宮浦宜子/Life on the table/食卓ディレクター

3歳で「鰊漬けの汁を最後の一滴まで飲み切る子」と言われた筋金入りの食いしん坊。19歳… もっとみる

宮浦宜子/Life on the table/食卓ディレクター

3歳で「鰊漬けの汁を最後の一滴まで飲み切る子」と言われた筋金入りの食いしん坊。19歳、イタリアの食文化に出会って衝撃を受ける。以後、食の体験は人生の糧と古今東西の料理を食べまくる。39歳、ある町の食文化を丸ごと味わったことをきっかけに、42歳より台所と食卓と机での活動を始める。

マガジン

  • 食雑記

    日々の食卓、食卓での会話、食材やレストラン、食に関する本や映画、イベントなど、食にまつわることだけ書く日記のような「食雑記」。節気毎に更新。

  • 食の本棚

    食にまつわる本や映画の紹介や感想。

  • 食卓記

    自分のために、誰かのために、用意した食卓の記録。

  • 釜ヶ崎イタリアまかない

    大阪西成の「釜ヶ崎芸術大学」(通称釜芸、旧称ココルーム)のカフェにて、月1回「釜ヶ崎イタリアまかない」と称して「まかないごはん」を担当しています。 つくるのは、あるものを活かし、時間をかけて美味しくするイタリア家庭料理。食卓を囲むのは、旅人、ふらりと立ち寄った人、近所に暮らす人、インターンやスタッフなど様々。そんな食卓の備忘録。

  • 茶事懐石での学びの備忘録

    2016年9月から1年間、もてなすとはどういうことか、日本料理とは何か、を学ぶために通った、半澤鶴子先生による茶事懐石講習会(東金教室)の備忘録。

最近の記事

処暑|2023.8.23-2023.9.7

8月26日(土) インドネシアのチョコレートと肥後橋の酒場 Calo books and cafe で写真展「after school 放課後」を開催中のインドネシアからの留学生、アブさんからチョコレートの話をいろいろ聞く。アブさんは日本で、インドネシアの様々なカカオの焙煎温度による味の違いについての研究をしていたらしい。チョコレートの味には、原料であるカカオ豆はもちろんだが、収穫後の発酵、その後の焙煎、最後の熟成の3つの要素が大きく影響するとのこと。なんだかワインみたい。

    • 立秋|2023.8.8-2023.8.22

      8月8日(火) 買い出しからの夏が凝縮したトマトソース 立秋、お盆前のスマイル阪神は大混雑。旬島(入ってすぐの平台を勝手にこう読んでる)のひとつはトマト、ひとつはオクラと無花果。トマトとオクラと言えば、アメリカ南部のガンボスープ。なるほど、あれも旬の料理か、と納得する。 レジの長蛇の列に並びながら、今でこれなら、お盆前はどれだけ混むんだろう、とふたりで話していたら、列の前のほうから全く同じ会話が聞こえてきた。みんな考えることは一緒。レジ近くになって、ふとしたきっかけで後ろの

      • 大暑|2023.7.23-2023.8.7

        7月23日(月) アジアン食堂SALAと仙草蜜 前に何かの記事で読んでが気になっていた神戸元町の「アジアン食堂SALA」へようやく行ってきた。確か、アジアのお母さんたちの仕事の場をつくるため、日替わりでシェフをするお店という記事。写真に映っていたお店の内装がとってもカラフルでなんとなく手づり感あふれるお店を想像していたのだけど、予想とちょっと違った。メニュー品目は、カオマンガイ、魯肉飯、グリーンカレーが固定で、それにプラスして日替わりメニューという構成。メニューのデザインも

        • 小暑|2023.7.7-2023.7.22

          7月8日(土) マチ文庫新作発表会 宝塚市中央図書館での、みんなのたからづかマチ文庫、新作発表会に参加する。食卓文庫『北の女が食べる西』、『続・遠くの食卓 兵庫と栃木、一皿の往復書簡』は、「みんなのたからづかマチ文庫」として、宝塚市立図書館に所蔵されている。この2冊は宝塚の何かをテーマにしようと書いたわけではないけれど、遠く離れた土地から移住してきたからこそ意識された「この土地で食べること」についての本であることは確か。コロナ下の間につくられ、所蔵されてきた本を、それぞれの

        マガジン

        マガジンをすべて見る すべて見る
        • 食雑記
          宮浦宜子/Life on the table/食卓ディレクター
        • 食の本棚
          宮浦宜子/Life on the table/食卓ディレクター
        • 食卓記
          宮浦宜子/Life on the table/食卓ディレクター
        • 釜ヶ崎イタリアまかない
          宮浦宜子/Life on the table/食卓ディレクター
        • 茶事懐石での学びの備忘録
          宮浦宜子/Life on the table/食卓ディレクター
        • 【往復書簡】遠くの食卓 II|兵庫/栃木
          宮浦宜子/Life on the table/食卓ディレクター 他

        記事

        記事をすべて見る すべて見る

          夏至|2023.6.21-2023.7.6

          6月21日(水) 台所アルへ行く 手術後はじめての外来診察の帰り、自分に優しく、と『台所アル』へ行く。ここは、ずいぶん前に知人が「とっても美味しいごはんをつくる人」と紹介してくれたひさえさんのお店。茶事料理人の半澤鶴子先生のところに通っている(私もかつて通っていた)という共通点もある。オンラインでは、メッセージをやりとりしたり、料理の写真をみたりしていたけど、ようやくリアルに会って、ごはんを頂くことが叶う。 アンティークのテキーラグラスに注がれた梅シロップ。漆塗りのお膳にの

          夙川駅にほど近い、老舗フレンチの厨房裏口にある、お惣菜屋さん。ベルが出ていないときは、現金かPayPayで自分でお会計する直売所方式。これが阪神間か…。ちょっと圧倒された。

          夙川駅にほど近い、老舗フレンチの厨房裏口にある、お惣菜屋さん。ベルが出ていないときは、現金かPayPayで自分でお会計する直売所方式。これが阪神間か…。ちょっと圧倒された。

          芒種|2023.6.6-2023.6.20

          6月6日(火) 絶食と消化管 入院2日目。夕方の手術のため朝から絶食。絶食の目的は、消化管を空っぽにするということ。昨晩の下剤の内服に始まり、もろもろの処置であらためて実感する。普段は切れ目なくくり返しているから、実は一連のイメージにはなっていない「食べることと出すこと」だが、こうやって一度ストップすると、食べ物が消化管を流れていく時間感覚がよくわかる。 6月7日(水) 絶食終了 入院3日目。いろいろ管がついたまま、朝食。絶食の後は何を食べても美味しいというけれど、やは

          小満|2023.5.21-2023.6.5

          5月25日(木) 鶏ハム、巻くか巻かぬか 朝食の食卓の話題は、鶏ハム。私のダイエットに合わせてもらうかたちで、朝食のベーコンを鶏ハムに変えた。私は鶏ハムは丸く成形されていなくても全然かまわない。なんでももとの形が見えるほうが、美味しそうに感じるし、ルーティンでつくるなら、とにかく手間を最小限にするほうが優先。恋人は成形しないとかありえない派。丸く成形されているからこそ、鶏ハムであって、成形されていないなら、それはただの蒸し鶏だと。丸くすることには、ハムを模すという視覚的な目

          先日、「もったいないものを活かす」が自分の仕事の軸という友人に再会。プライベートでは、スーパーの閉店間際の値引き食材で何がつくれるかに燃える、と聞いて刺激された。サーモンのお刺身4割引をスパークリングのおつまみに脱構築。玉ねぎとアボカド、茗荷は追加。

          先日、「もったいないものを活かす」が自分の仕事の軸という友人に再会。プライベートでは、スーパーの閉店間際の値引き食材で何がつくれるかに燃える、と聞いて刺激された。サーモンのお刺身4割引をスパークリングのおつまみに脱構築。玉ねぎとアボカド、茗荷は追加。

          立夏|2023.5.6- 2023.5.20

          5月6日(土) シチニア食堂立ち飲みイベント 清荒神のシチニア食堂の立ち飲みイベントにでかける。人気店で、普段は予約なしでは食べられないのだけど、今回は予約なしで自由に立ち寄れるイベントということもあって、地域のたくさんの人で賑わっていた。このお店が起点となって、清荒神が盛り上がってきたというのが、納得できるような光景だった。ふらりと行けて、ばったりと知り合いに会える店っていいなと久しぶりに思った。そういうお店が生活の中になくなってから、どれくらい立つだろう。 5月7日(

          穀雨|2023.4.20-2023.5.5

          4月20日(木) 素麺の「はしり」 昼食はツナトマト素麺。夏まっさかりのメニューが、4月にお目見えしてしまった。そこに、ツナとトマトと素麺があったから、というのが恋人の弁。食卓で自分の感覚とは裏腹に季節が前倒しされると、なんだか焦ってしまう。とはいえ「はしり」のツナトマト素麺、意外と美味しかった。 4月21日(金) アルタイ山脈の蕨料理 夕食はひとり。台所でワインを飲みながら料理して、立ったまま食べる方式。灰汁抜きしたワラビがあったので、数年前、先住民族テッラマードレと

          清明|2023.4.5-2023.4.19

          4月6日(木) なつかしのヤンヤンの茄子の唐揚げ 夕食は、久しぶりにふたりで一緒につくる。恋人担当が茄子の唐揚げ、私の担当がパクチー入り卵とトマトの炒め、鶏胸肉とキャベツのオイスター炒め。茄子の唐揚げは、昔、三軒茶屋に住んでいたときに、よく行っていたヤンヤンという上海料理の店で頼んでいたメニューをふと思い出し、つくってもらう。当時はかかっている香辛料がわからなかったけど、今ならホアジャオだったとわかる。 4月7日(金)  夏の予感のトマトサラダとはじめてのコシャリ 今年

          春分|2023.3.21-2023.4.4

          3月21日(火)  春の草はぐんぐんと 春分。買い出しに行くと、今、この瞬間も、たくさんの草がぐんぐん伸びているんだなあ、というのが売り場からも伝わってくる。(お店で)刈り取ってきた草たち。 3月22日(水) 淡い味のうど(少しものたりない) 関西で三度目の春を迎えて、ついに三田うどを買ったので、むいた皮をつかってうどのパスタをつくる。札幌の実家の庭に生えてくる山うどに慣れた舌には、栽培うどの繊細な爽やかさはやっぱりものたりない。あのエグミとともにある旨味が恋しい。

          鍵善のくずきり。食べ終えたあと、漆黒の器の中の氷と水にすら見とれてしまう。なんだかわからんけど悔しい。京都め。

          鍵善のくずきり。食べ終えたあと、漆黒の器の中の氷と水にすら見とれてしまう。なんだかわからんけど悔しい。京都め。

          1月の釜ヶ崎イタリアまかないの食卓

          大阪の釜ヶ崎芸術大学(釜芸=ココルーム)の「まかないごはん」の調理を月1回担当している。「まかないごはん」は、もともと日雇い労働者の街であった釜ヶ崎に暮らす人々や、釜芸が運営しているゲストハウスやカフェのお客さん、釜芸の講座に参加した受講生、釜ヶ崎や釜芸をフィールドにしている研究者、釜芸のボランティアやスタッフなど、毎日昼と夜、様々な人がいろいろな組み合わせで囲む食卓である。あるものを活かし、手間と時間をかけて美味しくするイタリア家庭料理の哲学と釜ヶ崎という場所の組み合わせが

          1月の釜ヶ崎イタリアまかないの食卓

          失敗料理

          久しぶりに料理を失敗してしまった。メークインとリーキのグラタン。食べられない訳じゃないけどなんとも、という仕上がりになった。生クリームがなくて牛乳にバターを溶かして代用したのも敗因だけれど(バターも少なすぎた)、まあ一番大きいのは焼く前に塩を振り忘れたことだ。最後にパルミジャーノを山ほどかけて仕上げ焼きをしたからなんとかなるかと思ったけど甘かった。昔、レシピ見ながらちょっと素敵な料理をつくろうと盛り上がったら、なんだか全然美味しくなくて、しょんぼりしながら食べている自分を思い