べたり、先に成功している社会起業家の方の話を聞きに行ったり、ローカルベンチャースクールに入って勉強しました。
興味関心のある地域があるようであれば、事前にこまめに足を運んでみたり、特にまだこれといった地域がなければ友人のつてを頼って現地案内をしてもらうのもありかと思います。まずは自分で足を運んでみることが大事だと思います。
地域おこし協力隊の活動内容
現在3つの事業の開始および立ち上げ準備を行なっております。
旅ヨガいちはら
地域交流体験を目的としたヘルスツーリズム。
里山のど真ん中でヨガによるリフレッシュ体験を楽しみながら、おばあちゃんたちに習う漬物・味噌づくりを通して日本人として生まれ育った原体験感覚を刺激。
またヨガをしに行きたいと言っていただけるのも嬉しいですが、
「またあのばあちゃんに会いに行きたい」と思ってもらえるような、
「ばあちゃんの孫になろう」がサブコンセプト。
「旅ヨガいちはら WEBサイト」
「旅ヨガ youtubeチャンネル」
旅ヨガいちはらの様子
渓谷アロマブランド〜ya-sauge(野草樹)〜
古来から原生する野草と樹木に含まれる成分の効果効能や抗酸化能力、
本来我々が持っている生命力や美意識を引き出す香りや美味しさに着眼したジャパニーズハーバルアロマブランドの商品開発。
野草や樹木をブレンドしたティーや芳香目的のアロマスプレーなどを手がけ、市原市の里山の本来的な美しい強さとそれらを長く守らんと地道に活動されている環境保全団体のエールブランドとして発信していく予定です。
「野草樹」(インスタグラム)
《渓谷アロマブランド〜ya-sauge(野草樹)〜》
原生する野草や「クロモジ 」と呼ばれる樹木からブレンドティーやアロマスプレーを商品化。
畑のがっこう(来年春正式スタート予定)
「畑で子供達のイノベーションを育てる」をテーマに、ただの農業体験にとどまらず、子供達の斬新で柔軟な発想力を思い切り育てていけるイノベーションラボとして畑が非常に有益な教育現場になると見据え、地域の方々から畑のセンパイとしてご協力・指導していただきながら子供たちが自由にキャリアデザインしていけるような機会を生み出す。
「畑のがっこう」(フェイスブック)
畑のがっこうの様子
根底にあるテーマは、
「地元を愛してきた人たちの暮らしと文化を受け継いでいく」
生涯現役な地元の年寄りたちが本当に元気で、さすが子供時代に野山を駈けずり回っていた人は違うなぁと感嘆することが度々あるのですが(そして時々ハラハラしますが笑)
やはり自然の理に即して生きていく生活様式が、結果的には心身ともにもっとも健全で元気なコンディションをもたらしてくれるのだなとそばで見ていて実感しており、それを少しでも世の中に発信できたらと考えています。
地域の方々向けのコンテンツとしては、市役所の健康増進プログラムとして職員向けのヨガ教室・サッカースタジアムでのヨガイベント開催なども実施したり、「集落」と呼ばれる集合世帯地域があり、地元の方々や65歳以上の高齢者の皆さんの交流活性を目的にしたヨガ教室を開いてレッスン指導をしています。
ヨガ教室を開催することで移住者である私と地域住民との間に信頼関係が生まれ、別の若手世代がスタートアップしている事業を地域の方々へつなぐ橋渡し役ができたりすることで二次的な地域活性効果も生まれ始めています。
地域おこし協力隊の受け入れ体制や関係する人々
市原市に関しては「拠点形成推進課」というセクションが協力隊のマネジメントをしています。
市内の最南部から市役所までは車で片道1時間かかること、地域活性の拠点は南部に位置していることもあり、役所にデスクやタイムカードはなく定例会議も月1回なので、会議以外の時間を南部の活動全てに充てることができて非常に合理的です。
初代の協力隊OBの活動も他の自治体に着目されておりますが成功の秘訣のひとつとして、市役所の担当部署が協力隊の意見にしっかり耳を傾けて体制を整っていったことが挙げられると思います。
基本的には南部の活性につながることなら自由にプランを組み立てて動いて良いということになっており、判断に迷うことがあれば適宜相談しています。
事業によっては観光・農林業・商工業などのセクションをまたぎながら相談する事もたびたびありますが、観光から移住まで、ほぼ間仕切りがなくなりつつあり今後はより一層その傾向が強まってくるであろうことを感じているので、縦割り業務を感じさせない関係性がこれからの地方行政のスタンダートになっていけば良いなと思っております。
また市の職員さんは地元出身の方々も多く地域活性に対するリテラシーも高く、里山の整備活動にも自主的に参加されている方が多くとても素晴らしいと感じております。直属の職員さんだけでなく他の部署の方々も非常に協力的です。
地域の人との関係構築
協力隊の制度が始まる遥か昔から、地元の当時若かった世代の中でも「衰退し始めている危機感」をいち早く察知して奮闘されてきた人たちが幸いなことに市原市には一定数いて、ただそこに時代の流れや社会制度が追いついてこなかっただけで、「地元の活気が失われてはならない」と奮闘してきた方々の姿というのを現地で追いかけることができます。
そんな、昔から地元を守ってきた年寄りたちの思いや原体験こそがその地域の何よりの財産と創造性の宝庫であり、そこを大事にできない事業ではそもそも地域活性は成り立ちません。
そして、より本質的な成果を生み出せる事業を構築しようとしていくことで、地元の方々からの応援と若い世代へ託してくださる信頼が生まれるのだと思います。
地元の方々と移住してきた若い世代とが互いにリスペクトしながら気持ち良く交流できる場があるかどうか、そこに良質な関係構築・地域づくりのカギがあると思います。
そのカギを握るのは地元出身のミドル世代。
一見すると保守的な年寄り達もミドル世代が間に立ってつなげてくださることで移住してきた若い世代たちもスムーズに面通りができて変な摩擦なく地域に入り込んでいくことができます。
クローズアップされにくいですが、彼らの活躍が実はとても重要です!
協力隊制度にある程度の理解度がある地域なら、移住してきた若い人たちも入り込みやすいかと思いますが、まだそういった前例がない場合は、50〜60代ぐらいの世代を探してみてください。
地方地域で育った彼らですがまだ若い世代とも話が合いやすいので相談に乗ってくれたり、地元の年寄りたちとつないでくれるキーマンになってくれるような人物がいるかもしれません。
そういう人はパッと見ぶっきらぼうでも意外と世話好きだったりします(笑)
地域おこし協力隊の3年計画
「リアル(オフライン)/オンライン」
「ハードコンテンツ/ソフトコンテンツ」
この2軸・4視点が地方事業では基盤になると個人的には考えており、前述の事業内容も上記を意識して組み立てております。
任期1年目:旅ヨガ事業立ち上げ
2年目:畑のがっこう・渓谷アロマブランド事業立ち上げ
そして、来年度の任期3年目にはそれらの事業を携えて会社を設立し、1年かけて地ならしを行う予定です。
3つの事業では、
・実際に足を運んで体験すること
・地元の人たちと交流すること
・建物や場所の世界観を楽しむことと、
・オンラインで物販購入をすることで体験・体感すること
を網羅していますが、根底にあるのは
「地元を生きて地元を愛してきた人たちの暮らしと文化を受け継いでいく」
というテーマが軸であり、ここがブレることはありません。
地域おこし協力隊卒業後にやりたいこと
3年目の会社設立の目処が立ってからになりますが、他のプレーヤーたちの活躍も発信できるようなメディア兼ECサイト事業の立ち上げや、ヨガも野良作業もどちらも美しく楽しめるワークウェアも開発したいです。
今後もっと地方活性の分野には行政も民間も注目してくると思いますので、お互いより豊かな成果を出せるような関係づくりを提案・立案できるぐらいに自分の経験値を積んでいけたらと願っています。
地域おこし協力隊の魅力
移住することが基本条件なので、しっかりと地域に飛び込んでチャレンジできる環境になりますし、それによって「やるならとことんやろう!」というやる気が引き出されてくると思います。
地域の方々もそんな姿を見て放っておく訳がなく、「しょうがねぇなぁ」なんて言いながらなんだかんだと皆さん面倒を見てくださいますし、それが特に年寄りたちを元気にさせる一番の力になっていくと思います。
協力隊任期の年月というのは圧倒的に濃密な体験が凝縮されています。
時には大きな壁や見えない不安も募るでしょう。
けれど、ふとした時の地域の方々の笑顔にほだされて、「また頑張ろう」と足を進めていくことができてしまうのです。
「この地を守りたい」
移住した先がたとえ生まれ故郷じゃないとしても、私にはいつしかそういう気持ちが芽生えてきました。それこそが協力隊で得られるの一番のやりがいなのかもしれません。
地域おこし協力隊の大変なところ
いかんせん任期が最大3年と限られている中で成果を上げていかなくてはならず、とはいえスピード感だけで推し進めていけないデリケートな課題もあったりするため、押し引きを繰り返しながら熱量を絶やさず前進し続けていく根気強さがカギになってくると思います。
同じ協力隊として成果を上げている人たちも一定数いることで変に意識してしまうこともあるかもしれませんが移住したその地域が本来もっている強みを見出して成果を出すことにただただ集中していく、、、そこに専念することが大事です。
地域が本来持つ強み、、、誰もそこに気づいていない・もしくは忘れかけているから、我々の役どころがあると思ってください。
もう少しぶっちゃけた話になりますが、自治体や地元企業の広報が主体的に協力隊の存在を発信してくれるおかげもあって、我々は地域ではちょっとした有名人になりやすく、「あそこで車停まってるの、見たわよ」「スーパー●●にいたでしょ」なんて顔見知りのお年寄りから話しかけられることはザラなので、プライベートはあまりないかもしれません(笑)
移住して1年以上が経過しますが、基本的には皆さん本当に良く気にかけてくださり、可愛がってくださっており、「せっかく若い人が来てくれたんだから」という思いがベースになった関わり方をしてくださる事が多いように感じますが、どうしても若い年代の女性が少ないせいか、男性の年配者の中には節操ない言動をする方もチラホラいます。その場合は我慢せず、理解ある地元の女性陣や役所に相談してみましょう。
移住検討している方へメッセージ
特にIターン者である私には地方というか非都市部の環境は衝撃の連続でした。
街灯が全くなく、車のライトを消せば何百メートルも真っ暗な道、動物園か?!と思うほどに夜中に往来する野生動物の数々、浅黒く日焼けしてやけに元気のいい年寄り達、2時間に1本の単線電車(しかもディーゼル)、いつまで経っても頼んだものが出てこない代わりに頼んでないものをたくさんふるまってくれるお蕎麦屋さん、私よりも私の状況を先に知っている情報通のご近所さん(笑)、、、
どれもこれも驚きの連続でしたが、ある意味で本当に刺激的で楽しくて、新鮮な体験ばかりです。
移住がもたらしてくれるのは豊かな自然環境のもと都心部で忘れかけていた健全なライフスタイルを取り戻せる事もちろんですが、小さなコミュニティに息づく「どこかユニークで人間くさくて、微笑ましい生活の営み」があることにふと気づかせてくれるところだと思います。
みんな生き生きと、人間くさいのです。泣いたり笑ったりケンカしたりと騒がしいのですが、本当に生き生きとしているのです。
そして都心部というインフラがいかに緻密かつ巨大なインフラを構築しているのか、どれだけその維持が大変なものなのかということも、
山間部を切り開いてゼロから人の住まう場所を作り上げた集落を見て、改めて驚嘆することとなるでしょう。
住民自らが主体的に区画の掃除から草刈り、整備を行わなければものの1ヶ月もしないうちにただの荒れ果てた藪だらけの場所になってしまうのです。
それは10年、20年とこれから経過して世代住民が減ってしまえば一人当たりにかかってくる負担も増えてしまいます。
正直に申し上げて移住に完全な安定や正解があるかどうかはわかりません。
ただしかし、私たちがどのようにして社会を作りあげてきたのか、
その時代の流れや都市部・地方それぞれの側面を俯瞰できる本当に貴重な経験ができるのもまた、移住で得られる学びだと思います。
そして地域資源をより大事にしていく、食料自給率を支える生産産業の後継者を増やしたり支援できる仕組みを作る事から目を背けていてはこの国の運営も持続的ではなくなってきてしまいます。
そこまで考えるのはオーバースケールだと思うかもしれませんが、たった一世帯でも小さな集落に移住することで、地元の生産者や年寄りたちが活気づき、もう1年・またもう1年がんばろうという励みになっていくことにつながるのです。
「たった1軒でいい、家に灯がついていてほしい」
とある社会起業家さんが移住先の年寄りにそう言われたそうで、
私はこの一言を忘れることができません。
当時はまだピンと来ませんでしたが、今なら本当にそう感じます。
小さな集落に、1軒でも良いからあかりが灯っていてほしい。
そんなメッセージに少しでも何か響くものがあるようでしたら、
きっとどこぞかの地にご縁が生まれるかもしれません。
私もまだまだ道の途中ですが、幸いにも一緒に走ってくれている仲間たちにも恵まれ、次はどんなことができるんだろうと忙しくもワクワクした毎日を送る事ができていて、移住しなければここまで刺激的な生き方ができていたか分かりません。
私の記事がどなたかの参考になれば幸いです。
ぜひ一緒に日本の「ふるさと」を元気にしていきましょう!
(終わり)執筆時期:2020年9月
LIFULL 地方創生からお知らせ
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地方移住マッチングサービス「LOCAL MATCH」2021年5月サービス開始
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